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さよならのかたちのまんまひらかれてだれも拾いにこない手袋/桐島あお

2022年3月23日(水)の7時部屋の題「さよなら」でバラ秀歌だった短歌。

上句はまさに仮名表記でひらかれていて、手袋がなんのよじれもなく地面にひろがった状態で落ちているさまが読み取れる。「さよならのかたち」であるから、手のひら側が天に向いているということだ。

下句でうら悲しい手袋の運命が体言止めにより表される。持ち主以外の人物が触れもしないうえ、持ち主も拾いに来ないという。

まだましな手袋なら、ポールや枝にはめてもらったり、ベンチに載せてもらったりする。この手袋はそうしてもらえないことを悟ってか、「さよならのかたちのまんま」で落ちているのである。

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