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アジャイルに向く人材とは?

別部門の同僚から、アジャイル案件が増えてきたのでアジャイル人材の育成プロセスを検討せよと組織にお題が与えられたので相談させてほしいと相談を受けた。

ちなみに自分はこういう相談を受けるととても嬉しい。正式な依頼みたいなものは部署間で合意や根回しが必要だったりすることも多い。だけど、気軽に相談してお互い同じような課題を抱えている中ディスカッションして考えることで自分の考えもブラッシュアップされる。何より楽しい。

今回の育成とはアジャイル開発に携わるエンジニアを育成するというところで、その前段に対象者を選定するということをしたいらしい。理由は育成のための予算や人員の空きなどの制約があるためだ。

いわゆるヒューマン力と呼ばれるようなコミュニケーションや課題発見&解決能力が高いほうが良いのは当然だが、そういうメンバーはアジャイルプロセスを採用していない案件でも活躍できるし重宝される。すでにアジャイルマインドセットか備わっていることも多い。

DiSC診断のような性格タイプで適正を診断できるのではという意見も出たが、個人的にはそれもしっくりこなかった。アジャイルにおいてはチームの協同が鍵だが、同じタイプの人間が集まると意見の多様性が生まれづらかったり、見落としてしまうポイントが起こり得る。何より、自分が見てきたアジャイルコーチたちは1つ2つの性格種別におさまらないという実感がある。さまざまな性格や素質を持った人々が、共通の目的のもと学びを進めて共通理解を育んでいくことがアジャイルの本質と信じている。

アジャイルの理念や原則に共感し実践できるか

私が重要だなと思うのは結局、性格よりアジャイルの理念や原則にどれだけ共感し、どれだけ実践できるかだ。ここのジレンマは実践しないと理念という曖昧なものに対して明確なイメージを持てないがゆえに、共感のレベルを高めにくいことにある。ただ、アジャイルの理念と原則はそこまで複雑なものではない。

プロセスやツールよりも個人と対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、

http://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html

個人と対話で重要なコミュニケーション、動くソフトウェアを保つマネジメント力、顧客との協調を作る協調性やニーズを引き出す力、そして変化への対応に必要なチャレンジ精神。全部を完璧に持っている必要はない。大事なのはチームでこれらの素養を補い合えるか、お互いの長所を活かせるチームとなれるかだと思う。

あともう一つ重要なのは本人がアジャイル開発の実践に対して前向きであるかが大事だとも思う。そもそも懐疑的であったり、期待をしていないとそこから学ぼうという率直な意識をどうしても邪魔してしまう。そういう意味では、新人や若手の時からマインドセットを伝えるような活動や率先垂範ができていると、ポジティブな影響を与えやすい(若手じゃないとNGという意味では決してない)。

アジャイルという言葉への理解においてやり方とあり方が混乱しているなら、別にアジャイルという言葉にこだわらなくても良い。ただ抽象的なコンセプトに対して前向きに感じるかどうか。そして実際の行動を起こせるかが鍵だと思う。そういう意味では、アクションとフィードバックのサイクルを実際に回せることも重要となるだろう。

「アジャイルでありたい姿」を意識した組織づくりを

そもそもこの選定プロセスに時間をかけることもある種のムダと捉えられるかもしれない。理想は組織自体がアジャイルになり、アジャイルな文化が全体に行き届いている状態を作ることだ。そうしてその組織に人が入る時点でカルチャーフィットを意識して採用できているかが大事になる。

そうなると「アジャイル人材の育成プロセス」を個別で考える必要性も薄れてくる。もし自分の組織にアジャイル推進のリーダーシップがあれば、教育プロセスに集中してどうすればSECIモデルを組織でうまく回し、一方的なティーチングではない学習組織を作ることができるようになるだろう。それが組織のカルチャーとして定着すれば、アジャイルな人材ばかりの組織になれるかもしれない。そういった組織づくりを自分も意識していきたい。

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