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小笠原滞在記 Day 7 「玉座のありか」

ここにきて割とガチ目のトレッキングすることになるとは流石に予想外でして。

というわけで、小笠原のDay 7は山登りからスタート。あれだけエモい海を毎日見せつけておきながら、山に来るとしっかり山感を出してくる小笠原が愛おしい。

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いやしかし、圧縮効果が多少効いてるとはいえ、割と山高いよ?聞くと片道3キロ。まじで遠いやん。ワーケーションで来てるはずなのに、毎晩の深夜撮影で睡眠不足気味の足がすでに萎えそうになる。

慄いている間も無く、トレッキングスタート。入り口では外来の種子が山に入るのを防ぐために、お酢で靴の裏を洗います。これがなかなかスモーキーな匂いで、ふわっとテンション高まる。

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さらに入り口には、入山管理の小石システムが設置されているのが可愛い。小笠原は島全体が国立公園として指定されているので、いくつかの山にはガイドさんの同行か入山パスが必要になる。その上で、入った人間の数や属性を記録するために、入り口のところで自分の属性に当たる「石」を、看板裏の筒の中に投入するっていう手続きが必要。僕の場合今回は「観光」だろうなと。というわけで、マーブル色の石を看板裏の筒に投入。中を見てみると、今日すでに数人がこの山に入ったのがわかる。これはなかなか便利なシステムだし、石を入れると言うのがなんだかいい。

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というわけでいよいよトレッキングスタート。ぱっと見で山がゴツかったので、しんどいルートかと思ったのだけど、割と平坦なルートでみんなにこやかに登っていく。今日の一行は、いつもの北村さんなぎちゃん僕の3人だけではなく、ホテルパットインのオーナーである健さんや健さんのお兄さん、ホテルのスタッフの皆さん、村役場の課長さんや係長さん、さらに前日のクラブハウスでご一緒させていただいた、小笠原観光協会の理事であり、さらに小笠原で宿を営まれている哲也さん(後日僕に最後の重要なメッセージを残してくれたのは、すでにDay 11を読んでくださった皆さんはご存知ですよね)もついてきてくださることに。大パーティだ!レイド組んで大ボス退治できそうな勢い。

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植生が本州と全く違うので、山歩きの足がことあるごとに止まる。北村さんもなぎちゃんも僕も、基本ずっとシャッター切ってる。お陰でトレッキングの行程は大幅な遅延、でも本州では見たことのない木や葉っぱの映像が山のように残った。いつかこれを見て、「ああ、これはタコの木って言うんだよね」って懐かしく思い出すだろう。

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懐かしく思い出すだろう。

懐かしく...

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懐かしく思い出すかなあ。割とタコの木がやばい迫力。大体指輪物語とか見てても、木って命が長いから、魔術的な能力をゲットしちゃうんですよね。これとかもう、夜に動いてそうじゃないっすか。やはり植生が違うと、世界自体の構成の物語が変わってくる。そんなことを実感する。

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これを見てすぐに「あ、ここ夜には絶対もののけ姫の『こだま』出てきますよ!」って言ったら、ガイドをやってくれてた健さんのお兄さんに「みなさんそう言われますねー!」って言われて、自分の想像力のちょろさに苦笑してしまう。わい、実にちょろい。

でもそれはそれとして、やはり違う。と言うより、本当は小笠原ではなくても、自分が知らない街を歩くと言うことは、いつだって「違う世界」を歩くと言うことなんだろう。正常性バイアス過剰な僕らの脳がそれを認めないだけで、僕らは常に、本当は少しずつ違う世界を生きている。

ただ、本州にいると地続きの部分で自分の立ち位置をある程度類推で規定しまうのに比べて、小笠原はやはりその距離がものを言う。東京から南に1000キロ、24時間の船旅というのは、やはり「イニシエーション」なんだと、このトレッキングの間ずっと感じていた。いつものとは違う場所、違う世界、違う物語。でも、僕ら自身にとってもどこか懐かしい、いつか過去に見たような、あるいはいつか理想として追い求めるような物語が存在している場所。

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トレッキングの行き着く先にあったのは、その感覚の全てが集約したような、ガジュマルの聖地だった。思わず息を呑む、木の魂が横溢する空間。

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一瞬だけ足が竦む。そこは僕ら人間が簡単に入ってはいけないような場所に思えたから。

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でも、健さんやガイドのお兄さんは、余裕綽々の感じで突入。

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あ、そんな感じで行っていいんすね。急に木たちも、門戸を僕らに開いてくれた気分になった。僕、ちょろい。てことで、奥に行くと、「玉座」を見つけた。多分、ムスカがここで「3分間だけ待ってやる」って言って、パズーとシータが「バルス」って言ったのここだ。見つけた。

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凄まじいガジュマルの根っこに包まれる。最初の畏怖もどこへやら、一度「なか」に入って仕舞えば、そこは楽園。シャッターを切る手が止まらない。

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ほんのわずかに入ってきた日光をなんとか捉えて、あとはこんな「玉座」でみんなでコーヒーを飲みながらたくさん話をした。その話の内容はここには書かない。皆さんがもしいつかここにきたら、多分、その話は皆さんが「ここ」で聞くことになるだろうから。それはここでしか聞けないお話だから。

でもその談笑のシーンの写真くらい出してもいいよねー

出してもいいよね。

出しても...

写真ないし。風景しか撮ってない。そういうとこやぞ、俺。

というわけで、肝心の集合写真を一枚も撮ってないので、その辺りの映像は多分北村さんかなぎちゃんが映像で出してくれるはず。皆さんそちらも合わせてご覧になってください。

そんなこんなでDay 7のトレッキングは無事終了。下山は行きの倍くらいのスピードで踏破。午後には下界に戻ることができました。で、午後はなにをやってたんだって?いや、いろいろやったんですよ。小笠原で取れる豆で営まれているカフェでコーヒーも飲んだし、

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ザトウクジラの頭も奇跡的にゲットできたし、

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でもね、トレッキングを経て、改めて小笠原って「人」でできている空間なんだって思ったんです。黙ってクジラ撮ってる時こそ、むしろそれが強く感じられて。

まあでも、この日あまりにも色々詰め込みすぎて、後半わりと記憶が欠落してるんですよね。北村さんにもなぎちゃんにも「テンションへん」って言われる始末。

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夜中には天の川撮りに行って撃沈してますしね。

ちなみにこの左の真ん中にある光は、イカ釣り漁船だったらしく、その漁船から僕がたまに照らすヘッドライトが見えてて「こんな深夜になんであんな場所に光があるんだ!」って、漁船の中で話題になってたらしい。僕の方では僕の方で「なんだあの光は!?って、割と高まってたので、実はお互い妙な意思疎通をしていたことが、後になってわかった。

小笠原、本当に毎日色々ある。もうすでに懐かしい。今日僕がこれを描いているのは、多分今年最後の雪が降る滋賀県の仕事場。小笠原のみんなは、今日もあの輝く25度の太陽の下で働いているんだろうなあ。でも嬉しいのは、それがただの妄想でも空想でもなく、僕もまたそこにいたあたたかな記憶として、物語として、ちゃんと思い描く「風景」として、僕の中に、そして写真に刻まれているということ。旅の記録を書いていると、それを次から次に思い出す。

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