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行きつけの本屋さんが撤退するらしい。

自宅の最寄り駅に丁度良いサイズの本屋さんがある。

週に2度は必ず寄る本屋さんなのだが、今年いっぱいで撤退するそうだ。

個人的には愛着があるのだが、至って普通の本屋に過ぎない。何か特定のジャンルに強い訳でもない。内装に凝っているとか、カフェが併設しているとか、陳列がオシャレとか、そういう訳でもない。

でも、私の生活にとって欠かせない場所だった。

この本屋さんとの最初の出逢いは、社会人1年目の時だった。

たまたま引っ越して来たマンションのスグ近くにあって、引越2日目くらいに封筒が必要になり買いに行った。

ただ、それだけだった。買った封筒を何に使ったかも、もう覚えてない。

あれから、もう8年が経ってしまった。

その間2度も引っ越しているのだけど、この本屋さんの周囲をぐるりと回るように引っ越しただけ。

ただ、最初は北向きだった窓が、西北向きを経て、今は南向きになったから、一応、私は進んではいる。給与も随分と上がったし、仕事だって結構大きな仕事に関わるようになった。

でも、この本屋さんとの付き合い方は、ずっと変わってない気がする。

いわゆる行きつけって感じなのかな?

いや、飲み屋さんの店主の関係性とは違うから、行きつけってのも変か。
ツケ払いも無いしね。

そうそう、付き合うって感じかもしれない。もちろん、勝手に私が思っているだけなんだけどね。

私の場合、この本屋とは、独特の付き合い方がある。

折角だから軽く説明しておこう。

この本屋さんに行くと、最初は頭を空にして店内を1周する。毎回、同じルートに同じスピードで1周目は焦点を絞らずに全体を見る。見る順番も決まっている。

1周目は気になる本があってもスルー。まずは全体を見る。

2周目は先ほど目に留まった本、2週目に急に視界に入ってくるようになった本を手に取りザッと読む。目次から気になった項目をチョコッと読んだりするけど、内容よりも感覚を大事にする。

手に取った時の感じ。頁を捲った時の感じ。そうやって、2冊から3冊選ぶ。

例えば、先週の金曜日に来た時は、会社における処世術とか、メンタルヘルスに関する本ばかりが目に留まった。

そして「職場の人間関係」に関する本を1冊、「後輩とのコミュニケーション術」に関する本を1冊購入した。

会社では上手くやっていると思うし、緩衝材のような役割を果たしていると思う。上と下の間、部署と部署の間、仲良しグループと仲良しグループの間。

自分で言うのもあれだけど、かなり貢献していると思う。

でも、だからこそ人間関係に疲れているんだろうね。常に役割に徹しているからね。

私は弱音を吐くのが苦手だし、モヤモヤした感情の元素みたいなのが浮かんできても気付かないフリをするし、絶対にネガティブな言葉を当てないよう意識している。

でも、そうか、意識している時点で本当は結構なストレスを浴びているのか……。

こうやって、心の声を、直感で選んだ本に代弁してもらっている。強がりな自分の奥底の声を直感で選んだ本が教えてくれる。

何何の本が欲しい!ってな具合に目的を設定せずにボケーッと寄るから、
背表紙の題、表紙の題やコピー、店員さんが作ったPOPの言葉に導かれるようにして、今の自分の心の声に気付く。

書店は私にとってセルフカウンセリングの場なのかもしれない。

だから、撤退は困るんだよね。

個人的意見なんだけど……。

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【題】普通の書店
この物語はフィクションです。

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