十二人の手紙


 井上ひさし著「十二人の手紙」を読みました。著者は小説家で、著者が原作の「ひょっこりひょうたん島」は見た記憶があります。何より主題歌をよく覚えていますね。先日、妻の友達・Rちゃんが本書の朗読劇に出演しており、それを観て手に取りました。

 朗読劇では全編読めるはずもなく、「プロローグ 悪魔」、「泥と雪」、「エピローグ 人質」の3篇が読まれましたが、「エピローグ」の衝撃的な事件から他の部分がとても気になりました。他にも短編が10篇あり合計13編でした。もちろんすべてが手紙で構成されている、、、と思いきや、3つ目の「赤い手」では、出生届、婚姻届け、死産届等の役所に提出する書類が連ねてあり、その人物の人生が良く分かります。これはこれで面白い手法だと思いましたが、「手紙」という縛りが崩れてしまったのはちょっと残念でした。

 一つ一つの話はそれぞれに個性があり、またほかの短編との絡みが出てきたりと面白いものでした。「手紙」ですから、読む側は差出人に思いをはせながら読む一方で、差出人が開示している情報しか得られません。バッチリ嘘をついている差出人がいたり、それを観破る受取人がいて、こちらも度々予想を裏切られました。

 「エピローグ 人質」では、「プロローグ 悪魔」で犯罪に手を染めてしまった女性の弟が、犯罪に至る原因となった男性・船山に対する恨みを晴らそうと、その男性泊まる東北のホテルに押し入ります。腹にダイナマイトをまいて、猟銃と牛刀を持ち、船山が宿泊している部屋と同じフロアの宿泊客全員を人質に取ります。この人質が、それまでの各編に登場する人物ばかりで、ちょっと無理矢理感もあるのですが、なんていうか同窓会みたいな雰囲気でした。不倫旅行だったり、新婚旅行だったりとほとんどが男女の関係性が発展した者だったので、他のシチュエーションがあると良かったのですが、各編にいた男女に対し「あぁ、この二人はそうだよね」と納得したり、「あれ?この二人、結婚したの?」と驚いたりしていました。

 残念ながら登場人物全てを覚えきれず、「これ誰だっけ?」と思うこともありましたが、著者もそれは織り込み済みの様で「エピローグ 人質」の各所に「第〇話参照」と書いてありました。楽しく読ませて頂きましたし、その手法に感心させられましたが、完成度としては、三島由紀夫著「三島由紀夫のレター教室」とか湊かなえ著「往復書簡」の方が高いのかなと思いました。

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