![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/99171325/rectangle_large_type_2_ff0ec03d2fc855947b44f7068a26648a.jpeg?width=800)
神々のおわす熊野 つぼ湯
足を入れると、熱い!こわごわ体を沈めるが、
とてつもなく熱い。
うめ湯をいれ、どっぷり浸かった。
これぞ、熊野古道の名湯ひとり占め。
![](https://assets.st-note.com/img/1679798722991-7NvvbW5bwQ.jpg?width=800)
1800年まえに発見された日本最古の湯の峰温泉は、
交通不便のせいか、ひなびたたたずまいを残している。
2004年、湯の峰の「つぼ湯」が、混浴の共同浴場として
世界でただひとつ、世界遺産に登録された。
この湯を浴びるのが、旅の目的のひとつ。
ただ、このところ、順番待ちが長く入れぬこともあるとか。
「今、開いている」、番台へ電話してくれた宿のご主人のひと声で、
夕暮れのなか、すっ飛んでいった。
番台で番号札をもらい、やや離れた河原にある
掘っ立て小屋みたいな木戸に突入した。
つるつるの石段をそろりと下りると、
ふたりも入れば満杯で自然石をくりぬいた湯つぼがあるだけ。
かけ湯で身をきよめ、世界遺産の湯にひたった。
まるい川石を敷いた底から90度をこえる源泉がわき出ている
お湯の色は白っぽい青、一日に7回も色が変わるという。
裸電球ひとつがぶら下がるうす暗いなか、体がじんじんと温まる。
うーん、これって、しあわせ。
![](https://assets.st-note.com/img/1679798973518-nrLoHbXEqM.jpg?width=800)
平安のころから熊野詣の湯ごり場で知られ、
湯の峰で身をきよめ巡礼は、熊野本宮大社へむかった。
ちなみに、「くま」とは「神々のおわす奥まった地」を
意味する秘境の地であった。
後鳥羽上皇の熊野御幸にお供した歌人の藤原定家。
殿上人だが二流貴族・左近衛権少将の定家は
板敷もない土間の仮屋をはね起きて、
夜が明けぬうちに先発し上皇一行の食事、儀式の段どり、
宿の手配などに駆けずりまわった。
![](https://assets.st-note.com/img/1680554742344-r0ftrmV2h9.jpg?width=800)
『明月記』に「いまだ一事も書けず」とぐちっている。
定家は、つぼ湯でその日一日の疲れをいやしたか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?