【映画レビュー】「ベニスに死す」(1971年 イタリア、フランス、アメリカ)~圧倒的『美』に魅入られた老紳士の末路~

【タイトル】
「ベニスに死す」(1971年 イタリア、フランス、アメリカ 131分)
監督 ルキノ・ヴィスコンティ
脚本 ルキノ・ヴィスコンティ、二コラ・バダルッコ
原作 トーマス・マン著「ヴェニスに死す」
出演 ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン


【あらすじ】
 スランプ中の老作曲家が休養でヴェネツィアのホテルに宿泊。
 そこで、とてつもない美少年・タッジオと出会う。
 タッジオの美貌が目に焼きついてしまった老作曲家は直接、彼に話しかけることはせず、ただ遠くからタッジオを見つめ続ける。
 老作曲家のタッジオへの想いは次第に強くなっていき、ついに……。

「タッジオ、愛している」

 老作曲家は、そう言葉にしてしまうのであった……。

 一方。ヴェネツィアではコレラによる感染症が広まりつつあり、ホテルにも危険が迫っていた。

【感想】
 老紳士の禁断の恋を描いた作品。
 とにかく、タッジオ役のビョルン・アンドレセンの美貌が凄い。シンプルに美しすぎる。人ではなく、絵画か、人形ではないかと疑ってしまう。
 タッジオの美貌に合わさって、ヴェネツィアの景色も美しく、映像だけでヴェネツィアを観光してきたような気分になれる映画であった。

 道ですれ違い、何度か顔合わせただけの少年を愛してしまい、彼に触れたくても触れられないという老紳士のタッジオへの想いが切ない。
 また、作家として苦悩していた時に真に美しいモノと出会ってしまい、創作物は天然、自然から発生したモノには敵わないという哀しい皮肉も描かれている。

 老紳士の報われない想いを抱き続ける姿と、そんな老紳士の想いに気づいているのか、気づいていないのかわからないタッジオの魔性さなど、セリフが少なくとも映像だけで成立している見えないなにかが、この作品にはあった。


【余談】
 タッジオ役のビョルン・アンドレセン。あそこまで美しい美貌の俳優は本当に稀だと思う。
 ワンカットワンカットが、まるで絵画のようだった。

 ちなみにビョルン・アンドレセンは「ミッドサマー(2019年)」で崖から落ちる老人役を演じており、視聴者に多大なショックを与えた。

 もはや、ビョルン・アンドレセンの美貌がこの「ベニスに死す」を名作に押し上げたと言っても過言ではない。


 更に余談だが、人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険 part5 黄金の風」に登場するキャラクター(ギアッチョ)が「なんで、(この映画のタイトルは)「ヴェネツィア(イタリア語)に死す」じゃなくて、「ベニス(英語)に死す」なんだよ!!それって納得できるか!?イタリア語にしろ!イタリア語に!!」と、一人でブチギレながら言っていた。
 たぶん、この映画の資本金をアメリカが出したのでタイトルが英語になったらしいです

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