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読書レビュー『木野塚探偵事務所だ』

はじめに

こんにちは、Takaです。
今回紹介する一冊は、樋口有介の『木野塚探偵事務所だ』です。
樋口有介と言えば、以前〈柚木草平〉シリーズの『うしろから歩いてくる微笑』を紹介しました。今回紹介する〈木野塚佐平〉シリーズもハードボイルドは入っていますが、少しテイストを変えたハードボイルドが楽しめます。

概要

タイトル|木野塚探偵事務所だ
作者  |樋口有介
出版社 |東京創元社
発売日 |2008/3/14

感想

この作品は、警視庁で37年間勤め上げた木野塚氏が、定年後に探偵事務所を開設し、美人秘書と共に難事件に挑むことを期待する、愛すべき老人探偵の物語です。一言で言うと、コメディ・ハードボイルド作品です。

ちなみに警視庁37年間は経理課一筋であり、警官ですらありません(警視庁職員と言うらしいです)。また事務所に飾った「警視総監賞」の賞状も、そもそも警察官以外が授与される感謝状であったり、ところどころ見栄を張る、おちゃめな老人です。

第一話では事件すら起きず、「美人秘書を雇う」ことに奔走するような、ハードボイルドからは程遠い物語ですね。また第二話以降も「金魚誘拐事件」や「犬の尾行」など、少し間の抜けた事件を取り扱います。正統派のハードボイルド作品である〈柚木草平〉シリーズとは、大きく異なりますね。

この作品の面白いところは、ハードボイルドに憧れて、頑張って探偵を演じる木野塚氏の行動にあります。酒もタバコも経験ないのに、引き出しにはバーボンを忍ばせる。事件の依頼には張り切って挑むが、料金設定を忘れてドギマギする。などなど、物語上の探偵しか知らない老人を、綺麗に表現されています。
しかし、なんだかんだ事件は解決するし、最後の事件はそれなりの終着点が用意されているので、一応ハードボイルド・ミステリー作品と呼べなくもないです。それでもやっぱりコメディ・ハードボイルド作品というのがしっくりきますね。

ちなみに本作品は映像化もされています。主演は志村けんということで、やっぱりコメディ作品なんでしょうね。

おわりに

今回は『木野塚探偵事務所だ』を紹介しました。
やっぱり私は本格ミステリーより、こういった読み物として楽しい小説を好む傾向があります。一風変わったミステリーに興味を持った方には、是非楽しんでいただきたい作品です。


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