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1階のベランダで下着を干したら盗まれた話。

※下着を盗難された話を書いています。不安・不快に思われる方は読まないでください。でも、下着を盗まれて、被害届を出したことを詳しく書いているので、参考になる人もいるかも知れません。参考になる人が出ないことがいちばんだけど。

あ、下着泥棒って本当にいるんだ……

最近オートロック付きのマンションに引っ越して、1階ではあるものの角部屋だし築年数もそこそこで、形や広さ、設備も自分の中で納得のできる部屋に住んでいたのだけど、引っ越して3ヶ月でごっそり盗まれてしまった、下着を。

ゴールデンウィーク半ばで、晴れていたし洗濯物を干して、取り込むのを忘れたまま飲みに行き「電車もないし友達の家に泊まっちゃえ」をして次の日の午前に帰宅したら、他の洗濯物はそのままだったのに下着だけごっそりなくなっていたのである。その日はまとめて3セット(計6枚)の下着を干していたのだけど、全部なくなっていて唖然としてしまった。ちょっとだけ笑える話としては、私が持っていたブラジャーには、胸のところに取り外しできるパッドが入っていたので、ブラジャーの隣で乾かしていたのだけど、パッドには手つかずだったこと。物干しハンガーでパッドだけ悲しくはためいていた。(速攻で捨てた。パットだけあっても意味ないわ。)

いまでこそ、飲み会で笑い話として話せるくらいには昇華したけれど、盗まれたのを発見した瞬間はパッドが残っていたこと以外に笑えることがなくて、「え?警察に電話?」「110でいいのか……?」「警察官怖くないかな……」「いや、やっぱり友達に相談してからのほうがいいか……?」のような感じで思考が爆発していた。まじで。

やっと決意がかたまって(10分くらいうだうだしてた)意を決して110したところ「事件ですか、事故ですか」の声。「え、事件……かな……? 下着を盗まれました」めちゃくちゃ間抜けな返しをしてしまった。その後はめちゃスムーズで、警察官が家に来てくれるとのこと。住所を伝えて待機すること15分。インターホンが鳴らされて、ちょっとドキドキしながらドアを開けると、3人の警察官が。女性2名と男性1名の3人体制で、なんとなく1人とかで来るのかと思っていたのでびっくり。わたしなんかの下着が盗まれた件で3人も稼働してくれてすみませんの気持ち。

まず状況を説明して(何時頃に盗まれたのか? 何時頃に見つけたのか? どんなふうに干していたのか?など)その後、被害届を出すか出さないか聞かれる。被害届を出さずに、パトロールの強化をお願いすることも出来るらしい。そうこうしているうちに刑事さん(ドラマの中にしかいないと思ってた)も到着。某交番漫画のモジャモジャ系の髪型で、おしゃれだな〜などと思った。

「被害届は出されますか」

「被害届は出されますか?」と聞かれて、「出すデメリットはありますか?」と聞いた間抜けはわたしです。無意識に仕事の何かが染み付いてたのかな。物事をメリデメで考える大人にはなりたくないよな……。

「メリット、デメリットとかではなくて、出す場合はこの後被害届を作成するので、少しお時間をいただきます」「盗んだ人が捕まった場合は深夜でもきてもらう必要がある」などいろいろコメントをいただく。被害届と無縁の世界でのほほんと生きてきたので、めちゃくちゃ重い決断を迫られている気分になった。結局出すことにして(99.9%は下着泥棒捕まえるぞの意気込み、0.1%は被害届を出す、という体験への興味)手続きを進めてもらう。

