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同人誌完成記念~役立ち施設一覧~

↑2008年8月末頃友人S撮影 炊事場、夏休みだからこれでも片付いてる

 これまで、熊野寮と周辺の歴史をまとめた記事を紙の本「熊野寮と鴨東地域の交わり~熊野寮五十周年記念誌発刊十周年~」として世に出す。この同人誌を書くため利用させていただいた、様々なシステムや設備利用に関する知見を書き残す。

印刷所

 印刷は、2014年発刊の熊野寮五十周年記念誌と同じ印刷所に依頼した。STARBOOKS(明光社)という会社で、同人誌のノウハウがある。やり取りも丁寧迅速で、私のような素人にもわかりやすく説明してくれた。大変お世話になりました。

国立国会図書館(デジタルコレクション)

 ちょうど、NHKの番組で裏側が紹介される番組が放送される。 国立国会図書館 - ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪 - NHK
 国会図書館デジタルライブラリで無料公開されている資料は、本登録さえすれば自宅のPCから見れる。本登録は免許証画像などあれば自宅からできるので簡単だ。待ち時間も数日だった。
 デジタルコレクションは調査で一番の支えになった。とくに、三高八十年回顧はじめ、大正時代の資料が多かった。著作権切れか、当時はみんな記録熱心だったのか理由はわからない。ただ、80年以上前の学生への共感もしくは驚愕は検索するほど深まっていった。
 また、戦前の公務員の人事情報はすべて官報に記載されており、お名前から異動情報を追うことができる。遠いご親戚のお名前を検索してみても面白いぞ。
 余談だが、短歌など歌集の世界はめったに重版されないうえに書籍が貴重なので、現代の歌人たちは国会図書館をよく利用しているらしい。

国立国会図書館(即日複写)

 デジタルコレクションは自宅から閲覧できるものの、一部資料は国会図書館でしか閲覧できない。館内の端末から複写を依頼し、印刷した紙を持ち帰る方法が主流らしい。端末内で必要なページをpdf化する際、コントラストや色味も調整出来た。わかりやすくて優秀なシステムだったが、近年導入されたらしく、お年寄りが職員さんに質問するシーンも散見された。残念ながら館内の複写ではpdfを直接入手できないが、コンビニなどで紙をスキャンすればデジタル化できる。

国立国会図書館(新聞紙)

 国立図書館は各地方紙も収蔵されている。たとえば、京都新聞はある年代以前はマイクロフィルムを、より後は縮刷版の形で保存されていた。朝日や読売など大手はデジタル化され、端末での検索が可能だが、地方紙はまだまだアナログで保管されている。検索のコツも書かれているので、まず何しようかと思ったら公式サイトをみよう。
 マイクロフィルム閲覧台はデジタルとアナログの二種類があり、全者の方が早く記事を見れる。使い方は職員さんが丁寧に教えてくれた。デジタルはロールの座標移動手法が電動なだけで、曰く操作性は悪そうだった。私はアナログで閲覧し、気になる記事をメモして複写依頼した。
 これが結構大変で、閲覧台でフィルムを回してひたすら目で追うしかない。朝刊夕刊および各地方版もまとめて一枚のロールに記録されているので、慣れないうちは「さっきこの記事見た気がするぞ?」と思いながらカラカラ回すことになる。効率化のため、一日当たりの記事構成を最初にじっくり確認することをお勧めする。
 縮刷版は「記事見出し一覧」という索引集もあるため、検索性はある。例えば、教育の項目内で大学ごとに分類されており、京大関係の縮刷版記事ページが年ごとにわかる。
 紙の新聞は、速報性に関してはネットニュースに適わないが、保存性は高いメディアだと感じる。それに、多くの人の目に触れるのである程度の客観性がある(と信じてる)。お宝記事はたくさん眠っているはずなので、みんなも国会図書館へ行こう。ただ、関西館はやや辺鄙な場所なのが難点だ。

KURENAI紅

 京都大学学術情報リポジトリのことだ。登録も必要なく、様々な文献が無料で見れる。例えば、実はサークルでなくれっきとした会社である京都大学新聞、60年代の学生運動で大学側の意見を表明するために作られた京大広報、公式な記念誌である京都大学百年史や京大から出た博士論文が納められている。とくに、京都大学新聞は2008年頃からネット記事が充実しており、吉田寮百年物語は素晴らしい。昔の記事には、広告やコラムに若い頃の浅田彰や森毅が載ってたりして、つい横道にそれてしまう楽しさもある。なぜか、京都大学七十年史は国会図書館にしかなかったが、学生課の学生に寄り添った記述から当時の空気感が伝わった。
 また、京都大学百二十五周年事業の一つにかっこいいサイトも作られているのだが、不思議とあまり活用しなかった。歴史が最近だからかな?感覚なのだが、サイトの端々に「役立つ人になって社会で活躍しよう!」というきらびやかな圧がある。各個人が己の信じる道に向かって頑張る分にはいいけど、どんなに頑張ってない人でも気兼ねなく同窓会に来れるような学校のほうが好きだけどなあ。

