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4年後のプロへ本気になった高校生の物語。「ベルマーレには感謝しかない」。福井商のエース中津悠哉が魅せた夏。

2021年、夏のインターハイ男子サッカー。

昨年は新型コロナウィルス感染症拡大の影響で中止に追い込まれた高校サッカーにおける真夏の祭典。今年は無観客という形で、1チームの無念の辞退チームが出るという状況だったが、それ以外は決勝まで試合がしっかりと行われ、青森山田高が2度目の優勝を手にした。

福井県で行われた今回のインターハイ。ここで残念ながら初戦敗退となってしまったが、私が心を奪われたある選手についての物語をここに記したい。

地元・福井商業のエースストライカーであるFW中津悠哉。

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地元枠として2校が出場できるため、福井県予選決勝で強豪の丸岡に敗れるも、第2代表として2大会ぶりとなるインターハイ出場権を手にした。

初戦の相手はFW福田師王とMF大迫塁のスーパー2年生コンビを抱える優勝候補の神村学園。いきなりの難敵となり、チームは彼らを軸にした攻撃の前に前半だけで4失点を奪われるという、苦しい展開を強いられた。

だが、その劣勢の中でもチームのナンバー10は存在感を放ち続けた。

最前線で持ち前のフィジカルの強さと前への推進力を駆使してボールを集約しては、たとえ複数に囲まれてもボールを奪われずにゴールに向かう姿勢を崩さなかった。

これには神村学園の大迫も「どれだけ押し込んでも10番の選手が常にゴールを狙っているし、ボールが渡れば収められて、前に運ばれる。本当に厄介だなと思いましたし、凄い選手がいるんだなと思いました」と口にするほど、大量リードを奪われても神村学園の脅威になり続けた。

そして0-5で迎えた51分、ついに中津の執念が実る。

MF伊藤慎也のパスに反応すると、背後からDFに寄せられながらもボールを受けて前を向いた。位置は右サイド。ドリブルで前に運ぶも、ゴールとの距離、角度、相手の位置的にもゴールを狙うのは難しい状態だった。

私も「一度切り返してカットインシュートかクロスを狙うか」と思ったが、次の瞬間、彼はグッと左足を踏み込んで、体を捻らせながら右足を振り切った。

強烈なインパクトを加えたボールはゴールに一直線に向い。右ゴールポストとGKの間を突き破る形でゴールに突き刺さった。

圧巻のスーパーゴール。

あの角度、あの体制から目の覚めるような強烈ミドルは正直、度胆を抜いた。だが、このシュートの後に彼は勢い余って転倒し、その際に右の内転筋を痛め、無念の負傷交代となった。

試合は1−5の完敗で、彼もフル出場できなかったが、印象に残った選手として真っ先に名前を挙げたくなる存在だった。

「シュートシーンはゴール前を見たらGKが少し自分から見て左に寄っていたので、ニアが空いていると思ったので、右足でニアを狙いました」。

試合後、彼は座った状態で思いを語ってくれた。そこで彼の放つ言葉の熱さ、思いの深さにも大きく感銘を受けた。

「プロのレベルを一度目の当たりにしたことで、より僕の中でプロという目標が明確になった」。

隠れたタレントというべき彼にいち早く目をつけていた人物がいた-。


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