【映画レビュー】「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(アニメ)」(2017年　日本)〜この作品自体をどういう角度で見るべきか？〜

【タイトル】
「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(アニメ)」(2017年　日本　90分)
総監督 新房昭之
監督　武内宣之
脚本　大根仁
原作　岩井俊二
声の出演　広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子

【解説】
　原作は1993年に放送された単発TVドラマ。監督は「スワロウテイル(1996年)」「リリイ・シュシュのすべて(2001年)」の岩井俊二監督。
　あまりの完成度の高さで、岩井監督はこの作品で日本映画監督協会新人賞を受賞。更に1995年に劇場公開されるなど、異例の人気作となった。

　今回紹介するのは、「物語シリーズ」「魔法少女まどか★マギカ」など、前衛的な映像演出に定評のある新房昭之監督と制作会社シャフトにより、劇場用アニメーションとして公開された作品。

【あらすじ】
　母の再婚により転校が決まり、街を去って行く少女・なずな。
　そんな彼女に恋心を抱いていた少年・典道(のりみち)は、突然のなずなとの別れに嘆く。
　偶然、拾ったガラス玉をヤケで投げる典道。
　すると、何故か時間が巻き戻り、なずなと別れる数時間前までに時間が戻っていた。

　大人の勝手な都合で好きな女の子と別れることになった少年が、何度も時間を巻き戻して、大人たちから逃げようとする少年少女の切ない恋を描いた作品。

【感想】
　ストーリーそのものは面白かったです。ループ物として、主人公二人が大人たちと友人たちから何度も逃避行する姿と、甘酸っぱい恋愛描写は良かったです。
　……ですが、正直に申し上げますと、いろんな要素が噛み合わなかったのか、観ていて非常に違和感を感じる作品になっています……。

　まずは、キャラクターたちの声と演技。
　キャスト欄を見れば、察してもらえるかと思いますが、キャラクターたちのセリフと掛け合いを聞いているとズレがあり、違和感を感じます。

　また、新房監督とシャフトが手掛けるアニメ作品は、どれも前衛的で独特の映像演出が特徴なんですが、この作品の場合、独特の演出が抑えられており、ちょっと新房監督とシャフトの作品にしては物足りないと言いますか……。
　映像美はさすがシャフトという感じで見事でしたが。

　それらが組み合わさって大きなズレになり、内容よりも視聴時の違和感が勝ってしまう作品になってしまったような気がします。

【ラストのネタバレあり】

　ラスト。新学期がスタートしたが、何故か教室には典道が居ないという謎を残して終わります。
　これでは余韻はなく、謎だけが残るような終わり方に……。
　視聴者の想像に任せるように余地を残したのか、いろいろ考察できるような仕掛けにしたのかわかりませんが、だとしても、もう少しヒントのような要素を残して欲しかったかと。

　とにかく、いろんな要素が噛み合わずに残念な映画になってしまったような気がする劇場アニメ作品でした。
　ちなみに主題歌のDAOKO×米津玄師が歌う『打上花火』は名曲です