日本でも、スタートアップの資金調達として浸透してきた、コンバーティブル・エクイティ/ノート(ボンド)。
むしろ、日本におけるシード期のスタートアップの資金調達手法としては、一般名称的な「コンバーティブル・エクイティ」(株式=エクイティに転換できる証券)よりも、Coral Capitalさんがひな形を提示している、日本法の下で新株予約権の方式により設計された「J-KISS」という名称の方が浸透しているかもしれません。
(経済産業省はコンバーティブル・エクイティ/ノート(ボンド)をまとめて「コンバーティブル投資手段」と呼んで、その活用を促進するためのガイドラインを出しています。)
本Noteでは、基礎的な部分は省略しますので、コンバーティブル・エクイティ/ノートについての基礎については、先駆者であるStartup Innovatorsの記事をご参照。
また、手前味噌で恐縮ですが、コンバーティブル・エクイティ/ノートについて、Business Lawyersさんにて分析的に書かせていただいたQ&Aのまとめを、本Note末尾に貼っておきます。
1. インドにおけるコンバーティブル・ノート
The Economic Timesの記事
Google先生がアプリ上でサジェストしてくれた記事に、インドのThe Economic Timesのこんな記事があり、一瞬意味が分からず、頭をひねってしまいました。
Startups get up to 10 yrs for converting debt investment into equity
コンバーティブル・ノートの転換期限、すなわち「投資実行後、スタートアップがこの期間内に次回資金調達などのマイルストーンを達成できなかった場合には、負債を返済しないといけない期限」は、契約ないしその証券の発行要項で決めるべきはずのもの(=投資家とスタートアップとの交渉)であって、転換期限について、「政府が決める」ということがあるのだろうかと。
記事を見てもよくわからなかったので、インドのDPIIT(The Department for Promotion of Industry and Internal Trade、JETROの訳では「商工省産業国内取引促進局」)の原文に当たってみました。
インドの外資規制におけるコンバーティブル・ノートに関する改正
そうしますと、どうも、FDI(Foreign Direct Investment) Policy、日本で言うところの外為法で定められる、外資規制を緩和する一環のお話のようでした。
すなわち、DPIITのFDI Policyでは、現在、コンバーティブル・ノートが次のように定義されており、転換期限の上限が5年のものとなっています。これを、上限10年に延ばすスタートアップアップフレンドリーな改正がなされた、というのが今回の記事が言わんとしていることでした。
【旧条文】
これが、インドDPIITの3/14付Press Noteにおいて、5年→10年に改正された旨が示されています。
インドの外資規制におけるコンバーティブル・ノートの発行の制限
では、そもそも、「コンバーティブル・ノート」というものを、インドの外資規制がどのように取り扱っているかというと、以下のように、「非インド居住者に対しては、インドのスタートアップがコンバーティブル・ノートを発行するためには、一定の条件に従わなければならない」としています(ちなみに、上記のとおり、せっかく2.1.9条で「Convertible Note」として大文字で定義しているのに、どうもすべて小文字で、定義語がつかわれていません)。
日本ではこのような規制はありません(一般的な外為法の規制はあるものの、コンバーティブル・エクイティ/ノート特有の規制というものは無く、それぞれ株式・新株予約権・新株予約権付社債の法形式に従った取り扱いを受ける)ので、興味深い規制です。
また、debt性を有しない、コンバーティブル・エクイティというような証券については、このFDI Policyではすぐには言及が見当たりませんでしたので、そもそもインドでそのようなdebt性を有しないコンバーティブル・エクイティという仕組みが存在するのかどうか、存在するとして外国投資家に対して発行することが可能なのかどうか、というところはもう少し確認しなければいけないところです(都度アップデートします)。
いずれにしても、インドやその他の外資規制を重視するemerging companyのスタートアップに投資をされようとしている方々にとっては、各国の規制について慎重に確認をした上で出資を検討する必要がある、という一つの表れとして興味深かったため、紹介させていただきました。
2. 日本におけるコンバーティブル・エクイティ/ノートに関する拙記事のまとめ
Business Lawyersさんに寄稿させていただいた、日本におけるコンバーティブル・エクイティ/ノートの基礎・活用に関する記事は、こちら。
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