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小林秀雄という人

世の中には、「知の巨人」と呼ばれる人がいる。先日お亡くなりになった立花隆さんが「知の巨人」として記憶に新しいが、多くの著作を遺した小林秀雄もかつては「知の巨人」と呼ばれていた。

私も自分の書棚をあらためて眺めると、「考えるヒント・シリーズ」が2冊、「本居宣長 上・下」、小林秀雄講演CDが見つかった。「考えるヒント」は読みやすいが、書かれている内容は深い含蓄があって新たな気づきが得られ、おすすめの一冊。

先日、小林秀雄の妹(高見澤潤子さん)の「兄・小林秀雄から学んだこと」(『一日一話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』より)を読んで、小林秀雄の考えに共感したので、原文のまま、ご紹介したい。

『子どもの頃から兄・小林秀雄は、私には尊敬すべき存在だった。

        中略

「学者はknowledgeだけあって、wisdomがないから駄目だ」と言ったことがある。(knowledgeは学問・知識、wisdomは物事をよく判断し、よく処理する心の働き・賢さというもの、生きていく知恵)

兄は理論よりも行動を重視した。何かせずにはいられないという気持ちは、愛情とか尊敬からおこるものである。

頭で考えているだけでは、そういう気持ちにはなかなかなれない。愛情をもって対象物を本当に理解できなければ、実行することはできない。

知ることは行うことだ、兄は言っていたし、

「実行という行為には、いつでも理論より豊かな何かが含まれている。現実を重んじる人というよりは、現実性を敬う心がある」というようなことも言っていた。

私たちはあまりにも観念的になり、抽象的になり理論的になっている。理屈ばかり言って、実行しない者は多い。現実を大切にしないからである。実行することは難しいことなのだが、具体的にものを言うよりも、抽象的に言った方が深みがあるように思っているからである。しかし目の前に現れている現実、具体のほうが大事なのである』

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