note表紙_九十九里

いまは見えない眺め。『マチネの終わりに』

人形を作り、それをつかった写真作品を作っているサイトウタカヒコです。最近、人形じゃない写真が多いですが…。(Portfolio Website:http://saitotakahiko.strikingly.com)

3月のはじめから毎日新聞そしてnote上で連載されている
平野啓一郎さんの新作小説「マチネの終わりに」との連動企画に参加しています。

3月から始まった小説も第五章に変わりました。
そこでのちの連動企画の制作へ向け、今までの物語を整理しようと(...または休養のため…もしくはパリもイラクも遠すぎるため…。)東京から車を2時間ほど走らせ、小さな湖のまわりをしばらく歩きました。

山の中というわけでもないのに、背の高い木々に囲まれたせいか、湖は郊外ということを忘れてしまうような綺麗な眺めで、おもいがけず「マチネの終わりに」はそれぞれの舞台が常に「都市」から「都市」へと移っていくことに、ここに来てみて今さら気づきました。

…ちょうど30歳をむかえる年のはじめに、この「マチネの終わりに」との連動企画をいただいたことはとても嬉しいことであった反面、その企画書や小説の頭の数ページをめくるごとに「30」という場所に今、私が立っているんだということを意識させられました。

その後、自分にとって節目の年だというなら、誰かにとってもそれは同じことで、約10年前に出会った人たちと久しぶりに再会する機会が何度かありました。

30歳だった人は、40歳に。40歳だった人は、50歳に。
そこには自分の成長の嬉しさや再会の喜びとはまた別に、
私の立っている場所は10年前とは確実にちがう場所で、そして再会している人達とおなじ40歳、50歳、60歳へと自分が向っていくということでした。

蒔野と洋子の生きている場所も、まさしく私の先に控えているまだ見たことのない場所です。…さらに今、この二人はその先へと向かわなければならないことについて考え、向かおうとしています。

…今の私はようやく着いた場所からの風景を、少し休んで眺めています。でもそれは休んでいるようでもあり、その先の眺めが少し怖いのかもしれません。

#マチネの終わりに


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?