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子どもと高齢者の交じ合う施設

日比野設計の施設設計部門では大きく分けて二つの部門で構成されています。
1つは保育園や幼稚園、こども園や子どもたちに関わりのある、主として子どもたちがメインに活動する為の施設設計をする「幼児の城」
そしてもう1つが高齢者や障がい者などの福祉施設を手掛ける
「福祉施設研究所」です。


それぞれ専門的な知識を有する施設でありますので、そこに特化すべく数多くの案件に関わらせていただき、多くの蓄積、ノウハウを得て今も多くのプロジェクトに携わらせていただいております。

述べさせていただいたように、上記のそれぞれの施設に関しては数多くの実績としてありますが、子どもの施設×高齢者施設といった完全な二施設が融合した施設と言うのはあまり多くありません。むしろ日本全体にこういった施設自体が、現状では多くは存在していない状況です。
(高齢者施設の中に、一部保育所機能をもった施設というのは弊社でも多数実績があります。)

一方で幼老複合施設という言葉が生まれてくるほど、今後施設整備の一環として注目されてくる分野であるかと思われます。

そんな中、今現在とある幼老複合施設の建替計画を行っています。


先日、現状の施設の確認に行ってきたのですが、既存の施設は中庭を介して高齢者のゾーンと子どもたちのゾーンが分かれているような施設でした。
言わば、中庭が両社の共有ゾーンと言った形式です。
中庭は昔ながらの広い校庭と言うよりは大小様々な樹木が分散配置している子どもたちであれば、探求心が生まれる、高齢者であれば安らぎが案じられるような素敵な空間でした。

そんな施設の建て替え案を試案している段階であり、どういった空間が子ども達そして高齢者にとってい心地のよい空間であるか、さらにはそれぞれにとって良い意味での相乗効果が生み出せるかを日々考えている段階ではあります。

現状ある多くの幼老複合施設で敷地がある程度限られている施設は、子どもゾーンと高齢者ゾーンの区分けが階で分かれている場合が多いです。
そのような場合、階で機能が分断されてしまうと、それぞれがつながり合うシーンと言うのは生まれにくいというのが実情ではあるかと思います。
しかし、管理上は分かりやすいゾーニングというのが必要になってきてしまい、そのあたりをどのように考えていくかが、難しい所であり、重要な所であるかと思います。

今回の施設整備では中庭の使い方が一つキーになってくるポイントであるかと思いますので、そのあたりの作り方とこども達、高齢者の動き等をイメージしながら、全体像を構成していければと思っております。

幼老複合施設、つまり子どもたちの生活の場と高齢者の生活の場が一体となり、それぞれの交流が生まれると言うのは多くの点でが存在すると言えると思われます。



子どもたちにとっては、年配の方々から多くのお話をいただけるということ。特に核家族化が進んでからは、年配の方と交流する機会というものが昔に比べて極端に減ってきています。自分の祖父や祖母に会う機会も年に数回といったケースも少なくないように思われます。そのような時代背景の中で、年配の方と交流する機会が日々訪れている、というのは子どもの日常的な学習以外で学べる部分が多くあるのではないかと考えられます。
また、日常的に身体を動かす事に苦労する部分が多い高齢者の方と身近に接する機会を設ける事で優しさや思いやりが身に付いたり、第三者に対しての理解が幼少期から育まれていく事も考えられます。
子どもたちの無垢な発想に対して、優しい言葉をかけてくれる高齢者も多く、そういった交流を繰り返す事で、自尊心、自信が養われていく事もあるかと思われます。

高齢者にとっては、やはり子どもたちの無垢な笑顔や声に癒しを得られるのではないでしょうか。
また部分的に子どもたちと活動する事で、適度な運動が日常的に行えたり、子どもたちの世話や教えを乞う事でやりがいや、存在意義などがより深まっていくことも考えられます。頭を使うシーンも子どもたちと交流する事で使う頻度が高くなるかと思われます。

このように両社が交流し生活する事で、相互に様々なメリットが生まれてきます。

施設をまとめる事で経済的なメリットも生まれます。厨房を同一管理出来る事や、職員の働きやすい環境も生み出しやすいかもしれません。
まだまだ数は多くないものの、今後需要が高まっていく可能性がある複合施設となるかと思われます。

今上に記載させていただいたので、幼児×高齢者のパターンですが、
そこに×障がい児でも良いかもすれないし、×地域交流でも良いかもしれない。
いろいろなパターンが考えられますが、地域交流や多くのコミュニティの希薄化が叫ばれる現代において、相互に支え合い・助け合い・成長していけるような仕組み作りの手助けが出来ればと日々考えております。


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