京都府立図書館

 直接の訪問はしなかったが、上記のような検索の代行サービスがある。しかも無料である。図書サービス部情報サービス課がリファレンスサービスを行っており、「いつ頃のどのメディアのこういった記事を見つけたい」とメールなどで相談すれば、1~2週間程度でご回答いただける。つまり、上記のようにマイクロフィルムをカラカラ回してくれたり、縮刷版をパラパラめくって人力で探してもらえるのだ。もちろん、相談内容はより具体的であるほど見つけてくれやすい。府立図書館だけでなく全国の図書館に似たサービスがあり、過去に誰かが似たことを調査していないかというリファレンス協同データベースなるものも存在する。
 お目当ての記事が見つかっても見つからなくても、人力でご検索頂いた職員さんには丁寧にお礼をしよう。

日文研

 京都市西京区にある国際日本文化研究センターのことである。京大桂キャンパスのすぐ西側にある。京都の古地図や昔の書籍が無料公開されており、登録も必要ないので大変役に立った。しかしネット経由で見れない資料も多く、今回は立ち寄れなかったがいつか行ってみたい。ちなみに、京大学生課担当でもあった河合隼雄が二代目所長だ。今回は利用しなかったが、日文研にも遠隔複写サービスが存在する。
 同様に、宮内庁書陵部所蔵資料目録・画像公開システムも写真が公開されており、参考になるものがあった。

国土地理院

 地図・空中写真閲覧サービスは昔の航空写真も閲覧できる。特に、戦後からは多くの地域で航空写真が見られる。UIに慣れるまでやや時間が必要だが、年代ごとに同じ場所の航空写真を比較することで、変遷を追えるので便利だ。文献から建物の建築年と大まかな場所を確認し、近い年代の航空写真を見つけるという手法が有効だ。ただし、古い年代の住所は区分自体が現在と変わっている可能性に注意だ。例えば、京都市左京区と現在呼ばれている地域は、一時期まで上京区だった。そういった区分の変遷を追うには、歴史的行政区域データセットというサービスも有効だ。

京大大学文書館

 大学文書館は左京区にある。文書館はあくまで保管が主業務なので、図書館とは異なる。というのも、閲覧制限付きの資料が多く、複写送付が可能な資料は限られる。手続きはネットで完結出来るが、名前住所を明記する必要がある。よって、直接訪問して文献を確認し、必要な部分のみの複写依頼が一番いい。訪問には5開館日前以上前からの予約が必要だ。
 逆に言うと、個人情報など機微な情報でも、変な業者に簡単に見られないようしっかり保管されているといえる。なので、サークル誌や記念誌など、創作された紙の資料を寄贈し、保管を依頼するのも良い使い方だと思う。学生さんはぜひ有効活用してみて欲しい。
 余談だが、私が在学中は就活イベントなど学外との行事に使っていた京大会館も併設されいる。
 大学文書館には、大昔の大学構内の写真や、有名教授の若い頃の近影が保存されている。とくに、写真に関してはネットでも登録無しで見られる。また、保管資料は多岐にわたり、著者不明のビラやパンフなどもあるので、検索するだけでも当時の雰囲気が伝わる。例えば、今西錦司の素敵な笑顔が確認出来るぞ。

そのほか

 色々な資料に助けられた。生協の冊子「らいふすてーじ」のバックナンバーは2005年から追える尾池元総長はブログに各メディアやメルマガで発信された記事を記載されている。建築学科教授だった西村一郎さんは生前、宇治寮での思い出をブログに記載されていた。他にも、個人で直接現場を探索し、お写真や記事を残されているブログは本当に役立った。日國工業二条新地光華寮旧制三高、それぞれ著者の思いが伝わって来た。改めてお礼申し上げます。
 80年代ビラアーカイブは引用させていただいた量こそ少ないが、その志が凄い。膨大なビラの電子化という大変な苦労を有志がなされている。
 各種SNS、つまりX(旧Twitter)やFacebookやmixiにも、古い時代のものをつぶやかれている方々がいらして参考になった。そもそも、mixiに至っては私の高校および大学在学時からある。最近の子から「mixi! 実在していたのか……。」なんて感想を頂くくらい時代モノだが、過疎SNSにもアーカイブ的な役割を発見できたのは今回収穫だった。当時のくだらないやりとりこそ、後年から見ると不思議と価値を感じるのだ。noteやはてなブログといった種々の雑記も、何か具体的な形として残っていってほしい。なので、多少恥ずかしくなっても、若い頃の文章は消さずに遺すのだぞ。一周して、笑顔で受け入れられる時が来る。
 話がずれるが、山形浩生はネットのコミュニティが長期間維持されると、利用者が亡くなるにつれ墓標のように使われだすだろうと、著作『新教養主義宣言』で90年代から予言されていた。実際、それに近い運動がときおり生じている。こうした過去の蓄積は、突発的な悪意や嫉妬や捻れた正義心からでなく、落ち着いて長い目で俯瞰できる立場から発展的に利用されるといいなと思う。

