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コロナ禍の思い出︰密です!

新型コロナウイルスのワクチンが行き渡る前は、「人が密集して換気の悪いところにいると危ない」とよく言われていた。
それを、密集・密閉・密接、あわせて「三密」という言葉で端的に呼び習わしていた。

報道陣があちこち飛びまわっては密集して取材をするため、小池百合子東京都知事が「密です!(距離を開けろ!)」と叱るシーンが話題にもなった。

そして十分に距離を開けることを「ソーシャル・ディスタンス(ソーシャル・ディスダンシング)」と呼んだ。

問題は、当初どこまでの「密」が許されるのか不明というところだった。
劇場やライブハウスといった場所は開けることはできず公演中止が相次いだ。

飲食店は飛沫、いいかえるとツバが感染の原因となることから、店員と客の間、客と客の間をどう空けるかという点に課題が生じた。

そして最も苦しんだのが、「酒」の絡む店だった。

酒を飲んで喋って騒ぐと感染リスクが高まる。理屈は間違ってはいない。
でもその結果、大規模な宴会需要で稼いでいた居酒屋や、バーやキャバクラ等の店も、皆ダメージを受けた。

居酒屋は休業明けでも通常通りの営業はできず、20時には閉店させられた時期もある。なんならそうそう会話のなさそうな牛丼チェーンすら早仕舞いさせられたのだから、もう少し考えようというものはあっただろう。

飲食店への助成金は貸付となっているものもあった。コロナ禍が1年程度で終われば返済も苦労しなかったかもしれないが、街に人流が十分に戻るより先に返済不能で潰れる、というケースもあった。

テレビ局はタレントの顔を隠すのを嫌いマスクをした状態で撮影することはあまりなかったが、雛壇芸人は距離を大きく取っていたし、外出先では透明の口元用フェイスガードを使ったりしていた。スパコンにより、口元だけのフェイスガードはあまり意味を成さないとツッコミが入ったが。

ドラマの撮影にも困難がつきまとった。ドラマも「密」と戦わなければならなかったからだ。
出演者・スタッフの新型コロナ感染によって撮影所ごと制作にブレーキのかかった作品もある。そういう作品は穴埋めに過去回を放送したりもした。

乗り物の「密」の対策も問題だった。
普段の通勤電車の混み具合はやはり感染の恐怖を煽る存在だった。そのため、この時にテレワークを導入する企業も多かった。下手な働き方改革よりこっちの方がテレワークへの動機付けとして協力だった。

航空機は意外と換気ペースの早い乗り物で、前を向いて座っていればさほど心配はないことを、各社は早いうちから主張していた。でも航空会社の場合、観光需要そのものがなくなり、減便や返金により入ったダメージが大きかっただろう。 


皆、経済活動をしなければ喰っていけない。
一度ブレーキのかかった経済活動は、あの手この手で巻き返す方法が考案されていくことになった。

飲食店のように座席のある店舗では、座席の間隔が大きく空けられたり、透明のアクリル板を立てて隣と隔てられるのも普通になった。コンビニでレジに透明のカーテンをかける店があったが、店員・客間でお互いの声が聞き取りにくくなるのでかなり不便だった。

映画館は換気の実証実験から「あまり喋る空間でもないし、この換気スピードなら問題なし」と再開した。ただ営業できない時期に被った映画は公開が延びてしまった。

コンサートを開けなかった歌手達は、ネット配信に活躍の場を求めた。
それまではネット配信のシステムは必ずしも良いものではなかったが(どちらかといえばYouTuberやキャス主等のDJ型配信が主)音楽配信の環境はこの時期に向上していたと思う。
結果、「コンサートや舞台のオーラスはネット配信あり」のような柔軟な運用がされるようにもなった。

音楽業界で一番苦労したのはライブハウスだろう。なんせ「密」前提に作られたハコを運営しているのだ。
業界団体と国でガイドラインをつくった話がSNSにも流れてきていたが、見極めに苦労していた様子が窺えた。

とにかくどんな仕事でも、「人」を軸にした業界では皆それぞれの「見極め」を強いられていたと思う。

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