木を見ることしかできない
自分のプロフィール紹介兼仕事依頼記事。を切り分ける企画パート2。あと2回かな。
パブリックリレーションズに関する募集のほとんどすべては、ウエブがどうの、マーケがどうの、という、少なく見積もっても100あるコミュニケーション手段の1つか2つをどうにかしてよ、という程度のものばかりです(マーケはちょっと事情が違いますが)。その中でも特に多いのが「報道対応どうにかしてよ」なものです。最近かっこつけているのは「UI」か「デザイン」です。たしかに当事者たちはこの問題がとんでもなく大きなものなのですが、わたしの視点は、もっと大きな問題があるよね、と。
そのチャンネルを使う根拠はなんですか?
これがまったく、募集要項に記されていません。
SNSを使う根拠はなんですか?みたいな。集客に有効だから。有効だと思った証拠はなんですか?と聞いていくと、あいまいな返答になっていきます。
ここのnote読者の特徴から、超わかりやすい募集例をあげてみると。。
「TikTokを使って40代男性にアプローチして商品販売の優位性をほかよりもはやくつかみたい」
たぶん、この例で合点がいくかと。↑これ、本当にあった話ですからね!
いろいろつっこみたくなるでしょ?なんでTikTok?なんで40代、しかも男????そうそう、そのききたくなる理由の根拠が、まったくこういう募集に記されていないんですよ。
この例のように、わたしが指摘するこれらの募集に共通することは、このチャンネルを使いたい根拠が決して添えられていないことです。顧客ニーズや自分たちの都合を優先した結果、ウエブを使いたかったり、人をだますUIに寄せていきたかったり、というような。で、そのチャンネル使いを雇うわけですが、ちょっと視点を変えて、たとえばFacebookはいつから使われたコミュニケーションでしたか?いまだに紙のパンフレットがあるのはなぜだと思いますか?わたしが勤めたことのある会社で、テレビゲームのキャラクターデザインをやっていた人が、紙メディアのチラシ作りを担う「宣伝担当」をやっていたところがありました。テレビゲーム、と言っても、ゲーセンのゲームのデザインをドットで起こしていく、本当に昔のものです。そして、そもそも向いてないし、適切でないコミュニケーションをやらされていた。こういう「木を見るだけの募集」は最終的に、かかわるすべての人の機会を殺していくのです。もしくは、使い捨てです。使い捨てでいいから、フリーランスのPRに下りてくる案件のほとんどは、やりきりな企画ばかりです。
あらためて、最初の記事で記した、広報系の仕事募集の内容リスト。
マーケティング
SaaSやテレワーク導入
ホームページをちょっと改善したい
SNS運用体制を検討したい
コンバージョン解決したい
メディアにアピールしたい
つまり、さいしょにくくった上記のニーズって、本当に正しいんですか?ってことです。
マーケティングなのにって、ほんとにマーケ必要なの?
SaaSやテレワーク導入ってそもそも何が目的だかわかってる?
ホームページをちょっと改善するだけでいいの?
SNS運用体制を検討したって、来年それがあるかわからんでしょ?
コンバージョン解決で得たいものって1つだけでいいの?
報道呼んで採用されれば売上XX倍になるんですか?
こういう募集にありがちなのが、KPIとKなんちゃらを設定していることでしょうか。これは最終ゴールでもなんでもないですからだまされてはいけません。最終ゴールの1つか2つ前に売上アップ。ゴールは経営理念の実現です。でないと会社が存続する意味がなくなり、倒産の淘汰に飲み込まれます。
あなたのニーズの範囲は、大したことがないのです。コミュニケーションは、あなたの思っている以上の成果を出せます。2つ、3つと組み合わせて、あなたが求める以外の成果も同時に取っていくような制度設計がなければ、とくに人手が足りない中小企業・ベンチャー企業には命取りですし、そういう考えができなければ情報発信担当者は失格ですし、社長なら致命傷を負うでしょう。そうならないよう、基礎知識を積んだパブリックリレーションズの専門家は制度設計を手助けすることができます。基礎知識を積んだ人をこの国日本で見つけるのは、砂浜でダイヤモンドを拾うくらい奇跡に近いことは、さきの記事で書いてますけど。
木を見ることしかできない人が、募集要項をアップデートすることはほぼない
デザインや営業募集しかしない人事担当は、それ以上のレベルに上がることができません。これがボトムアップの最大の欠点なのです。最高を経験したことがないのに最低を語ることができないわけで。ボトムアップにはボトムアップのやり方がありますが、今回のネタはそれではないので。
この募集要項のソースが社長発であるのならば、社長はコミュニケーションに対する考え方を「HPが必要だ!」「SNSを開設しなきゃ!」「営業拠点つくらなきゃ!」というようなボトムアップで考えるのではなく、「経営理念を最短で確実に実現するためになにをすべきか」というトップダウンの考え方にひっくりかえさないと、倒産します(生き延びても成果はあがらないでしょう。まちがったコミュニケーションをしつづけることになるから)。
すべての原因菌は、社長のコミュニケーションに対する安易な認識から来ている
そもそも、弁護士のための法学部というように、PRプラクティショナーのPR学部が日本にほとんどない環境で、基礎知識なしでもがんばっている広報担当者がゴマンといる中、そんな人たちにトップダウン的視点でコミュニケーションを考えろ、と言うのはかわいそうってもんです。知る機会、学ぶ機会がないわけですから。かわいい広報担当者を殺したくないのなら、その広報を支えることができるのは社長しかいないわけで。社長の武器であるトップダウンで、すべてのコミュニケーションの筋道をあきらかにして(=ひっくり返して)、そこに広報担当者を走らせる、ということが必要なわけで。そういう環境を整えてはじめてボトムアップ型人材はパワーを発揮するわけなのですよ。全部を広報のせいにするな。コミュニケーションを取る意味を考え、上流からものごとを考え直せ、というわけです。
木を見ることしかできない人、ばかだなー、という人はもっと残念。じゃあ、森を見れるようにどんなことをすればいいのか、という考えをはじめ、走りだせ、と思うわけで。
変な広報募集をひっくり返すには、
2つか両方か。
1.わたしのようなコミュニケーションをトップダウン目線で見てプランする人と契約する(しかも基礎知識付き)
2.社長がトップダウン目線ですべての要素を再検討し、自らがプロマネになって駒づかいのひとつとして現行の広報担当の使い方を再考する
「情報発信、やっといて」とか言い出す社長がたまにいますが、とんでもない丸投げです。そんな会社からはすぐに脱出しましょう。中小企業であればあるほど、この決断の成否は直接経営に響くものですし。
<この記事のおおもとの作品はこちら:超長文>
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