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縄文のヴィーナス

半世紀ほどまえ、
ひとりの主婦がじゃがいも畑で鋤をいれると
ガチっと何かにあたった。
泥をとると人間のような目と鼻があらわれた。
腰をぬかすほどびっくり。
家族は、これ、土偶みたい、と。

函館郊外昆布の里で知られる南茅部
太平洋をのぞみ温暖で
豊かな自然にめぐまれている。
3500年まえ、縄文後期、
縄文人がマグロを獲り鹿を狩り、
栗の実をとって住んだ。

国宝・中空土偶 カックウ    函館市縄文文化交流センター                                          2021

いまは、その遺跡があちこちにある。
そのひとつから中空土偶が姿をあらわした。
発掘から重要文化財、
さらに北海道唯一の国宝となるまで30年あまり。
旧南茅部町の金庫にしまわれ、
「金庫」、「禁錮」30年との冗談も。
南茅部の「茅」と中空土偶の「空」をあわせて
「茅空、カックウ」と親しまれている。

いま、カックウは、函館市縄文文化交流センターで、
暗闇のなかで佇んでいる。
月の明りに見たてた照明で、
縄文人が見たであろう情景を再現している。
ここで、カックウは、自分が生きた満天の星空のもと、
月明りしかない縄文の時をおくっている。

カックウと対面しても、
男なのか、女なのか。よく分からない。
どちらかといえば、女。
全体のフォルムは優美。
やはり、縄文のヴィーナスか。



足形付土版                              子供の足形                                     2021


さらに、もうひとつの見どころは、「足形付土版」
幼くして亡くなった子どもをしのび
親が作った足形の粘土で、
形見に親とともに埋葬されたという。
子を思う親の気持ちはいつの世でも変わらない。

国宝・カックウは、洞爺湖湖畔で開催されたG8サミットに
お披露目され親善大使をつとめた。
また、大英博物館、スミソニアン博物館など各国を
いそがしく出張している。

2021(令和3)年7月、南茅部の遺跡群が、
世界文化遺産となった。
縄文のヴィーナスは、縄文文化発信の先頭にたっている。


大船遺跡      竪穴住居・復元                                                                                2021



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