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【掌編物語】ごく短い物語集

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掌編サイズ(大体800-2000文字程度)の物語を載せています。
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#オリジナル掌編小説

行きつけの本屋さんが撤退するらしい。

自宅の最寄り駅に丁度良いサイズの本屋さんがある。 週に2度は必ず寄る本屋さんなのだが、今年いっぱいで撤退するそうだ。 個人的には愛着があるのだが、至って普通の本屋に過ぎない。何か特定のジャンルに強い訳でもない。内装に凝っているとか、カフェが併設しているとか、陳列がオシャレとか、そういう訳でもない。 でも、私の生活にとって欠かせない場所だった。 ◆ この本屋さんとの最初の出逢いは、社会人1年目の時だった。 たまたま引っ越して来たマンションのスグ近くにあって、引越2日

エンジェルはデビルの顔してやってきた

「あなたごめんなさい。月のお小遣いなんだけど、1.5万円にしてもらっていい?」 「うん、そうだね。これからお金掛かるもんね。…。分かった」 深刻な顔をした妻から夫婦会議をしたいと言われた時、夜寝付けないくらいに怖かった。でも、妻の口から出てきたのがお小遣いの件で、少しホッとした。 今年、息子が中学生になった。今迄以上にお金が掛かる。塾費に部活費に、息子は運動部に入るから食費だって必要になる。本当は息子が中学生になる段階で妻が仕事に復帰する予定だった。 だが、おじいちゃん