AIを超えた「哲理数学」一感情の数理化と「四則和算」

  数学では純粋に「数」だけを扱うが、京大文学部哲学科と東大大学院の「道徳感情数理工学」研究者との共同研究「哲理数学」は、AIと人間の関係を哲学と数学で考え、「意識」「行為」「分離数」「連続量」を分けて扱うことで、意識を数理で扱えるようにしようとする試みである。

●音声病態分析学と「四則和算」
 東大医学部の講座となった「音声病態分析学」が神奈川県の未病技術第1号を取得し、「声」から病態を分析できるようになり、東大から多くの国際論文が発表され、WHOで推奨され、医療機器認定を受けPST(音声病態分析感性制御技術)として展開。
 切る・動かす・重ねる・裏返すという「四則和算」を発明した東大大学院の光吉俊二特任准教授によれば、「切算」「動算」「重算」「裏算」に「繋げる」「混ぜる」「鍛える(伸び縮み)」「織る」という新しい演算を加えると、循環する円から意識を切り出したり、それをまた切って繋げると新しい概念や関数を生成することができるという。
 ちなみに、「切算」はヒトの意識を複素平面として切り分け、ヒトの行動から意識情報を規定する道具、「動算」は意識情報からベクトルを病理として分析し、ヒトの意識状態をベクトル計算する道具、「重算」はベクトルから同調関数を導出してヒトの意識を量子計算して細胞と重ねる道具、裏算はヒトの意識と病理の関係を算出する道具であるという。

●感情のメカニズムの数理化と古典能「翁」の研究
 愛、安心、快感、好感、安定感、嫌悪感などの感情を感情生成式を用いることで感情のメカニズムを数理モデル化できる。哲理数学と量子ゲートでの医学・スポーツ科学への応用研究によって、優れたスナイパーや弓の名手がが、なぜ「的に当ててから、引き金を引く」と言われるのか、また、優れた武道家が武道の本気で相手を倒し、神経伝達より早く的確に技を出せるのかなど、身体知性に関わる意識と体の信号処理、通信について解明が進んでいる。
 四則和算による古典能「翁」の研究によれば、能の面とは、主人公の本質である内面を「表」にする道具であるので、「オモテ」と呼ぶ。情報(言葉)は切り出された平面にすぎない。虚の中に本質がより高次に繋がって一体化し、能の幽玄は「重ね」、表と裏は因果であり、幽玄を受け継いで作られていった過去を回想する形で展開する。

●AIを超えた「哲理数学」
 AIが人間の仕事を奪うのではないかという不安が世界中に蔓延しているが、AIも量子コンピューターも二進法と論理学という思考の上で作られている。従って、命題を疑う、命題と異なる答を思考することはできないのである。それ故に、パターンマッチはやれても、生成AIにおいて思考の向きをパターンマッチさせるまでしかできない。
 それは、数学でも論理学でも、解を出す流れが一方向にしか流れないという魔法がかかっているからで、トロッコ問題の解決や、AIが学習していないこと、ヒトでは解決できない課題をやれなかった。
 そこで、この二進法や論理ゲートという支配を破壊できるのは人間のみと考え、AIの登場でヒトは大きく進化できるとし、これを実現する学問を出口康夫京都大学文学部長は「哲理数学」と命名したという。
 光吉によれば、この「哲理数学」は、東大の名物講座である生体信号処理講義で使われた「四則和算」を哲学分野に進化させたものである。これによって、命題➡解き方➡答えという解法の流れに逆行し、命題を疑い、新しい解き方をつくり出し、別の答えを計算する算術が生まれたのである。


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