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【ベンチャー企業研究#2】WeWork Companies Inc.

※本記事は2019年10月20日時点の情報をもとに作成しております。

最近、何かと話題となっているソフトバンクが出資しているWeWorkについて今さら感はありますが、調べてみました。

参考にしたWeWorkの目論見書は以下にあります。
(非常に難解で膨大な文書だったので、私の解釈が誤っているところがあるかもしれませんがもし気がついた方は教えてください…)
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1533523/000119312519220499/d781982ds1.htm#toc781982_10

WeWorkはIPOをするにあたり、組織構造をUp-C Structure(Umbrella Partnership C corporation structure)という構造を採用したため、以下のようになっています。

Up-C structureとは、IPOする際に組織全体の株式売買を管理させることを目的とした有限会社やリミテッド・パートナーシップ(L.P.)という有限責任組織を設ける組織構造のことです。

詳しく知りたい方は以下のリンクを参照ください。
https://frv.kpmg.us/content/dam/frv/en/pdfs/2018/executive-view-up-c-structures.pdf

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正直、かなり複雑な組織であるため、正確にそれぞれの役割を理解することは難しいのですが、各会社の役割を簡単に説明します。

・The We Company
WeWorkグループの持ち株会社。野村ホールディングスや三菱UFJフィナンシャルグループなどと同様に株式を保有・管理するために存在する会社であり、特定の事業は持ちません。

・The We Company MC LLC
IPO実施にあたり設けられた有限会社。組織内の株式交換をする際に仲介するための会社。将来的にWeWorkがレンタルオフィスなどのSpace as a Serviceとは全く異なる事業を実施した際に、それらの事業会社と現在の事業会社間での株式交換を管理する会社。

・中間子会社(複数)
これらの会社については、全く情報がないため正直よくわかりません。あくまでも私の推測になりますが、節税を目的としたペーパーカンパニーである可能性などが考えられます。

・WeWork Company Partnership
WeWorkの主事業を構成する組織を管理するための有限責任会社。一部のリーダーシップメンバーとその関連会社が利益の一部を取得する。

・WeWork Companies LLC
 現在のWeWork事業をコントロールしている中核の会社。一般的にWeWorkといった場合はこの会社のことを指す場合が多い。

・自社事業(アジア以外)
アメリカ・カナダ・ラテンアメリカ・ヨーロッパ・中東・アフリカ・オーストラリアの事業を運営している組織。完全にWeWorkのみで事業が運営されている。

・合弁事業(アジア)
中国・太平洋・日本・インドの事業を運営している組織。各地域のベンチャー企業などと合弁で事業を運営している。

・ARK(不動産買取・管理会社)
世界中のWeWorkで利用する不動産の購入や管理を行っている組織。


■企業情報(2019年10月現在)

社名    :WeWork Companies Inc.
創業    :2010年2月
本社所在地 :アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
経営者   :Artie Minson, Sebastian Gunningham
従業員数  :15,000人(現在レイオフ推進中) 
関連会社  :WeWork Japan など

■決算情報(2019年6月末時点)

〔損益計算書(P/L)〕

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・売上高    :15.3億ドル(約1700億円) ※2018年は約2000億円
・損失(税引前):     9億ドル(約 980億円) ※2018年は約2100億円

〔貸借対照表(B/S)〕

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・資産 :270億ドル(約2.9兆円)
・負債 :246億ドル(約2.7兆円)

WeWorkは不動産を平均15年のリース契約にて取得し、それをコワーキングスペースとしてユーザに貸し出しているため、資産と負債のほとんどはリース物件のものと思われます。

また、以下の記載の通り、今後支払わなければいけないリース費用が472億ドル(約5.1兆円)あり、原則リース契約は途中解約ができないため想定外に利用者が少なかったり利用者が定着しなければかなりの赤字になる可能性があります。

