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レジかごに知らない人のレシートが光のように残されている/梅鶏

2022年5月23日(月)のうたの日7時部屋の題「スーパー」で次席となった短歌。

「レジかご」とは、買い物かごのことで、バスケットとも呼ばれるものだ。スーパーやドラッグストアなどのかごは、買い物を終えると、キャスターの付いたかご入れに重ねられる。

作中主体は、会計を終えて、袋やマイバッグに購入した品物を入れ終わったのだろう。帰りしなにかごを返却する。そこで重ねられたかごの中を見ると、一枚のレシートが入っていた。

そのレシートは店員が処分するでもなく、不要レシート入れに入れられるでもなく、かごに入れられていた。そのレシートは読まれただろうか。おそらく買い物をした人物の役に立たずにかごに入れられたのだろう。

作中主体は、買い物をした人物を見たわけではないだろうから、レシートがただ「残されている」としか捉えられない。

そのレシートから「光」を感じ取ったのであるから、レシートの紙質は光沢を帯びたものか。それとも色の白さが店内の光、もしくは外光を反射していたのか。ピンクや黄色のレシートもあるが、このレシートは白だろう。長くて丸まったレシートではなく、比較的短くて広がった状態のレシートか。

そのさまに作中主体は「知らない人」の存在を見た。レシートを集めておらず、ポイ捨てまがいのことをしてしまう人物だ。物にも魂が宿っているとしたら、そのレシートはきっと泣いていたことだろう。かごの中という不本意な場所に残されたレシートは、涙を光らせたのかもしれない。

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