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勝者のメンタリティ - メルカリ会長/鹿島アントラーズ社長 小泉さんから学ぶ強いチーム作り

ようやく緊急事態宣言も解除されましたね。
とは言え自粛解除と言うわけではないので第二波を気をつけつつ、個人的にも徐々に経済活動は戻していければなぁ、と考えております。

先日、noteでも紹介しましたが緊急事態宣言の間に支援先の起業家とすでに大きな事業&組織を作り、率いている先輩起業家&経営者をカジュアルに繋いで、“斜めの関係”をつくることを目的とした「Founders Drinks」を開催しておりました。
第1回のVOYAGE創業者宇佐美進典さんに引き続き、第2回はメルカリ会長/鹿島アントラーズ社長の小泉文明さんをお招きして開催しました。

小泉さん

成長する企業に共通する経営チームとは?

小泉さんは、証券会社時代にIPO引き受けの部門にいて、その後mixiのCFOを務められた後、プロニート時代にはアカツキ、ラクスルと言った急成長スタートアップの代表格だった企業で社外取締役/監査役などを務めた後に、メルカリが10人くらいのタイミングで参画し経営者として活躍をされております。

■小泉文明さんのご経歴
1980年生まれ。山梨県出身。早稲田大学商学部卒。
2003年、大和証券SMBC株式会社(現 大和証券株式会社)入社。
投資銀行本部にて主にインターネット企業の株式 上場(IPO)を担当し、ミクシィやDeNAなど数多くのIPOを実現させる。
2007年、株式会社ミクシィ入社。社長室長、経営管理本部長を歴任し、 2008年取締役(取締役執行役員CFO)に就任。コーポレート部門全体を統括しつつ、mixiのプラットフォーム化に合わせてベンチャー投資を実施、投資先のコミュニティファクトリー社は2012年Yahoo! Japanに買収される。2012年、同社取締役を退任。フリーランスとして数社の取締役、監査役などの経営サポートを実施。
13年12月メルカリに参画。14年3月取締役就任、17年4月取締役社長兼COO就任。19年9月に取締役President (会長)へ。
現在、鹿島アントラーズの経営に注力。

証券会社時代、ご自身が経営者として、また様々な急成長企業の社外取締役/監査役を経験されている小泉さんに急成長する企業の経営チームの共通点などについてお伺いしました。

ナンバー2や3が優秀な会社。
トップだけで上場できる会社もあるが、その後の伸びはナンバー2,3の存在による。トップに必要なのは素直さ。ナンバー2や3に強烈な人材が入ってきたときに素直にラーニングできるか。素直さと強さのバランスが重要だと感じている。
ナンバー2,3の採用は、経営者としての投資・責務。
シード期では、COO兼CFOみたいな、オペレーションを回せる人が本当に肝。採用がうまい会社ほど要件定義・JDがうまい。下手な会社はファジーで伝わってこない。いい採用(要件定義)をするにはまず経営者が自分自身と向き合わなければいけない。

ミッション・バリューの重要性

メルカリはミッションとバリューを初期から大切にしている会社と言うイメージが強いが、ミッション・バリューはどのタイミングからスタートアップは持つべきか?
何故、ミッション・バリューが大切なのか?を質問してみました。

ミッションは、一人でも作った方がいいと思ってる。
何のための組織か?はあるべき。いずれは変えてもいいが、その時々、ミッションは絶対にある。ないと、一本の軸が通らない。
またミッション・バリューがあっても浸透していないと意味がない。
強烈に成長しているスタートアップだと、ミッション・バリューはなくても成長することはよくあることだったりします。
強いプロダクトを芯に経営は可能である。しかしプロダクトの勢いが落ちてきてしまうと、それまで一枚岩だと思っていたチームの価値観のズレなどが出てきてしまうことがある。
なのでミッションとバリューを大事にしている。
またミッションを達成するためのバリューであることが重要。
つまり、経営者、経営チームのバリューではない。企業にも人格がある。
バリューが社長の価値観みたいな会社もあるが、それではダメ。

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上記はメルカリのミッションとバリューである。
上述の通り「ミッションを達成するためのバリューであることが重要」と言うことだが実際にどのように考え、バリューを抽出したのか?を聞いてみた。

