トスエクン・ドラゴをクリアした1

第一章 ムートダラ
 いきなりわたしは目を覚ました。全く見覚えのない場所だった。いつから寝ていたのだろう。その小さな部屋には誰もいなかった。不思議に辺りを見回していると、若い女性がドアを開けて入ってきた。
「もうすぐ王様との謁見の時間でございますよ、ロト様」
 はっ?わたしったらそんな名前だったかな。それに国王と何を話す?まさか国外追放か?何も覚えていない。
「ここはどこだ」側にいる娘に聞く。
「ご存知ないのですか?無理もないですね。巨大なスライムに・・・ぼっこぼこにされたのですから。」
「どうしたのだ」
「うぇっふっふふ。あんな貧弱な魔物に大怪我したら、勇者としては、いい笑い者じゃないですか」
 娘よ、笑うな!これでも奴の動きを読みつつ、クリティカルヒットを与えようと努力したのだ。この竹竿でな!そして体当たりされ続けて、もう戦えないと思ったら、四角いリセットボタンを押してしまった。
 頭の中が真っ白になった。その時の傷もなくなっている。この城はどうやら安全らしい。しかもBGMを流す機械とか、楽器を弾いている人がいないのに、延々と舞踏会で賑わうようなメロディが聞こえる。
 衛兵のいる扉の奥の階段を登ってみる。その先には、玉座に座る王様と、先程の娘によく似た女性が座っている。
「よく来たな。勇者殿。この国ドルガフレアにはふたつの城がある。ひとつはここムートダラ。もうひとつは、ブラーニュシュバルク。実は1,000年前までは、ふたつの城は地続きで、簡単に往来出来たのだが、大地震で敷地の一部が沈下して、そこに川が流れて、現在のようになってしまった。ブラーニュシュバルク城の周りは陸の孤島になり、荒れ果てたところをだな・・・」
「おじいちゃん、話長いよ。要するにさらわれたわたしの姉を助けて欲しいの」
 近寄って見てみると、先程の娘とは少し違ったようだ。
「わたしはムートダラの王女ローラの妹、名前はローランサって言うの。ちょっとややこしいけれど」
 そうは申されるが、わたしはちっとも勇者らしくもないし、レベルだってまだ1なのだ。
「王様はわたしに、エスペランザ(ドラゴン一味の名前)からローラ姫を助けてくれ、と依頼されるのですかな?」
「そうだ。自信がなければムートダラは城を出ると、城下町がある。そこでゴールドを集めて、武具を買い揃えたまえ。そなたが旅の途中で倒れたとしても、ワシは構わない!だがローラの身が心配なのだ!」
 まずはムートダラの町に行ってみよう。巨大な城門が開いたら、眩いばかりの太陽がわたしの行く末を応援しているように感じた。

第一章おわり

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