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回遊魚みたいに街を歩きたい終バスが何時かなんて忘れて/西鎮

2022年11月16日(水)のうたの日7時部屋の題「何時」で次席となった短歌。

「回遊魚」とは、定まった季節または時期に、広い範囲のほぼ一定の経路を移動する魚のこと。サンマ・イワシ・マグロ・サケなどが代表的。「回遊魚みたいに」という直喩は、群がって移動するさまも想像させる。ある季節になると、そのように街を歩きたくなるのか。行きつけの店や公園があるのか。

「町」ではなく「街」という表記であると、商店街などがあるようなにぎわう場所が想像できる。「終バス」は、夜という時を表す言葉だ。夜という海を「回遊魚」のように歩きたいと思う作中主体。路線バスか高速バスか。バスの行き着く先は作中主体の住まいだろう。作中主体は、街にいるのか、それとも終バスに乗っているところか、もう住まい着いたか。終バスに乗らないと帰れないところにある住まい。

街で楽しんでいても終バスの時間が常に頭の片隅にある。副助詞「なんて」は、ある事物を例示して、それを軽んじる意を表す。そのため、終バスの時間を煩わしいものとして表せている。作中主体にとっての現実を見つめつつ、思い描くイメージを大切にしている一首だ。

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