ISDN

 ISBNではなくISDNである。前者は出版社が書籍の裏にバーコードとして記載している、書籍流通管理用の通し番号だ。ISBNがあると一般の書店でも取り扱えるらしい。ただし、発行に数千円かかる上に、色々な情報を公開する必要がある。そこまではちょっと、という方には同人誌発行向けのサービスであるISDNがおすすめだ。ISBN同様に、書籍ごとの情報を割り付けれる。発行は無料だ。今回は表紙の入稿に間に合わなかったので、後で印刷したシールを裏表紙に張り付ける作戦で行く。イベント当日の作業になってしまうが、誰も来なくて暇を持て余すくらいなら単純作業していたい。

反省点

 せっかくの機会だったので、下記をもっと勉強しておけばよかったなと感じた。

  • 印刷知識
     RBGからCMYKへの変換で挫折しそうになった。これは、モニタなど自ら発光するメディアと、印刷された紙という表現手法に違いがあるため必要な処理だ(詳しくは「いとしの印刷ボーイズ」参照)。多分、相当初歩の技だ。カラー表紙を除く本文はK(黒)100%に変換したかったが、Acrobat Pro を使っても上手くいかず、97%で妥協した。なので、よ~く見るとフォントの色味が真っ黒よりほんの少しグレーがかっているはずだ。おそらく、フォントの埋め込みがうまくいっておらず、ほとんどのページの文字が画像として処理されてしまったのが原因だ。

  • 編集技術
     時間節約のため、noteの記事をpdf化してそのまま印刷した。これは暴挙に近い。本当は、noteの機能を用いてxmlファイルをエクスポートし、さらに自らの手で編集すれば、組版など自由度が上がった。図のサイズ変更や余白の調整などが行えればページ数を減らせ、コスト削減につながる。事前にCSSやhtmlの勉強をしておくとより良かった。いくつかの画像は物凄く荒くなってしまった。印刷はこれからなのだが、他にも変な感じになってないことを祈る。

  • 番号割振
     ISDN(もしくはISBN)の割り付けは、表紙印刷前に行えたらシール印刷の費用と貼り付けの手間がなくせるのでより良い。ただ、タイトルだけでなくページ数や製本の情報を紐付けられるので、出来たら先にこうした項目を決定してから記事を書き進めよう。

  • 直接取材
     文献資料も素晴らしいのだが、もっと生の声を集められたら、より生き生きした描写を増やせられた。熊野寮五十周年記念誌からの引用で補ったつもりだが、やはり自身と寮生、さらにご近所の方の声を集めて共有出来たらより良かった。本の作成目的の一つである、地域社会との融和がより強調できたろう。なにより、開寮60周年にもなると、残念ながら鬼籍に入られる関係者の方々もいらっしゃる。皆様がご存命なうちに声を集めないと、貴重なお話を聞くチャンスが失われてしまう。

  • 明確なメッセージ
     良かった点として、書いたり調べているうちに、コンセプトが固まっていく感覚は楽しかった。短期間でババっと書けた理由は多分、まえがきあとがきに素直に吐き出せたと思う。

  • 読みやすさ
     まえがきに記載すべきだったのは、前半がシャワー、中盤が寮と周辺、後半が各寮それぞれの経緯を書いたことだ。今考えたら、ずっと身内に向けたシャワーの歴史を読まされてもご近所の方々はしんどいよね。他にも色々考慮出来てない部分はたくさんあると思う。読み手側に立つには、やはり下書き時点で誰かに感想を貰うのが大事だろう。

まとめ

 調査において役に立った、もしくは役に立たなかったけど面白かった、さまざまなツールや施設をまとめた。お金をかければ発見につながるかというとそうでもない。書き手が伝えたいことの方が大事な気がする。ただ、様々な手法による人類の英知の蓄積を知れただけでも、いい勉強になった。しかも、かなりの範囲が無料であることに感銘を覚えた。掲載料をぼってる権威的な学術論文雑誌もぜひ見習ってほしいのだ。

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