私が介護施設内で犯した窃盗事件について、全て話します 【連載】今井隼人被告が語る“介護の闇”#5

【事件概要】

2014年11から12月、川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、80から90代の入所者3人が、4階と6階のベランダから相次いで転落死した。事件があったすべての日に夜勤に就いていたのは、同施設の介護職員だった今井隼人被告ただひとりだったこと、そして「3人をベランダから投げ落とした」との自供により、2016年2月、神奈川県警は今井被告を殺人の容疑で逮捕。
一転、今井被告は裁判では自供を覆し無罪を訴えた。だが、一審、二審で死刑判決を受け、現在は最高裁に上告中である。

【今井被告が“介護の闇”を語るまでの経緯】

事件や裁判の経過とは別に、介護現場の実情を世間に問い、現状を見直す一助になればとの思いから、今井被告が介護に携わるようになった経緯から、逮捕までを書くことを依頼した。
本稿は、今井被告が介護現場で過ごした、約1年間の記録である。

※本稿は、今井被告から届いた手紙を文字に起こしたものです。なるべく原文ママでの掲載になりますが、一部、事実関係が損なわれない程度にこちらで修正しております
※本稿の売り上げは、今井被告への原稿料及び取材活動費などに充てさせていただきます

【私が介護施設内で犯した窃盗事件について、全て話します】

今回の原稿は、本件(連続転落死事件)のことではなくて、当時勤務していた介護施設内での窃盗のことについて書かせていただきます。

私が最初に窃盗をしてしまったのは、有料老人ホーム(以下、介護施設)で働き始めて仕事にも慣れた頃だったと思います。
ある男性入居者さまに、確か居室掃除をする機会があって訪室し、業務を行っていたところ、現金数万円がハダカの状態で置いてあり、とっさに取ってしまいました。
そして、特にその男性入居者さまから何か言われるわけでもなかったので、そのまま業務をして、退室してしまったのです。

これが最初でした。何も言われなかったし、バレなければいいが……といった気持ちがあったと思います。言い訳のように聞こえるかもしれませんが、当時の心境を振り返れば、月々の給与が安かったことが影響していたのかもしれないと、いまとなっては思います。

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