![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/101272092/rectangle_large_type_2_a0043940dbe4ed190501d9f13d68165f.jpeg?width=800)
遠く異郷の街 コトル
足もとにボールが転がってきた。
顔をあげると3、4歳の坊やがにこにこ笑っている。
カフェの椅子から立ちあがり、サッカーボールを蹴りかえした。
モンテネグロがほこる世界遺産の街コトル。
クロアチアのドブロブニクから
陸路バスで国境をこえモンテネグロに入ると、道はがたがた。
アドリア海をのぞむ断崖のガードレールは、赤錆がうかび心もとない。
2時間ほどで海沿いの小さな街コトルに着いた。
城壁にかこまれた旧市街に足をふみいれると、
中世の裏街に迷いこんだかのよう。
![](https://assets.st-note.com/img/1681523433286-hq16TJRg93.jpg?width=800)
広場のカフェでエスプレッソをすすり、
首が痛くなるほどそっくり返ると、
糸杉と夕陽に映えた浅黒い岩山がそそり立っている。
モンテネグロとは、「黒い山」を意味するのだ。
紀元前1世紀
ローマ帝国のころ築いた城壁が山の中腹から上へつらなる。
銃眼も見える。
この城塞にこもり海賊やオスマン・トルコ軍と戦い、
自治を守りぬいてきた。
12世紀に創建されたロマネスクの聖トリプン大聖堂は、
カトリックの壁画・聖母被昇天と
ビザンチンのイコンが同居している。
ここコトルは東西ローマ帝国の境界線上にあり、
二つの文化が混じりあう場であった。
![](https://assets.st-note.com/img/1681523456968-mhoglZrN16.jpg?width=800)
広場裏の路地は曲りくねっている。
ジャパン!と声をかけてきた学校がえりの男の子たち。
にこっと笑って人なつこい。
こちらもヤーヤーと応える。
カフェで井戸端会議のお母さんもにこにこ顔だ。
2006年
独立を問う国民投票により新しい国モンテネグロが生まれた。
ユーゴ解体の苦難をのりこえ、
人口66万、福島県ほどの広さの小さな国だ。
通りすがりの旅人は、たった一日でこの国に惚れてしまった。
いつの日にか山上の城塞からコトル湾の絶景を楽しみたい。
ちなみに、映画「007カジノ・ロワイヤル」でジェームス・ボンドが
敵役とポーカーの大勝負をしたのがモンテネグロのカジノであった。
![](https://assets.st-note.com/img/1681628130577-czZPDK1O4m.jpg?width=800)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?