「小市民シリーズ」を読み終えた
米澤穂信先生の「小市民シリーズ」を読み終えた。
「春期限定いちごタルト事件」から始まるシリーズものの小説だ。先月末、完結作である「冬期限定ボンボンショコラ事件」が発売されたばかり。
米澤穂信〈小市民〉シリーズ特設サイト (tsogen.co.jp)
冬期限定が出ると発表されてから、既刊をすべて読み返した。主人公である小鳩くんと、彼と互恵関係を結ぶ小佐内さん。春、夏、秋とシリーズを追う中で、ふたりの関係性に変化が生じる様子を一気に読めるのは楽しかった。
私が小市民シリーズを読み始めたのは、10年くらい前のはず。
シリーズ本編の「秋期限定栗きんとん事件」の下巻が出たのは15年前だそう。リアルタイムで追っていた読者は、冬期限定が出ることにどれだけ喜んだだろう。たった10年追いかけている私でさえ、雑誌「ミステリーズ!」で新作が発表されたり、短編集の「巴里マカロンの謎」が発売されると知った際には大喜びしたものだ。
そして、今回読み終えた「冬期限定ボンボンショコラ事件」について。轢き逃げにあった小鳩くんの描写がとにかく痛々しいのだが、彼が回想する過去では、心までぐさりと刺されたように痛くなった。読んでいるこちらまで、思い出したら転がってしまいたくなるような青い記憶が蘇ってくる。それでも過去は変えられないし、抱えて生きていくしかないのだと思い知らされた。
作中に出てくるスイーツの描写がとにかく美味しそうで、甘いものを食べたくなる。しかし読後感は爽快ではなく、ほろ苦い。それこそが小市民シリーズの魅力だ。ほかの人が書いた感想で「ビターチョコレートのよう」と評しているものをいくつか目にしたが、同感だ。
夏にはアニメ放送も控えている。この作品のほろ苦い魅力がどれだけ表現されているのか、楽しみだ。「劇場版輪るピングドラム」や「さらざんまい」も観たので、ラパントラック制作であることも楽しみのひとつ。小説の表紙に引っ張られて、キャラクターデザインにまだ慣れない。ただ、米澤先生の別シリーズである「氷菓」も観ているうちに慣れたから不安はない。しばらくは完結の余韻に浸りつつ、夏を楽しみに待とうと思う。
TVアニメ『小市民シリーズ』公式サイト (shoshimin-anime.com)
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