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【幸福感を上げるデザイン思考】アイデアの視覚化:喜ばれる4つのテンプレート

最近実践中のデザイン思考のワークショップでは独自の方法論に基づいた視覚化に力を入れており、ここ2ヵ月集中的に取り組んできた企業や大学とのWSでも大変好評でした。何故、好評だったのかを自己分析、整理していて参照したのがブレイク・スナイダーというアメリカの映画脚本家が纏めたハリウッド式の脚本術。これを読むとハリウッド映画はそのストーリーの構造上、凡そ10種類ほどのテンプレートに整理できるようです。例えば「バディとの友情」「難題に直面した平凡なヤツ」「バカの勝利」など、言われてみればどれも該当する映画がイメージでき「なるほど確かに~」と思ってしまいます。世界を相手に作られているハリウッド映画はどんな国の人にも受け入れられるストーリーが求められるためこのような視聴者心理を踏まえた論理的で合理的でシンプルなテンプレートに行き着いたようです。今日は私のワークショップで好意的に受け入れられている(Smileを増やしている⇒幸福感を上げている!)アイデア視覚化の要件をそんなハリウッドの安易なテンプレートを全く参考にすることなく(笑)4つに整理してみます。

①見易いアングルにアイデアを置きなおす

例えば現実離れしたブッ飛んだアイデアであったら、それを実現可能に見えるアングルに置き直してみる。最近実践したある大学でのWSでは日常の生活時間や動線、顕在/潜在ニーズに応じて建物自体が変形する住宅のアイデアがありました。極めて野心的で私が大好きな方向性のアイデアです。が、普通に考えてしまうと「不可能な理由」ばかりに目が行ってしまったり、考え付いた本人たちも具体的にどうするか?までは考察し切れていない場合も多い。こうした時は、ある程度現実的な解決(アングル)を探しながらそれが実現した時の風景をリアルに描いていきます。

まずは出来る限り構造を簡素にするため平屋の住宅を想定。基礎部分にレールを引いてスライド機構を入れ、一部の間取りには回転構造を実装して向きを変える。リビングがせり出しながら屋根を取り払い、バスルームは回転しながらリビングとジョイントして日当りの良いバス・リビングが完成する様子を簡易な3Dモデルで視覚化すれば、アイデアを創出した本人たちさえも驚かせ喜ばせる映像が実現します。あくまでアイデアのコアをkeepしながら最も現実感が感じられる解釈のアングルを提示することは多くの人を喜ばせるようです。

②リアルなディテールを追加する

またあるワークショップではスパイスや調味料、或いは食材そのものをポストイットのような「紙」にしてしまうアイデアが提案されました。食材に応じた美しいカラフルなエディブルペーパーで、ドラえもんの暗記パンのように書いた文章を記憶できる可能性など!先鋭的な示唆も含まれていて、野心的で未来的なアイデアです。これの場合は実現手段もありますが、これが利用される場面をどう想定するかに面白さがあるように思えました。

私からはスマートフォンでスパイスや食材を調合するアプリのUI画面の遷移からプリンターで出力され、調理に利用されるシーン全体を描くことを提案しました。スマフォアプリや出力のリアルなディテールを追加することで、抽象的だったアイデアが日常的な具体性を帯び、アイデアの現実味がググっとアップする。アイデアを創出した本人たちも自分のアイデアに確証を得ることで、結果、自分たちが身に付けたデザイン思考のノウハウに自信を持つことが出来るようになります。

③詩的に暈かし適切にリサイズする

また別のワークショップではなんと、ロケットやEVトラック、Hyperloop、ドローンやロボットを導員して現在のフードロジスティクスを地球規模で寡占化していくアイデアがありました。これは途方もなくダイナミックなスケールの提案です。ココまで大きなスケールの提案は巧く描かないと見る側の視界(ハリウッド映画が相手にするグローバル市場同様)に収まり切らず、アイデアの良い部分さえも受け入れられなくなってしまう場合もあります。視覚化する際に、どんな見る側の視野にも適切に収まるサイズと咀嚼し易いテイストに整えていく。

このアイデアの場合は、ある週末の朝、起きたばかりのカップルがディナー用に海外から現地の料理を注文するシーンを想定、現時点ではどうしても残る非現実性は一旦暈かしながらも、ロケットやHyperloop、EVトラックなどのデリバリーチェーンがダイナミックに連携して、ディナーの時間までに美味しい料理が届けられるシナリオをあくまでも詩的に描くことを提案しました。スケールが大き過ぎて本人たちでさえ視覚化が手に負えない場合にはリアリティと暈かしを巧く使い分けながら誰もが共感できるサイズにスケールダウンすると見違えるほどポジティブに受け入れやすくなります。

④謎めきとユーモアの余白

前述の詩的リサイズでも「暈かす」を入れていますが、リアリティ一辺倒で徹底的に描こうとするのは、この時点の粒度のアイデア視覚化では現実性に於ける論理破綻を招き返ってリアリティを損ねてしまいます。現時点では技術的、論理的に不可能だと突っ込まれそうな要素は敢えて巧く暈かすことで、夢を壊さず、寧ろ魅力的な謎めきとして映るようなプロトタイピングが有効と思います。17頭の羊を3人で1/2、1/3、1/9に分ける算数の寓話があります。「謎めかしておく」ことは、この寓話の中で言えば「最初に借りて置く1頭の羊」のようなものだと思います。「一旦ココは借り!」としておくこと自体が解決の一部だったりするなら、それもHow might we~(如何に実現するか)の一つの形です。

また視覚化を魅力的にするのに有効な要素の一つには、やはりクスっと笑えるユーモア。ロボットが如何に生活に役立つか?を映像化する際に、調理や介護など真面目な役立ちを列挙する中に一つだけ、ネコがルンバに乗ってぐるんぐるん回る映像を入れておくことをサジェスチョンしましたw。アイデアの視覚化は理解を促進するのみでなく、視聴覚体験によって感情を刺激することもできる。人間の叡智の頂点であるユーモアによって知的満足度が高く、好奇心を擽る提案力を向上させられるよう、これからも楽しいワークショップを実践していこうと思います!


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