野球肘を前腕・手からみる
C-I Baseball育成メンバーの新海貴史です。
前々回、前回はそれぞれ投球障害予防のチェックポイント「肩関節」、「肘関節」について説明させていただきました。
今回は投球障害肘に対する前腕・手関節・手指(以下、前腕以遠)の機能評価とアプローチについて解説していきたいと思います。前腕という部位の関係上、肘関節に重なってくる部分もありますが、最後までお読みいただければ幸いです。
現場や臨床では主に患部となりやすい肩関節や肘関節をターゲットとしてアプローチすることが多いと思います。しかし、投球動作は全身動作であり、下肢で生み出したパワーを体幹→上肢へと連動させていく運動になります。全身の各関節がそれぞれしっかりと機能することが重要です。
■野球選手の前腕以遠を診る意義
前腕回内外運動に伴い、腕尺関節、腕橈関節、近位橈尺関節、遠位橈尺関節で関節運動が生じます。この様に多くの関節が関わる前腕運動が破綻することによって、肘関節周囲へのメカニカルストレスが増大します。
また投球時における肘外反ストレスに対する動的制動機能として前腕回内屈筋群の機能が重要であることは多くの研究や文献でも報告されています。
パフォーマンスの観点から見ると、手関節の機能は投球動作のphaseの中でも主にボールリリース前後で重要になってくると考えます。
先行研究においても以下のように述べられています。
ボールに伝えられるエネルギーの大部分は手関節の関節力パワーに起因し、そのほとんどは体幹や肩関節の運動によって生み出されたエネルギーが関節や筋・腱を介して転移することによってもたらされることから、手関節や手指がボールリリースにおけるエネルギー伝達に重要な役割を果たしている。
宮西 智久,藤井 範久,他:野球の投球動作における体幹および投球腕の力学的エネルギーフローに関する3次元解析.体力科学.1997; 46(1):55-68.
以上の理由から野球選手において肩肘のみでなく前腕以遠の機能に介入する意義があると考えます。以下、10項目に分けて詳細を説明させていただきます。
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