その後、鑑識(?)ぽい人たちも到着。外で指紋を採っている様子。わたしはわたしで被害届に記載する情報をあれこれヒアリングされている。盗まれた下着の購入価格、ブランド、色、サイズ(女性の警察官の方に「気持ち悪いこと聞いてすみません……」とめちゃくちゃ恐縮しながら聞かれた。むしろすみません。)を答えるまではいいとして、次いで時価を聞かれた。時価だと……??????? ようは盗まれたものがどれくらい価値があるものだったかということを書かないといけないらしい。はてなマークいっぱいで止まっていると「例えばメルカリで服を売るときって買ったときの価格とか、使用年数とか加味して値段を決めると思うんですけど、そういう基準で考えてもらえればと!」とアドバイスをいただくが余計わからなくなる。下着を……メルカリに売るだと……?!?!?! (結局すべて1年以上着用していたので500円に設定した。)刑事さんの「宝石とかだったらわかりやすいんですけどね」の一言がやけに響いたーー。

私は外で下着を干したかった

時価の欄からはもう早くて、最終確認などしてサインして、あとは外の指紋採集が終わればいいのか……など一息ついていると、家主の指紋を除外するために、わたしも指紋採集をする必要があるという。拇印くらいかなと思っていたら、結果的に手のひらから指先、側面まで、インクで真っ黒になった。例えるなら、保育園でつくった手形アート。

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Image by rawpixel.com

さっきまで下着泥棒への感情は「まったくもう、生活必需品盗みやがって、やれやれ」くらいだったのに怒りに変わっていた。なんで盗んだやつはのうのうと生きていて、わたしは手のひらを(側面まで!)真っ黒にさせているんだろうか? せめてもの救いだったのは女性の警察官(23歳)が「下着泥棒なんて本当に気持ち悪いですね!」とわたし以上に怒ってくれていたこと。パフォーマンスだったとしても一緒に怒ってくれる人がいるのって救われるよね。

ただ、それと同時に「女の子は外に下着は干さないほうがいいね」「女の子は2階以上に住んだほうがいいね」と言われたこと、決して責めるような言い方ではなかったけど、なんとなく敗北感を抱いた。「自衛のために」必要なことであるという忠告というか定説はめちゃくちゃ理解できる。でもわたしは部屋干しに若干の疑惑を抱いているので、外でパリッと干したい派だし、1階の方が家賃が安いし、足音を立ててしまうタイプなので1階に住むのが好き。誰に迷惑をかけているわけでもないのに(今回は結果的に警察の方のお時間を頂いているので迷惑をかけているわけだけど)なぜ、身体的に女性というだけで、いろんなことに注意せねばならんのだ……! の気持ちが拭えない。今回は下着泥棒だったけど、性的被害に合われた方に対しての「遅い時間に出歩いていたから」「短いスカートを履いていたから」というクソフレーズ(クソフレーズでしかないのでクソフレーズと呼ばせていただく)と地続きの話なんだよね。

被害者に対して「自衛していなかったからこんな目にあったんだ」と攻めるクソ事案は(当たり前の話だけど)男女関係なく起こりうる話で、被害者が自分を責めなければいけないことほど辛いことってあるだろうか。この世の中、いろんな価値観で生きているひとがいるので、常人には理解し難い理由のもと、犯罪を起こしてしまう人がいるのはわかる。自衛することで防げる犯罪があるのもわかる。日頃から「悲しいが積極的に自衛していこう!」というのもわかる。でも自衛してなかったから悪いわけではない。

後日談

警察官に怒られるかも知れないけど、もう一度下着を外に干しっぱなしにして、下着泥棒を生け捕りにしてやろうとすら思った。さすがにできなかったけど。男性の友人からは(男物の服を干しておくと防犯に効く的な定説のもと)「男物の服を貸そうか」という言葉をもらうなどした。ここでも身体的な女性性の弱さを感じてちょっとしんどくなってしまった。

あの日、わたしの家に来てくれた警察官は8人弱(部屋には入らずにベランダや周辺の調査などを担当されていた方も含む)。そのほとんどが近くの駅前の交番から来た方ばかりだったので、毎朝駅前を通るたび、なんとなく気が引き締まる。

結局の所、わたしは下着を外に干し続けている。あの日と同じように、表からは見えないようにタオルで隠しながら。ひとつだけ変わったことは、早めに取り込むようにしたこと、干しっぱなしにすると紫外線で衣類が変色・変質しやすくなるらしいから。決して自衛のためだけじゃない。

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