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日本にあってタイにないもの【肉編】

 当然ながら肉はタイにもあるし、ジビエはないにしても、ワニとかカンガルーとかがあるので、肉の種類は日本と大して変わらない。なんなら、よく食べられている豚肉や鶏肉そのものは日本よりもいいものである気がする。しかし、やっぱり日本で食べた方が肉はおいしい。たぶん、切り方とか管理が違うのではないかなと思う。

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 ボクにとってのタイ最初の肉の思い出は、カオサン通りの屋台で売っていたヤキトリだ。ガイヤーンというほどのものではなくて、串に3つくらいだけ鶏肉が刺さっているか、小さめのもも肉が刺さっているかで、1本5バーツほどの、カオサンにしては良心的な値段設定だった。

 これが本当においしくて、止まらないくらい。何回も買っては食べていた。タイの鶏肉はおいしいのだと身体で思い知った。豚肉もおいしいと思ったけれども、やっぱりヤキトリが一番だったな。

 タイもいわゆるブロイラーが一般的だ。「軍鶏」は昔のタイの国名であるサイアムが訛ってシャモと読む。タイの猫もシャムネコというが、語源は同じだ。そう呼ばれるのは、元々はタイから来た品種で、日本でも飼育されるようになったからだ。タイでは闘鶏にも使われるので、軍の鶏はそこからの当て字なのでしょう。

 だから、イメージではタイに来ればどこでも軍鶏が食べられると思うが、やっぱり地鶏は時間と金がかかるので、そう簡単には流通しない。基本的に口にできるのはブロイラーだ。地鶏の方がいいのではないかと飲食店で訊いたことがあるが、結局採算が合わないとのことで、ブロイラーしか選択肢がないと言われた。

 でも、タイのブロイラーがおいしいのはなんでだろうか。日本だとそこまで感動するような鶏肉には出会わない。考えられるのは、まず養鶏場から食卓までの距離が短いというのがあると思う。肉は多少時間が経った方が味がよくなるという話は置いておいて、これまで見聞きしてきた中で絞めてからテーブルに並ぶまでの最短は12時間弱だ。24時間以内なら普通だ。鮮度が違うのかなと思う。

 先の時間を置いた方が、というのもタイの場合は気温が高いし、以前は輸送車の保冷・冷凍がしっかりしていなかった、あるいは炎天下をそのまま運ぶというのが普通だったので、距離が短くても味が落ち着いたという可能性もあるかもしれない。流通がしっかりとしてきた現在はそこまで感動する肉質にあまり出会わない気もする。振り返ってみても、ここ数年間でカオサンで味わったような感動を覚えた記憶がない。

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 日本の場合は食材の扱い方がうまいということもあって、肉そのものがタイと比較していいか悪いかはよくわからないけれど、切られた肉の質や食感は日本の方が上という気がする。肉という筋肉の繊維をどう断ち切るか、日本の調理師とかブッチャーの中で本気で肉に向かい合っている人は、そこまで考えていると思う。

 タイの屋台でそこまで考えているかな。妻にくっついてたまに市場に行って肉屋が肉を切っているところをじっと見ていたりするけれども、だいたいどの市場も中華包丁で叩き切っている。

 日本の場合は刺身も鶏卵も生で食べることを前提とするから、扱いが繊細だ。タイの場合はそもそも加熱調理が大前提だから、そこまで厳密ではない。

 それから、日本人の食へのこだわり。あと、サービス精神かな。このあたりが違うのかと。タイだと切り方はどうであれ、味は同じでしょう、みたいな。タイ料理の味は基本的に調味料の味だ。だから、こだわったところで、ってことなのかもしれない。もちろん、深く考えるシェフもいるのだけども、日本ほどはいない。

 だから、肉そのものはタイの方がいい気がするけれど、日本だと口にする肉の質感とかが違う・・・・・・気がする。かといって、日本人調理師がいるタイ国内の飲食店において、必ずしも肉がうまいわけでもない。結局のところ、日本という雰囲気にボクがまだ慣れていないだけだったりして。

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