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MLB審判の精度とABS

ABSの詳しい解説に入る前に、審判員の立場からこのいわゆる「ロボット審判」を題材にするにあたって、読者の皆さんに理解しておいていただきたいことがあります。

それはABS導入がMLB審判員の投球判定の精度の低下によるものだ、という意見はまったくのミスリードだということです。MLB審判員の精度はテクノロジーの助けもあり、未だかつてないほど高い水準にあります。


SNSの普及

「MLB審判員のクオリティが低下している」という仮説は、インターネットやソーシャルメディアの普及により、文字通り一球一球のデータをだれも入手できるようになり、昔は試合をスタンドで見ていた人しか知り得なかったカンザスシティーでの1回表、2番打者の見逃し三振の映像を世界中の誰もが見られるようになったことで、日々起こる誤審を切り取った映像だけを繰り返し見た結果生み出されたものです。

MLB審判員の投球判定における平均正答率は97%と言われており、1試合に球審が判定を下す投球がおよそ約150〜200球と考えると、毎試合4〜6球の”誤審”が程度の差こそあれ起きている計算になります。通常全30球団で15試合が行われるわけですから、平均で1日あたり60〜90球の”誤審”がソーシャルメディア上に流れる可能性があるのです。ただこの97%という数字は冒頭でも述べましたが、未だかつてない高い水準です。つまりSNSから得る情報を根拠にした「MLB審判員のクオリティが低下している」という仮説には欠陥がある、と結論づけることができます。

 MLB審判の精度

ゾーン・エバリュエーション(評価)システム

これはほんの一部ですが、各審判員には毎試合後にレポートが送られ、球審の場合は一球一球の結果が書かれてあります。

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