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自分たちのビジネスゴールと特徴を整理し、その課題解決をするためのバリュー設計の思想でバリューを決めて行ったとのこと。

また個人的に、とても大切なことだなと心に残った言葉として小泉さんはこのように話されました。

今の時代、社長と従業員は主従関係ではなくパートナーの関係だと思う。
ハートの部分、ミッションを通じた社会性などのメッセージで、その人が人生を賭ける価値のある場(会社)であるか、どうか。
そう言う会社を創るのも経営者の大事な仕事。

ミッション・バリューを浸透させる仕組み

続いてミッション・バリューを浸透させる際に意識していたこととして

「宗教」を参照した。
経典を唱えるなど。言い続ける、目に見えるなど。
昭和的にやるとブラックっぽいから、明るくやりたいと思った。
飲み会で社員がバリューで遊び出したときに、浸透しているなと思った。
テクニックとしては、難しい言葉でないこと、多過ぎないこと。
また人事制度や施策のネーミング(わかりやすさ)にはとにかくこだわった

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人事制度・施策への落とし込みの際に意識していたポイントとしては、

バリューに基づくこと。
バリューがないと、経営者、経営チームの個人的な価値観じゃないの?と思われてしまう。反対に、バリューに基づかないことはすべきでない。
わかりづらいと当事者意識がなくなっていき、エンゲージメントが下がっていく。
人事って失敗したくないせいか、企画に時間を使いすぎたり、やめなかったりする。流行らないことはどんどんやめてサイクルを回すべき。

なので意識しているポイントしては
「HR施策をウェブサービスを作るように運用していく」

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スタートアップ立ち上げ初期の採用の肝

メルカリと言えば今ではリファラル採用、採用広報が強いイメージがあるが、スタートアップ立ち上げ初期の経営者にも参考となる要素がないか?を小泉さんとの会話の中で迫って行きました。

創業時は、経営陣によるリファラルが全て。

リファラルはメンバー経由の採用と思われがちだが、まずは経営陣のコミットが一番大事。
採用は、経営陣がコミットしないと絶対にうまくいかない。

また個人的には、上場企業などでのマネジメント経験者などがSNSで「辞める」投稿が15:00-15:30(マーケットが閉まるタイミング)にあるため、その時間のスケジュールを空けておきSNSを見ていた。
退職ポストがあったら最初にごはんに誘う。
そこに変なプライドがあったりすると、うまくいかない。

このように採用にコミットしていた。

その他にも

クォーターごとに採用のアタックリストを作っていた。
理想の組織図と、口説く人のリスト。

ただ、常に採用活動にフルスロットルなわけじゃなく、大きなニュースやプレスリリースを出すときなど、そのタイミングにすべて集約させる。
いわゆるPRと絡めた採用ボーナスタイムを上手く活用していた。

小泉さん自身が経営者として自身と向き合う為に意識していること

社員みんなの前で話すこと。
逆に、メディアの前だと逃げやすい(記者の方が引き出してくれちゃう)。

社員の前で話すことが、今でも一番プレッシャーを感じて緊張する。
メンバー500人くらいまでは全員参加する全社会議をやっていた。
そこで、山田さんと僕が前で話す。メンバーからめちゃくちゃ質問が来る。1,000本ノックみたいな。本気で経営のことを考えていないと答えられない。社員に試されていると感じるとすごいプレッシャー。

経営チームとして意識していることは?

トップが必ずしも何でもかんでもやる必要はない。
基本的に苦手なことはやらせない方がいい。得意な人がやった方がいい。

つまり経営陣は強み・弱みの補完関係を持つことが大事。
ビジョンは同じ、山の登り方が複数あるチームの方が強い。

鹿島アントラーズの経営者としてのチャレンジ

現在は、鹿島アントラーズ社長も務めているが実際に経営に携わり始めて見えて来たこと、チャレンジしたいことなどを聞いてみました。

アントラーズは元々、「すべては勝利のために」という脈々と受け継がれるDNA、ミッションが存在している。

社長に就任した当初、社内サーベイをしたところ、メルカリと比較しても、前提として全メンバーがミッションを言え、強く共感し、浸透している状態だった。

僕たちが入って、ミッションはそのままにして、バリューを新設して、評価制度をつくったり、Slackも入れたりして風通し良く、スピード感を持って組織が動くカタチに変えて行っている。

