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コミュニケーションの組み合わせを考える

企業のコミュニケーションは、特定のチャンネルに偏って解決をするのではなく、さまざまな手段の組み合わせで企業価値をアップデートしながら解決していくものです。
この「組み合わせ」をマネジメントするのがパブリックリレーションズであり、わたしの専門とするところです。そして多くの来訪者のニーズ、頭の中にある希望のほとんどは、パブリックリレーションズの1ポーションにしかすぎないのです。

仕事依頼の動機はほとんどが間違い

何度もくりかえしますが、「ウエブページの見栄えをよくしたい」「主力商品をもっと知ってもらいたい」「動画作成でアドバイスがもらいたい」というような、情報発信の具体的なこと、営業活動の具体的な問題解決でプロを探していることが多いですが、そこに至った経緯が説明されていないかぎり、たいていの着眼点がずれていてまちがっています。ほんとうは、経営戦略から掘り起こされたニーズでなければならず、理論的な説明がつかなければ、1ポーション名が出てくることはありえません。

ずれているかどうかを知るには、以下の質問に答えられるか、でしょう。

1.それを解決して何を達成したいのか?
2.解決したいことと、企業がどうして存続するのか、という目的が一致しているのか?
3.望んだ変化の先にあなたは社会の何を変えようとしているのか?
4.3で答えたことは、あなたのみならず社会にとって益があることなのか?

1については、「売上1億達成!」みたいな数字を述べる人がいますが、その1億の内訳と妥当性はなんですか?数字の達成をすればあとはどうでもいいんですかね(お客をだましても売上を上げれば正義ですか)?

2について、企業理念というものがあると思いますが、その問題解決は企業理念達成に一歩近づく成果なんですか?達成はどのような意味あいがありますか(そのニーズは理念達成のロードマップにおいて、どこに位置づけれられていますか)?

3について、問題解決をし続けた結果、あなたの活動は社会の何を変えようとしているのですか(まさか「みんなが笑顔になる世の中を作る」とかじゃないでしょうに)?

4、で、それらはあなたのみならず、まわりのどれだけ多くの人にとって有益なものなのか、具体的に説明できますか?

まあ、たいてい説明できません。その場限りの問題解決なので。

「運営的」には、これらにすべて答える必要はありません。稼ぐためだけならば、お客をだましてだって稼げます。が、パブリックリレーションズは与信・採用・企業ブランド価値なども同時進行で底上げすることを信条とするので、お客をだましてまで稼ぐ姿勢には賛同できないし、採用的にも悪影響なことには加担しません。顧客の利益を無視して自分たちだけ稼げばいい、というマインドの会社はパブリックリレーションズは成立しないのです。

つまり、以下の理由の会社にパブリックリレーションズは成立しません。

・社長であるわたしのために働きなさい、というマインドの社長がいる会社
・会社を私物化している社長のいる会社
・売上目標が他人を出し抜いて儲けるための会社
・そこで働く人たちが自社に新人を胸を張って誘えない会社

こういう会社は、基本的にスキャンダルの巣窟です。情報発信をやればやるほどボロが出ますし、発信をしようとすると経営陣から「STOP!」がかかります。パブリックリレーションズはすべての情報を開示する気概と覚悟がないと成立しないコミュニケーションで、自分たちの都合のいい情報だけをうまく発信するための手段では決してありません。そんな人(社長)はわたしのnoteではお呼びでないので、もしそうなら即退場、がいいですよ。また、こういうところにかかわるというのは、世界的なPRコードに抵触しますし、そこに携わったPRパーソンは業界から永遠にマークされ排除されます。そういうレベルにある会社である、と自覚したら、広報担当者はまず自分の身を守るべき緊急事態であり、即退職すべき「命にかかわる」問題になります

あなたの情報発信ニーズの位置を簡単に特定する

最新のパブリックリレーションズの構造解説を通じて、あなたのニーズがこの世界観の中のどのあたりなのかを特定してみます。パブリックリレーションズの体系をまとめたのが以下の図になります。

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パブリックリレーションズもなんたらかんたらも、元々は「コミュニケーション」の一種です。それをどんな目的で使うのか、をそれぞれ分類していくと、「●●リレーションズ」という分類が始まります。

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このあたりになると、知っている用語が出てくるのではないでしょうか。みんなが使いたがる「広報」という意味は、「メディアリレーションズ(主に報道対応)」に入ります。

たった1つか2つのチャネルの募集しかしない企業と社長。原因菌は『基礎知識のない人』に毒された

では、最初に来訪者たちが思っているであろうワードを改めて並べてみて、この体系図に落とし込んでみると、あまりにも世界が小さいことに気づくはずです。

   マーケティングなのに?
   SaaSやテレワーク導入なのに?
   ホームページをちょっと改善したいのに?
   SNS運用体制を検討したいのに?
   コンバージョン解決したいのに?
   どうして報道対応のPR??

売上ベースでは、たとえばマーケ特化で重視する部分はありますが、同時に人材がエントリーして需要増に自動的に対応できる仕組みづくりと、運転資金確保の視点で与信をアップする特殊アプローチもおろそかにできないはずです。現場担当者の視点のみで突っ走らせてしまってはもったいない要素がたくさんありますよね?

報道対応に特化すると、IRやマーケやCSRはどうなるんでしょうか?SNS運用って、マーケの一部の一部ですよね?コンバージョンなんて、さらに末端ですよね?ホームページのみばえって、なんの解決なんですか?

これって、10年くらい前に主流だった、「どんな広告打ったらいいかな?」の延長なんですよね。このマインドの発生源は、基礎教育を積めなかった広報担当者やAd担当者の「木を見て森を見ず」な視点から発していることが多くて、社長などもそういうマインドに毒されています

そのニーズ、誰が言い出したのか、誰の考えが元になったのかを改めて見てみてください。そしてその人のキャリアを再度見てください。戦略のフレームワークを大学で学んだ人ですか?あるいは類似した知見を確立した人によるものですか?

この差は結構大きいですよ。パブリックリレーションズを学ぶ環境がなければ、現場目先のスキルたたき上げによる知見形成しかないわけで、その考え方をコミュニケーションの全体に取り入れるのは危険だということを、最初に書いていますよね。その危険なマインドから出た「ニーズ」であるならば(ことばをかえれば、基礎知識としての24000ページ分の蓄積もない人による、木を見て森を見ない立案だったとしたら)そもそもそのニーズ自体をいったんゼロベースで見直す必要があります。それは目先のことしか見ていない、経営的にはとても稚拙な視点だからです

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