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科学的知見に基づく”親になるための学び”

昨日の投稿では、元カリスマギャルママモデルの日菜あこさんと、映画監督の豪田トモさんとのトークショーを振り返った。

「ギャルママ」と呼ばれるお母さん達の多くが”離婚と虐待の連鎖”を経験する中で、”狐立”した子育ての困難さに直面している姿に触れ、「育児」の前に、まず自らの心のコップを上に向ける「育自」が大切であることを痛感したトークショーであった。

また、長野県諏訪市の17保育園、1,620人の聞き取り調査によって、33%の500人以上に「胎内記憶」、21%の子供に「誕生記憶」があったことが判明したことを述べた。

科学的にも証明される、胎内における母と子の深い絆に感動した。

胎内記憶というと、スピリチュアルな印象を抱く方もいると思うが、実は国内外で胎内記憶の研究が進められ、新たな結果が証明されている。

親子の関わりについて、今回は「科学的な知見」から述べていきたい。

●科学的知見に基づき、体罰の是非を根本的に見直せ

しかし、このような深い縁、絆によって運命的に結ばれた親子、とりわけ母と子が、一体なぜ虐待という悲劇に襲われるのだろうか。

「虐待の連鎖」に注目する福井大学の友田明美教授によれば、7割弱の確率で虐待の世代間連鎖が広がっており、先天的な発達障害の特性からくる症状なのか、愛着障害等の後天的な症状なのかを見極めて、発達障害と愛着障害の相違点を区別することが重要であるという。

友田教授は「児童虐待」という表現を極力使わず、「不適切な関わり(マルトリートメント)」という用語を用いて、「不適切な関わり」の種類によって、ダメージを受ける脳の部位が異なるという。

例えば、体罰によって、情動の処理を行う「扁桃体」等の感情や思考、行動に関わる「人間性知能」と言われる「前頭前野」が萎縮し、本能的な欲求や衝動が抑制されにくくなることが判明している。

また、性的「不適切な関わり」や親同士の争い(DVの目撃は「心理的虐待」)の目撃によって、苦痛を伴う記憶を繰り返し呼び起こさないよう、「視覚野」の容積が減少することも分かっている。

さらに、激しく怒鳴る、威嚇する、なじるなどの暴言によって「聴覚野」が肥大し、特に母親からの暴言のほうが、脳への悪影響が大きいことも明らかになっている。

また、「不適切な関わり」の強いストレスにさらされると、強い情動とつながる記憶と関係が深い「海馬」が損傷を受け、特に3歳から5歳の幼児期に激しい精神的ストレスを受けると海馬が委縮し、学習能力や記憶力の低下要因になるという。

平成29年、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが発表した「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」によれば、「しつけのための体罰容認」が6割、「おしりをたたく」「手の甲をたたく」等の軽い体罰は7割が容認していることが明らかになった。
※ちなみに、令和2年の調査では体罰を容認する大人が4割に減少している。

しかし、16万人の子供の調査研究によって、軽い体罰でも次のような「有害な結果」を招く恐れがあることが判明し、東京医科歯科大学とハーバード大学の共同研究でも同様の結果が得られたという。

○規範や規則を守る心が育ちにくい
○攻撃的になりやすい
○集団での行動がしづらい(反社会的行動)
○対外的/内面的な問題行動のリスクが高まる
○心の健康が脅かされる
○親子間の愛着形成が損なわれる
○認知能力が低下する
○自己肯定感が育ちにくい
○親からの更なる暴力を誘発しやすい
○成人後の反社会的行動/精神疾患
○成人後、自らも体罰を容認するようになる

日本の子供2万9千人の調査によれば、3歳半の頃に親から「おしりをたたく」等の軽い体罰を受けていた子供は、5歳半になると「落ち着いて話を聞けない」「約束を守れない」等の問題行動のリスクが、全く体罰を受けていない子供と比べ、1.5倍ほど高まり、親からの体罰の頻度が高いほど、問題行動のリスクが高くなっている。

こうした追跡調査によるコホート研究の結果には謙虚に耳を傾ける必要があろう。

体罰の是非について、従来の固定観念やイデオロギーから脱却し、子供への悪影響というエビデンスに基づく科学的知見から根本的に見直す必要がある。

●「虐待の連鎖」から「感謝と褒め育ての連鎖」への転換

では一体どうすればよいのか。

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①歴史教育、②家庭教育、③道徳教育、④日本的Well-Being教育の観点から、研究の最新情報や、課…

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