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ブイビエンの裏の屋台がおいしいけど接客力ゼロですごかった

 バンコクの安宿街カオサン通りのような雰囲気を持つ、ベトナムはホーチミンのブイビエン通りは、今やカオサン同様にナイトスポットになっていて、表通りは物価が高くなっている。といっても、今のこの渦中以前の話で、その後どうなっているのかはわからないが。タイと同じで外国人旅行者がいないから、だいぶブイビエンもおとなしくなっていると思う。

 ボクが初めてブイビエンに来たのは2011年だ。当時はブイビエンというよりはファングラオと呼ばれることが多かった。安宿としての機能はあったが、そんなに人がいなかった。たぶん今の閑散とした状態がそのころに似ているかもしれない。麻薬の売人がしつこくつきまとい、大通りにはホンダガールという怪しい売春婦がバイクで追いかけ回してくる。そんな場所だった。

 それが数年して久々に行ってみると、外国人だけでなくベトナムの若者も大量に押しかける通りになっていた。このあたりの変遷はまるでカオサンと同じだ。人が増えたブイビエンには屋台や食堂の席が道の半分以上を占めていた。週末の歩行者天国は2017年ごろに始まったはずだが、すでに夜はいつも歩行者天国のようなものだった。

 飲食店もバーも、そして屋台もどんどんと値段がつり上がってきて、以前ほど居心地がいいものではなくなってきた。それでもタイよりはずっと安いけれども。

 ところが、一歩裏道に入ると途端に以前のような物価感覚になる。この落差がおもしろい。宿の近くで何度も行った店は安いしおいしかった。いい店なのだが、接客が最低でいつも白人客と揉めているような店だ。

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 ホーチミンの裏路地はヘムと呼ばれる。タイでいう小路を意味するソイのことだ。地方やサイズなどで呼び方が違うみたいで、ハノイだとンゴーと呼ばれたりする。ハノイは住民以外がンゴーに入ることができない場所が多いが、ホーチミンのヘムは比較的自由に出入りができ、ヘムの中にも飲食店がある。

 この自由度の違いはハノイとホーチミンの市民の気質の違いなのかと思う。2011年にボクが初めて来たときはヘムの中はそれほど活気はなかった(特にブイビエンの話)。ところが、SNSの発達で必ずしも表通りで店や安宿を展開する必要がなくなり、奥でも客を集めることができるようになった。そうして、ホーチミンのヘムはより発展してきた。

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 食事関係だけでなく、ブイビエンの安宿も表通りよりは裏通りの方が安い。というよりも、表通りは明け方まで騒々しいので、高い金を払ってうるさくてかなわないのでは、なんかもったいない話ではないか。ヘムの中の方が静かで落ち着く。

 幸い、今はヘムの中の宿もネットで予約できるので使いやすい。ただ、マップが正確ではないことも多いので、辿り着けないこともあるので要注意だ。

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 2019年時点では閉鎖してしまったが、ブイビエンのヘムの中にいい宿があった。家族経営で、Wi-Fiもそこそこのスピードで使えるところだった。ブイビエン通りからこの宿の間に、今回紹介する店があった。サンドイッチのバインミーのほか軽食的なものを出してくれる屋台だ。

 一応席もあって、ビア・サイゴンのグリーンラベルだけしかないが、ビールを飲みながら炒めものなどを食べられる。値段がバインミーで2万ドンだ。初めてベトナムに来た2010年ごろから2015年くらいまではベトナム人は2万ドン=1米ドルと計算していた。実際は2万ドン以上になるので、最近は実質レートに合わせて2.2~2.4万ドンくらいを1ドルと言うようになってきている。しかし、この店はいまだ2万ドンを1ドルとしていた。

 ブイビエンでバインミーは安いところで2.5万ドンはするので、値段設定がそもそも安い。ほかの料理もそうだし、ビールもブイビエンで飲むよりもずっと安かった。ここのバインミーは単に牛肉と野菜を炒めたものを挟んでいるだけでシンプルなのだが、そういうのがまたおいしいわけで。

 最初のうちはバインミーをテイクアウトにして、部屋で動画を観ながらビールでバインミーをやっつける感じで楽しんでいたが、その後何度か店でも食べてみた。そうすると、何回もトラブルが起こる。ほかの客と揉めているのも何度も見かけた。

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 ここはおばちゃんとその娘がやっている。おばちゃんというかおばあちゃんだし、娘がもうおばちゃんなのだが、女性の店だからか、ベトナム人女性がやたらと集まってくる。

 ばあちゃんが作るときはバインミーなどなんでもおいしい。でも、娘が作るとなんかイマイチになる。そこも問題だが、困るのは全然英語ができない上に、物覚えが強烈に悪いことだ。

 英語ができないのはいいとしても、全然憶えられなくて、注文したものがなかなか来ない。来ても間違えているなど、いろいろとやってくれる。一番ひどかったのは、生春巻きかなんかを注文したときのことだ。注文したものはうろ覚えだけれど。

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 頼んだのに全然来ないし、来ないと言っても全然通じない。だからあきらめて帰った。そうしたら、驚くべきことに、翌日再びここで軽く飲んでいたら生春巻きが出てきたのだ。頼んでないと言うと、「え? 注文受けたよ」みたいなことを返してくる。それは昨日だし。どういう記憶力?

 それから、会計でいつもここの娘と揉めていた。ばあちゃんは英語ができないので、基本的に調理もする一方、接客は基本的には娘がすべてやる。で、注文自体を憶えていないわけなので、会計もいい加減なのだ。

 ボクのときもそうだったが、とっくに帰った別の客の料理の料金が加わっていたり。英語が通じないから、頼んでいないことを説明するのが大変だ。メニューを持って来させて、これとこれとこれだって説明して、やっとなんとなくわかってくれた感じになる。

 これがボクだけでなくほかの客でもそうなのだ。まあ、ここには白人のじいさんばかりしか来ないけれど。彼女はとにかく毎日誰かと揉めていた。ちなみに、先の生春巻きの料金は来なかったときに請求され、来なかった日に請求されなかった。

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 ブイビエンはやたらにマッサージ店が増えている。安宿街=マッサージ店というのは東南アジアの王道なのだろうか。カオサン通りと違うのは、ブイビエンの場合は女の子が若くてエロい感じの子が多いことだ。

 しかし、聞いた話ではベトナムは社会主義国で売春関連に厳しいため、見た目にエロさがあればあるほど、実はそうではないのだとか。本当の売春施設は地味で、知らない人には絶対に見つけることができないという。

 ブイビエンは一部にそういう裏サービスもあるみたいだが、基本的には本当にただのマッサージだそうだ。ボクはマッサージが好きではないので、行ったことがない。だから、真相は伝聞になる。この屋台の周辺もたくさんあって、毎日通り、毎日断っているのに声をかけてくる。

 上の画像の女性はこの屋台に最も近い店で働いていた人だ。この人なんかは暇すぎるのか、ボクが座っているテーブルまで来て、ボクがいる間延々と座って、延々となにかカタコトの英語で喋って帰っていった。チップとかは要求されなかったから、ビールを飲みながら話を聞いてみていたけれど、なにひとつ、ためになる話はなかったと思う。

 ほかの屋台なんかは2回も行けば顔を憶えてくれて、しばらくしてからまたホーチミンに来たときに足を運べば「おお、来たか」なんて迎えてくれる。でも、注文さえ憶えられないこの店は、何回も行ったのに、次にブイビエン滞在時に顔を出したら完全に忘れられていた。それからはもう行っていない。このコロナ禍で営業を続けているのだろうか。まあ、やっていないだろうなあ。

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