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赤いクッキー缶

赤いクッキー缶がきっかけとなった

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明確な理由はない、
けれど乗るべき流れというものがある。

1月4日(水)、地元から札幌へと戻る際に両親がぼくを空港へと送ってくれた。

新千歳空港行きの便が45分遅れていたこともあり、海鮮料理のお店で牡蠣定食を食べながら両親とあれやこれやと話していた。

飛行機に乗るため荷物の整理をしていると、荷物の中に埋もれていた赤いクッキー缶を見た母とこんな話になった。

母 「そのクッキーふたつ、だれに渡すの?」
ぼく「だれって、そりゃBossと女性トレーナーだよ。」
母 「Bossにわたす必要あるの?いつも反応もないんでしょ。それよりもいつもお世話になっているIさんにわたした方がいいんじゃない?」
ぼく「…うーん、それもそうだね。」

それから母はBossからのケアはあるのかとか、給料はどうなのかなどを聞いてきた。

ぼくが答えたことは彼女が思っているよりもずっとネガティブだったようで、驚いていた。

母 「月に数回の外食すらできない、遊びに行くこともない、将来への貯金をする余裕もない、北海道らしいことをしているわけでもない。それならもう帰ってきたらいいじゃない。」

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明確な理由はない、
けれど乗るべき流れというものがある。

その赤いクッキー缶を見つけたのはたまたまだった。

名古屋高島屋の地下の35店もある洋菓子ブランドの中で、
たまたま “maison du miel” というショップに目がとまったのだ。

調べてみたところ、maison du miel が高島屋へと出店したのは2022年9月とのことで、出店からまだ3ヶ月しか経っていなかった。

ぼくは高島屋地下に行くと毎回同じブランドでケーキを買う。
しかしその日は気分が違い、いつも行くブランドとは違うものを試してみたくなった。

その日、ただでさえ人口密度の濃い高島屋の地下のスイーツエリアは、年末というタイミングで人がごった返していた。

人をかき分けるようにして歩いていると、
シンプルなのに大変美しい、茶色の光沢を纏ったケーキがぼくの目にとまったのだ。
他のブランドのケーキを見に行かずに即決。

そのケーキを購入しようとすると、ショーケースの上に積まれたクッキー缶の存在に気づいた。
クッキー缶には朱色に近い色で描かれた、クマと女の子、そして猫 
それから maison du miel というブランド名。
あたたかくてかわいいデザイン。

ぼくは職場のふたりへの年始の挨拶のために2缶購入した。

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海鮮料理のお店にて

ぼく「…うん、そうする」
母 「来月辞めるのはあまりにも唐突だから、3月を最後にしたら?」
ぼく「うん、Bossに聞いてみる。」

父に地元へ帰ってくるよう提案された時も、札幌でひとり悩んでいた時も
(最短でも3年間は今の職場で修行させてもらうべきだ)
と、地元に帰る考えはなかった。

しかしこの母との会話ではためらうことなく辞めることを決めた。

それは母が、ぼくがこの半年間悶々と感じていたことを代弁してくれたからだと今では思う。
彼女はぼくの心の中のことをあっという間に見透かしていた。

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これからどうなるのかはわからない。
世間の大半の人が行うであろう、
”転職先を見つけておいて、それから退職手続きをする” 
ということも行っていない。

なんせ、空港にいたあの2時間で決まったことなのだから。

休日に患者さん相手にピラティスをさせてもらうとか
父から足について学ばせてもらったり、テーピングについて教わったりしたいなぁ
とは考えている。

平日の仕事はどうしようかな。
もちろん健康に関した仕事で、ぼくが今まで関心を寄せたことのない分野の仕事につけるのが理想だけれど。

それか、今後は絶対にすることのない仕事につくのも経験値を上げるという意味ではいいのかなぁ。



イラストについて
赤いクッキー缶の中身、7種類のクッキー。
いざ描くとなると、ひとつのお菓子にこれだけたくさんの色が詰まっているのかと驚いた。お気に入りは上段右側の色合い、そして下段右隅の光沢感。
『7種類のクッキー』

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