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料理における塩について考えてみた

※「最強塩なし料理理論(松嶋 啓介)」を読んでみてベースにした考察です
※ 私の理解・解釈によるまとめです、正確な内容は著書をご覧ください

塩は身体にストレスを与えるから過剰摂取はよくない

・傷口に塩が触れると痛い
  →塩分濃度が高いと胃や内臓に負担が掛かる

・塩分濃度に応じて浸透圧が高くなる
  →血中の塩分濃度が高くなり、水分が血液に流れ込む
  →血液量が増えて血圧が高くなり、むくみの原因になる

実態として、日本人はどのくらい塩を摂取しているのか?

厚生労働省の食塩摂取基準 vs 実際の摂取量
 男性:1日8.0g未満 に対して、10.9g
 女性:1日7.0g未満 に対して、9.2g

さらに高血圧の予防・治療では1日6.0g未満、さらにWHOの推奨は5.0g未満なので、明らかに塩分過多であることは間違いない

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書
同友会グループ「食塩摂取量気にしていますか?」

ちなみに、主な食品の塩分量はこんな感じ(すべて公式発表値)
 マクドナルドのハンバーガー:1.9g
 日清のカップヌードル:5.2g
 大塚食品のボンカレーゴールド(中辛):2.5g
 ローソンのからあげクン・レギュラー:1.6g
 日本製粉のオーマイ・ミートソース:2.4g

外食の定食・ラーメン・うどん・そばには大体一食4〜6gの塩分が含まれているため、スープや味噌汁を飲みきると1発アウトに近い状態

身体によくないのに、何で過剰摂取してしまうのか?

・海で誕生し進化した生物はナトリウムを生命維持の仕組みに取り入れた
  →心臓、脳、神経細胞はナトリウムを介した電気信号で活動している

・陸上に進出した生物にとって、ナトリウムの確保は生存上非常に重要
 だったため、超高感度の塩センサーを持つように進化した
  →舌にある味蕾の数は魚の約200個に対して、人間は1万個以上

・農耕による穀物野菜中心の生活がナトリウム不足を生み、製塩が始まった
  →腎臓が野菜に多く含まれるカリウム排出を優先し、
   ナトリウムの吸収効率が悪くなったためより多くの塩が必要になった

・塩を摂取することで美味しいと感じる味覚センサーが作られた
  →甘みやうま味は塩を同時摂取することでより強く感じる

現代人は「塩中毒」!? 人間が塩のとりこになる驚きの理由

ここまでで分かったこと

・塩を摂り過ぎていいことはない(取らなすぎもダメ)
・一方で人は生命維持に必要な塩を求めるメカニズムになっている
・食という文化的進化が生物的進化を圧倒的に上回っているため、
 メカニズムでは制御ができず自制するしかないのが減塩が進まない理由
・だから塩が少なくても美味い、むしろ塩が少ない方が美味いってことを
 脳と身体が記憶しないと塩の摂取を抑えた食事を継続することはできない

じゃあ、塩を抑えた美味しい料理ってどう作るの?

1. 食べ物の持つ「うま味」を最大限利用する
2. 低温で素材自体の味を引き出す
3. スパイス・薬味を上手に取り入れる

そもそもうま味とは何か?

・「うま味」は五味の1つ(塩味、甘味、苦味、酸味)
・1908年に東京帝国大学の池田菊苗博士が発見し命名
・1985年開催の第一回うま味国際シンポジウムにてUMAMIが世界用語に
・人が感じるうま味物質は、タンパク質を構成する20種のアミノ酸のうち、
 「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」「コハク酸」が主
・このうち数種を組み合わせると相乗効果でうま味を強く感じる
 (鍋の最後の汁が美味しいのは、このアミノ酸が複合凝縮しているから)

1. グルタミン酸
植物性タンパク質
・海藻類(昆布、ワカメ)野菜(トマト、白菜)発酵食品(醤油、味噌)
 フレッシュきのこに多く含まれる
・神経伝達物質の1つで、身体中の多くの器官で生成・消費される

体内で重要な働きをする「グルタミン酸

2. イノシン酸
動物性タンパク質
・青魚(鯵、鯖、鰯)、鮪や鰹(乾燥熟成により増量)、牛肉<鶏肉<豚肉
 に多く含まれる

3. グアニル酸
乾燥キノコ類
・干しシイタケ、乾燥ポルチーニなどに多く含まれる

4. コハク酸
貝類
・あさり、しじみ、牡蠣、ムール貝などに多く含まれる

うま味を組み合わせて、風味を豊かにする

実際、多くの地域でこの組み合わせが煮込みやソースのベースになっている

和出汁 = 昆布(グルタミン酸) × カツオ節(イノシン酸)
精進出汁 = 昆布(グルタミン酸) × 干し椎茸(グアニル酸)
洋出汁 = 香味野菜(グルタミン酸) × 鶏ガラ・牛スネ(イノシン酸)
中華出汁 = 鶏ガラ・金華ハム(イノシン酸) × 干し貝柱(コハク酸)

まだ全然解明できてないけど、いったんのまとめ

・塩を過剰摂取しているのは間違いない
・人は本能的に塩を求めてしまうので減塩は難しい(美味しいと感じない)
・減塩するには別の美味しさを構築する必要がある
・①そのベースとなるのが「うま味」であり、その補助となるのが
 ②素材自体の味を引き出す低温調理(野菜を高温で塩茹でするのでは
  なく、60°で40分塩なしで火を通してうま味を引き出すなど)
 ③スパイス・薬味で風味・香味を豊かにする

塩なし、少塩料理の論理・方程式については実践しながらUpしていきます

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