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店長を辞める時、褒められたこと

以前、店長と呼ばれる仕事をしていた。

学生時代に働いていた店の店長は、穏やかな人だった。
お店の雰囲気は明るかった。私も仕事はきちんとこなしていたけれど、遊びに行くかのような気軽さでアルバイト先に通っていた。
だから私も「こんな風に、働いて楽しいと思える店を作りたい」と思い、店長職を志したのだ。


実際に就いてみると、人間関係のトラブルを仲裁したり、手を抜いている人がサボらないような仕組みを作ったり、あまり楽しいとは言えないような仕事が多かった。

「店長」という役職はもっと年を重ねた人間がするもの…と思っている人が多いのか、お客様から「若いね」と声を掛けられることも多かった。
つまり、周囲の従業員は年上が多いということだ。
上司といえど、何十も年下の女から叱られたところで、真剣に聞いているふりをされるだけだろう。

まずは話を聞いてもらうため、信頼関係を築かなければならない。
しかし、信頼関係を築いても、異動すればまた1からやり直し。
そんなことを繰り返しながら数年働いたが、事情があり退職することになった。

退職の挨拶を、関わりのあった従業員にする中で、ある人からこう言われた。


「高田さんは、普段から関わりのない店舗に来た時も、必ず全員に挨拶して、少し言葉をかけてくれますよね。帰る時も、必ず全員に声をかけて帰る。今までいろんな上司を見てきましたが、それって誰にでもできることではないです。きちんと見てくれてるんだなと思って、とても嬉しかったです。だから、いろいろと相談しやすかったです」


まさか、当たり前にしていたことでそんな風に言ってもらえるなんて思っていなかった。挨拶して少し言葉を交わすと「今日は元気なさそうだな」「もしかして体調悪い?」など、相手の変化に気付けることがある。

自分のためにしていたことでもあったのだが、肯定的に捉えてもらっていたことが嬉しかった。
相談しやすいと思ってもらえていたのも、店長冥利に尽きる。

店長と呼ばれていた頃のことを振り返ると、悩んだり、苦しかったりしたことの方が圧倒的に多い。
それでも、一緒に働いていた人からかけてもらったその言葉を思い出すと、すべてが報われたような、そんな気持ちになれるのだ。

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