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プラハの若いふたり
古都の香りただよう
プラハのビヤホール
口あたりが良く且つ重たい本場もの
ピルスナーを
ごくごくと喉に流しこんだ
![](https://assets.st-note.com/img/1674851931093-YEH0zC2b1f.jpg?width=1200)
そこへ栗毛の若い女性が
声をかけてきて
「日本からいらっしゃった方ですか」
今の日本人が忘れたかのような
整った日本語、しかも美人で
聡明な雰囲気の持ち主だ
カレル大学哲学部で
日本学専攻の三年生、名はユリエ
日本人みたいな名前でしょ
と笑った
彼女は
なんと三島由紀夫の
ファンだという
『金閣寺』など二〜三冊
むかし読んだきりで
いまや三島文学は、忘却の彼方……
シンドイ談義であった
![](https://assets.st-note.com/img/1675056399190-pjKqTgFna6.jpg?width=1200)
別れ際に一人旅なので
ガイド役を頼むと
明日の午後いいわと
快い返事が返ってきた
翌日、ホテルのロビーに
約束どおり現れたユリエに
若い男がぴったり寄りそっている
今日一日、
知的で魅力的な女性と
一緒できると
勝手に思っていたが……
「私、アラムと申します」
これまた美しい日本語
しかも「アラム・レズネル 日本語通訳」
と書かれた名刺をさっと差し出した
彼もいたく感じが良い
![](https://assets.st-note.com/img/1674852082830-edeqPSnQSQ.jpg?width=1200)
アラム君の古アパートに
暖房が入ったのが一年まえとか
それでも
氷点下10℃にもなる冬
部屋は暖まらない
赤ワインのホットを飲んで
体を温めるそうだ
アラムとユリエは
恋人の間柄
寒い冬
抱きあえば温かいね
と冷やかしたら二人は……
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