結婚式のメンバー


 カーソン・マッカラーズ著、村上春樹訳「結婚式のメンバー」を読みました。著者はジョージア州コロンブス生まれの女性作家です。

 主人公はフランキーという12歳の少女です。母親を早くに亡くし、父親と二人暮らし。日中、父親は仕事に出ていて、お手伝いのベレニスが来ています。親せきの6歳の少年ジョン・ヘンリーもよく遊びに来ていて、フランキー、ベレニス、ジョン・ヘンリーの3人というシーンが多くありました。

 フランキーの年の離れた兄が結婚することになり、結婚式が遠方で行われるため、フランキーは父と二人で結婚式に行くことになります。結婚式が楽しみなフランキーですが、一方で自分の名前がフランキーというのが気に入らず、ジャスミンと言い張ります。実際2章からは「F・ジャスミン」に名前が変わっていました。結婚式に出かける妄想が膨らみ過ぎたのか、式の前日には結婚する二人とフランキーの三人でどこか遠くへ行くという妄想に変わり、それを街の人に話して歩くという奇行に出ます。フランキーは12歳にしては背が高く、成人女性に見えたようで、話しかけた中の非番の兵士からデートに誘われ、ホテルに連れ込まれてしまい、水差しで兵士を殴って逃げ出します。タイトルからして和やかな話なのかと思ったのですが、なんとも予想外の展開でした。

 しかしながら、結局兵士を殴った事件は大した影響はなく、結婚式に行ったフランキーは結婚する二人に「私もつれていけ」と泣きじゃくり、つまみ出されてしまいます。帰宅してからも、家出を試みるなどするのですが、なんともつかみどころのない作品でした。しかし、結婚式前日にフランキー、ベレニス、ジョン・ヘンリーの3人が話している内容はちょっと哲学的で面白かったです。あと、フランキーが結婚式を挙げる二人に憧れて、恵まれた周囲の環境に気が付かず、それらをないがしろにしてしまう感じが、12歳くらいの思春期の気持ちをよく表しているように感じられました。

 村上春樹による「訳者解説」を読んだら、著者の文章について「なんだかとんでもないところから、なんだかとんでもないものが飛んでくるというような、ちょっと常軌を逸したようなところのある、特別な種類の鮮やかさなのだ。」とありました。私自身は「鮮やか」とらえきれませんでしたが、前半の部分はよく理解できたように思います。

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