メンバーが主体的に「もっとやりたい!」「社会の役に立ちたい!」と思っている。

今までは意思決定プロセスが少しややこしいモノがあったかもしれない。
アントラーズは今、それを解き放っているところ。

これから、更にどんどん新しいことが仕掛けられるクラブに変貌している最中だと思う。

私自身も生粋のアントラーズファンとして「すべては勝利のために」に強く共感している一人だったりします。

また昔、サッカードイツ代表のレジェンドでもあり皇帝でもあったベッケンバウアー「強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いのだ」と言っていたが、アントラーズは常勝軍団と言われてきて、常に勝利が求められてきたと思う。良い選手を揃えられているチームが必ずしも勝つわけではなく、揃えられてもその状態は永続しないという前提で、常勝を継続する方法は?

「勝利から逆算する」ということ。
他のチームが念頭に置くふわっとした「勝つ」ではなく、具体的に「勝つ」を意識する。
準備を怠らない。アントラーズは、勝たないとまじでやばい、という文化がある。

小泉さんはこれはアントラーズに限った話ではなくスタートアップの経営においても「勝利から逆算する」ことの重要性に触れていた。

メルカリでも、2014年初期に資金調達を前提にしたテレビCMやCS拠点の設置など、かなり前倒しで仕掛けた感があるが、すべては勝つことからの逆算していた。仕掛けるのは恐怖。それをどう乗り越えるか、モチベーションに変えられるか。

1-2月デジタルマーケティングにめちゃくちゃお金を使っていた。3月には現金がなくなるんじゃないかというくらいに。
しっかりと数字を積み上げ、投資家には毎日のようにKPI進捗を報告していた。

結果としてグローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、GMOベンチャーパートナーズ等からの14.5億の資金調達が決まった。

この資金調達によってテレビCMを行い、一気にグロースして行った。

小泉さんは、鹿島アントラーズの経営者として「すべては勝利のために」に全力でコミットされていると思いますが、経営者個人としてのチャレンジなどもお伺いできますか?

アントラーズでは、チームの強化だけでなくスマートシティ・街づくりという大きな目標を目指している。

スポーツ起点に色々な取り組みを仕掛けて行きたい。
例えば試合の日の渋滞解消の為にトラフィックデータを活用したり。
キャッシュレスや顔認証などもスタジアム体験から始めたり。
スタジアムをラボみたいに活用しPDCAを地域と連携しながら街づくりしていくイメージ。

今作りたいプラットフォームは「街」。
鹿島アントラーズを起点に一人一人が住みやすい街づくりをしたい。

テクノロジーのよさは、個人のエンパワーメントができるところ。
ミクシィは個人の情報発信のエンパワーメント、メルカリは売買を介したエンパワーメント。
次は、街づくり。個人の生活全体のエンパワーメント。

強いチームとは?

アントラーズの話しから一度離れて、小泉さんが考える強いチームとは?を最後にお伺いしました。

ミッションに共感して実行できるチーム。
常にミッションに立ち返るように意識している。
それに向かえるチームが一番強い。
そこがなければ、一緒にやる意味がない。

また小泉さんからスタートアップ起業家への心強いエールも頂きました。

「答えはみんな(スタートアップのチーム)の中にある」

VCとか、外部の人は答えを持っていない。

人の問題などはめんどくさくて後回しにしてしまったり、意図と違うことをしてしまいがち。そうなると問題が複雑化してしまう。

組織のことは本当に、これきっと大丈夫だろうな、ということは大丈夫じゃない。これヤバいなと思ったことは本当にヤバい。
そこから目をそらさずに向き合うこと。

そう経験を通じて「強いチーム」が作れるんだと思う。

多岐に渡るお話を聞くことができ、濃厚過ぎるほど濃厚な2時間でした。
今後も支援先の起業家と共に学び、成長する場を企画していきます。

Founders Drinks第1回の内容はコチラからお読み頂けます。

またこれから起業する方や、アーリーステージの資金調達を検討される方はDMなどで気軽にお問い合わせください!

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