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アメリカのミュージカル俳優の組合(AEA)に入会するべき?? メリットとデメリットを徹底紹介

アメリカのミュージカル俳優の組合(AEA)に入会するべき?? メリットとデメリットを徹底紹介

Actors' Equity Association (AEA) は、アメリカでプロの舞台俳優として活動するために不可欠な組合です。AEAに加入することで、俳優としてのキャリアを守り、発展させるためのサポートを受けることができます。しかし、加入には多くのステップがあり、非組合員として挑む際のリスクや課題も伴います。ここでは、AEA加入後のメリットとデメリット、キャリア展開、そして非組合員としてのオーディション参加の現実について詳しく説明します。

1. AEA加入後のメリットとデメリット



AEAに加入すると、多くのメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。

メリット


1 健康保険と年金制度
AEAに加入すると、一定の仕事量を達成した俳優は、健康保険や年金制度の資格を得ることができます。アメリカでは個人でこれらの福利厚生を手に入れるのは難しいため、組合を通じて保障されるのは大きな利点です。

2  契約保証
AEAに加入していることで、賃金や労働時間、休暇などの契約条件がしっかりと守られます。法律で保護されている契約により、不当な労働条件や賃金で働かされるリスクを軽減できます。

3  トレーニングとキャリア支援
AEAは定期的にワークショップやトレーニングセッションを開催しており、これらに参加することで俳優としてのスキルを向上させ、ネットワーキングの機会も得られます。

4  組合員向けのディスカウント
AEAメンバーは、ホテル、劇場のチケット、交通機関などで特別なディスカウントを受けられるため、舞台生活を送る上での負担を軽減できます。

デメリット


1  非AEAの仕事が制限される
AEAに加入すると、AEA認定外の仕事に参加することが制限されます。地方の小規模劇団や自主制作のプロジェクトに参加したい場合、これが難しくなることがあります。
事実、私は非組合の全国ツアーのアンサンブルおよび主役の代役のコールバックに選ばれる機会がありましたが、残念ながらその機会を辞退せざるを得ませんでした。

2  競争が激化する
AEAメンバーとしての仕事にアクセスできる一方で、他のプロフェッショナル俳優との競争が非常に激しくなります。特にブロードウェイや大規模なプロダクションでは、オーディションの競争率が高くなります。

3  ディスカウントの範囲が限定的
組合員向けのディスカウントは、主にニューヨークやAEAオフィスがある大都市圏で利用できるものであり、地方に住んでいる俳優はこれらのメリットを活かしにくいのが現状です。

4  入会金が高い
現在、AEA(Actors’ Equity Association)の入会金は1,800ドルです。この金額は、加入後3年間のうちに支払う必要がありますが、加入時には600ドルの頭金を支払うことが求められます。残りの金額は、AEA契約に基づいた収入から分割で支払うことができます
この入会金は俳優にとって大きな出費となるため、加入時の経済的負担は無視できないデメリットの一つです。

2. AEA加入後のキャリア展開


AEAに加入した後は、組合のネットワークやサポートを最大限に活用することが大切です。次に、加入後のキャリア展開の方法を紹介します。

1  AEAイベントへの参加

AEAは定期的にワークショップやオーディションイベントを開催しており、キャスティングディレクターやエージェントと直接つながる機会があります。これらのイベントに参加することで、業界内でのネットワーキングを強化し、次の仕事につなげることが可能です。

2  地域ツアーやオフブロードウェイの活用


AEAに加入すると、ブロードウェイだけでなく、オフブロードウェイや地域ツアーでの仕事も可能となります。これらのプロダクションは、さまざまな観客にアピールする場として非常に有効で、長期間のツアー公演などを通じて安定したキャリアを形成することができます。

3. AEAに入るための小規模劇団やツアー公演の利用方法


AEAに加入するために、ブロードウェイのような大規模なプロダクションに出演する必要はありません。小規模な劇団やツアー公演でもAEA加入の道を切り開くことが可能です。

小規模劇団でのキャリアスタート

地方にある小規模劇団や地域の劇団でもAEA契約が適用されている場合があり、これらのプロダクションに出演することでAEAポイントを積み重ねることができます。小規模劇団は、競争が比較的少なく、キャリアの初期段階で経験を積む場として非常に有効です。

私自身もこの方法で有給の仕事を得ることができ、AEAのOpen Access制度を通じて加入しました。具体的にどのようにプロの道に進み、AEAに加入するためのステップを踏んだかについては、前回の記事をご参照ください。

ツアー公演でのキャリア構築

地域ツアーや全米ツアーの公演も、AEA契約が適用される場合があります。これらのプロダクションに参加することで、地方に住んでいる俳優もAEAポイントを稼ぎ、短期間でAEA加入資格を得ることが可能です。


4. 非組合員でもAEAのオーディションを受けることは可能か?


結論は可能です。
しかし非組合員がAEAのオーディションに参加するには制約とリスクがあります。

非組合員のオーディション参加の仕組み


非組合員がAEAオーディションに参加するためには、早めに会場に行き、予約リストにサインアップする必要があります。しかし、AEAメンバーが優先されるため、遅れて来た組合員がいればそちらが優先され、非組合員はオーディションを受けられない可能性があります。つまり、実際にオーディションを受けられるかどうかはその日の状況次第です。

都市部在住のメリット


ニューヨークやロサンゼルスのような大都市では、毎日複数のオーディションが開催されており、非組合員でも挑戦できるチャンスが多いです。しかし、地方に住んでいる俳優にとって、オーディションのために都市に移動することは高い旅費や滞在費がかかり、リスキーな挑戦となることがあります。オーディションを受けられない可能性もあるため、コストとリスクをよく考えた上での判断が必要です。


結論


AEAへの加入は、プロのミュージカル俳優としてのキャリアを発展させるために重要ですが、加入後には多くのメリットとデメリットがあります。非組合員としてオーディションに参加する際のリスクを理解しつつ、小規模劇団や地域ツアーを利用することで、AEA加入への道を開くことも可能です。

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