〔目論見書 P26〕
our future undiscounted minimum lease cost payment obligations under signed operating and finance leases was $47.2 billion as of June 30, 2019
(私たちが将来支払わなければならない最低限のリース費用は2019年6月30日現在で$472億ドルです。)

■主な事業

(1)WeWork
シェアオフィス、コワーキングスペースを提供するWeWorkの根幹事業。月額$45〜$400以上と幅広い価格帯を設けており、個人事業主やスタートアップ企業のオフィス、大企業のサテライトオフィスとしてなど様々な用途で利用されている。

(2)WeGrow
起業家精神を育むための小学校を運営する事業。WeWork創業者のアダム・ニューマンの妻であるレベッカがCEOを務めている。通常の小学校の授業だけでなく、ヨガ、農業、ビジネス、テクノロジーなどの授業も設けられている。
https://wegrow.com

(3)WeLive
共同生活型デザインのアパート運営事業。家具・家電などが備え付きでクリーニングやインターネットなどの設備も整ったホテルのようなシェアハウスをサブスクリプションモデルで貸し出す事業。月額料金に賃貸料や家具・家電を含むアメニティ料金が含まれているため、引越しに関わる煩わしい手続きは基本的に不要となる。
https://www.welive.com

(4)Rise by We
フィットネスジムの運営事業。WeWorkの利用者とそうでない人をつなげるコミュニティとなると述べられているが、他の一般的なフィットネスジム同様のサービスを展開していると思われます。
https://www.risebywe.com/about/

■評価・所感

注目度   :★★★★☆
経営の健全性:★☆☆☆☆
事業の将来性:★★☆☆☆
総合評価  :★★☆☆☆

やはりリアルな不動産を自分たちで管理するビジネスモデルだと、どれだけ収益があってもかなりのリスクがあるビジネスであることには変わりませんね。

現在は大手企業の大口契約などもあるため、楽観的に見れば安定的な家賃収入を得ているということになりますが、実際にはコストカット施策や不景気によって契約が解除されたり、日本の働き方改革によって都心の一等地で働く必要が無くなったりした場合に需要が急激に減少するリスクがあります。
Airbnbのように在庫を持たないビジネスにできればよかったんですけど、We Workのコンセプト上、それも難しいのかもしれませんね。

今回のIPO騒ぎで創業者のアダム・ニューマンによる会社の私物化や独自の計算ロジックによる企業価値の水増しなどWeWorkの本当の姿が浮き彫りになったことで、彼らの経営体制やビジネスモデルを再構築する必要が出てきました。

今までの評価が過大評価だったとしても、これだけ大きなお金を動かせて優秀な人材も多く抱えている会社であることは事実なので、今後ソフトバンクなどの出資者たちとどのように経営を立て直していくのかが非常に気になりますね。

また、現在は単なるコワーキングスペースの提供というほとんど不動産業サービスであり、正直将来性がないビジネスモデルだと感じていますが、不動産はまだまだアナログなところも多いので、彼らが言っているような本当の意味での不動産×ITのサービスと明確に言えるような事業を形にできればまだまだ可能性はあると思っています。

私自身、何度か東京にあるWeWorkや他のコワーキングスペースを利用したことがありますが、WeWorkが特別素晴らしいオフィスだという感じはしませんでした。もちろん、水やコーヒーが無料であったり、カフェスペースがあり他の社員から少し離れてくつろげたりと良い点はいくつもありますが、高い利用料を払ってWeWorkにする必要はないですね。

私が感じたWeWorkだけのメリットは、広くて外国人とたくさん出会えるところですね。広いぶん人も多いので開放的な空間とまではいきませんが、みんなから離れてリラックスするくらいはできますね。
また、WeWorkはとにかく外国人利用者が多いので、ある程度コミュ力があれば気軽に外国人の知り合いが作れてしまうところがいいですね。

ただ、やっぱりこのレベルの魅力だけでは誰でも真似できてしまいますし、競争に勝ち残れないと思うので今後のサービスでWeWorkにしか提供できない唯一無二の魅了を作って欲しいですね。

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