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トーストの余白が多く見える日のとっぷりのせる有塩バター/鈴木ベルキ

2022年11月13日(日)のうたの日7時部屋の「トースト」の短歌。

「トースト」とは、切って軽く焼いた食パンのこと。その「余白」とはなんだろうか。焼き目の付いていない部分のことか。平置きのオーブントースター使っているのなら、食パンの置き場所によって焼き目の付き方が変わってくる。普段からトーストを食べているので、「今日は白い部分が多いな」と感じたのだろう。また、「余白」は物足りなさに通じるので、作中主体の生活における物足りなさも象徴しているかもしれない。

「有塩バター」は、固形のものをバターナイフですくい取って塗りひろげる場合と、切られたバターをトーストに載せてからお好みで塗りひろげる場合とがある。「とっぷりのせる」という表現からは、前者が想像しやすい。「有塩バター」は、塩味と乳脂肪とが合わさってできる。

「とっぷり」という副詞は、物が十分に覆われるさまを表す。また、「トースト」と頭韻を踏んでいる。焼き目が比較的少ないトーストだが、その「余白」の部分まで覆ってしまうほどに「有塩バター」が載せられ、塗りひろげられてゆく。物足りない生活に、塩味のようなときめきと油分のようななめらかさを加えたいという胸の底に潜む願望が見えなくもない。

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