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わび寂びライカ EU

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わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮っ…
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#プラハ

わび寂びライカ

わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。 出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮って、ピンボケだらけのネガの山を築いた。 アッシジの路地裏。あ、同じカメラを持っている! とお互い思わず駆けよった相手がドイツの女子学生であった。 ベテラン風情の彼女は、プロ風にニコンを「ナイコン」と発音して、ライカより良い「キャメラ」、と。 その後、イタリアの失敗写真から抜けだそうとF3のシャ

カフカの墓

晩秋のプラハ。 旧ユダヤ人ゲットーのあたりを歩きまわって フランツ・カフカの『変身』が浮かんだ。   若いセールスマンのザムザが、 朝、目覚めると毒虫に変わっている自分に 気づく不気味な小説。 「これが僕の高等学校、むこうの、 こっち側をむいた建物の中に僕の大学、 そのちょっと先の左側が僕の勤め先」と カフカは、小さな輪を二つ三つ描き 「この中に僕の一生が閉じこめられている」 と旧市街広場を見下ろしながら語っている。 結核のため世を去るが、 41年の生涯、 ほとんどプラ

プラハの若いふたり

古都の香りただよう プラハのビヤホール。 口あたりが良く且つ重たい本場もの ピルスナーを ごくごくと喉に流しこんだ。 そこへ栗毛の若い女性が 声をかけてきて 「日本からいらっしゃった方ですか」 今の日本人が忘れたかのような 整った日本語、しかも美人で 聡明な雰囲気の持ち主だ。 カレル大学哲学部で 日本学専攻の三年生、名はユリエ。 日本人みたいな名前でしょ と笑った。 彼女は、 なんと三島由紀夫の ファンだという。 『金閣寺』など二〜三冊、 むかし読んだきりで、