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大沼だんご

大正のころ、
ひとりの俳人
陸蒸気(蒸気機関車)にのって
大沼公園にやって来た。

晴れわたった空、
のびやかな駒ヶ岳に心をうばわれ、
湖面にうかぶ島々と紅葉に感嘆。

さらに、口にしただんごの美味しさに
びっくり、
句を詠んだ。

「花のみか紅葉にもこのダンゴ哉」
明治から昭和の京の俳人、上田聴秋。

だんご二種            掛け紙―俳人・上田聴秋                                                    2021

1905(明治38)年、
大沼が道立公園(今は国定公園)となった。

陸蒸気にのっておとずれる観光客向けに、
大沼だんご🍡は駅ちかくで
茶店をいとなむ
初代・堀口亀吉があみだした。

この「沼の家」の元祖・大沼だんごは、
120年ちかくも親しまれ、
今は四代目・堀口慎哉も
昔ながらの製法を頑固に
守っている。

折箱は二つに仕切られ、
ひとつは大沼、
もうひとつは
小沼を表している。

大沼    一つ一つのだんごは、沼にうかぶ小島に 見立てられている       2021

この一口サイズのだんごは、
沼にうかぶ小島に見立てられ、

味は、あんとしょうゆ、
ごまとしょうゆの二種。

あんとしょうゆを楊枝にさし
交互に口にすると、
つるりとした滑らかな食感もあって、

柿の種のごとく止まらなくなる。
これぞ美味しい組み合わせ。

しかも、作り置きせずに
出来立てだけを売り、
賞味期限は当日かぎり。

五代目となる息子は、東京で修業中。
一世紀をこえようと、
時代が変わろうとも、

味が変わらぬ大沼だんごの伝統を
頑固一徹に守ってほしい。

大沼公園駅前  沼の家                          2021

大沼牛のビフテキを味わったあと、

駅そばの「沼の家」で、
ここでしか売っていない
大沼だんごを手に
幸せになり、家路につく。

初代・堀口亀吉のころの沼の家   今も場所は変わらず  明治~大正か    写真・堀口慎哉


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