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【自分の仕様を視覚化する】デザイン思考で上げる自己肯定感とリーダーシップ(前編)

日々実践しているワークショップを通じて、デザイン思考は広範囲の応用が可能であることを確信します。新たなサービスやビジネスのアイデア創出から企業ビジョン構築やブランディング、地域活性化や街づくり、環境問題など社会課題へのソリューションなど、その応用範囲は無限です。最近は人間そのものに目を向け、よりポジティブに生きる、或いは周囲を自然と牽引できるような、時代に相応しいリーダーシップ習得に応用したワークショップなどにも取り組んでいます。多くの社会課題が日常を覆いつくすような昨今、特に若者の自己肯定感を引き上げることも急務。そこで、自分で自分を視覚化しながら長所を褒めるワークをオリジナルで作りました。名付けて「自画(自我)自賛のススメ!ワークショップ」(笑)。今回はその話をしてみたいと思います。

適度に図太く生きる能力

何故、自画(自我)自賛のススメに辿り着いたか。背景として、米国生活を通じて、日本人持ち前の控え目で実直な性質や他者への気遣いなどが、時に米国流の議論の場などでは弊害になるのを目にすることがありました。何度か触れてきているようにオープンソースや集合知によるイノベーションを前提とする米国流のやり方の中では、発言や提案の量などで示す積極性や、他人の考えに平気で自分の考えを上乗せするような議論の仕方などが求められますが、日本人的な控え目さや実直さ、気遣いはこうした場ではブレーキになってしまうことが多々あります。

社会や風土、慣習を背景にしたものであるが故、自分で意図してやっている訳では無いのに客観的に比較されるとどうしても消極的に見えてしまう。これを最も簡単に打破しようとするなら、単純にもっと図々しくなるのが良いでしょう。今後は(望む、望まぬに関わらず)グローバルな環境で生きて行かねばならない日本人には適度に図太く生きる能力が必要ではないかと感じます。ただでも控え目な性質を一旦、真逆に振り切るために中国で禁書になった「厚黒学」に倣うほどでは無いにせよ、厚顔なほどの我の強さを獲得しようと試みるのも良いのかもしれませんが、私としては日本人の良さを活かしながら一定の図太さを獲得していくのが良いだろうと思っています。

自分にも未来にも楽観できない日本の若者と2つの要因

何度か触れてきたようにデザイン思考を実践する上で重要なこととして「楽観的になる」(Be optimistic)というのがあります。「今回もきっと勝てるだろう」とか「まぁ、なんとかなるだろう」という心理状態は、いつもビクビク恐れを抱いた心理状態に比べて「勇気」や「余裕」というインセンティブがある分だけ大胆に攻め、慎重に守れる、言わば上手を取った状態にあります。ところがこの「楽観的になる」ということそのものが容易でない人が案外多い。例えば現在、日本の若者の自己肯定感は先進国中最低レベルにあると言います。

日本で若い人の自己肯定感が低い理由。私が考察するに理由は2つありそうです。1つ目に自分に対する客観的理解と納得が欠如している。つまり自己を客観視しないまま、自分を不当に過小評価したり、過大評価したまま放置している。2つ目に自分と世界との関わりに対する認識の欠落。自分と世界の関係性をあまり気に留めず看過している。これら2つの欠如によって、自分にも未来にも楽観できない状態なのではないかと思います。自画自賛ワークショップではこの2つの課題をメインに解決を試みます。

自画を自賛するためにまず自分の絵を正確に描く

まず1つ目の自分に対する正しい理解と納得の欠如を解決するために「自分のスペックの視覚化」を行います。脳科学的見地を少々取り入れ自分の男性性と女性性の比率を可視化するワーク(いつも盛り上がります笑)や、自分の長所と欠点を洗い出し、欠点には”開き直った”解釈と行動原則を、長所には客観的な裏付けを与え、両面の自己理解を最適化していきます。自我を自賛するためには、まず自分という存在を客観的に可視化すること、自分の絵を正確に描くことが必要です。出来た絵を見て、それをどう解釈し、何処を自賛できるのかを考察していきます。

男性脳、女性脳のワークは杓子定規に自分を「男性」や「女性」という型に嵌めず、むしろ「個性」を正確に炙り出すのが目的です。私自身、やってみると先天的には女性性の比率が高く、デザインに適した性質(空間認識やイメージ)を多く持ち合わせていましたが、小さい頃から習っていたピアノや合唱を「女子みたい」と揶揄われた(そんな時代でした…)経験から「男らしくありたい、見せたい」という後天的に強調された男性性が浮かび上がってきました。このワークによってこれらの事実を初めて客観視することができ、自分自身で納得することができました。

自分と折り合いを付ける

この「自分に納得する」というところが、実は自己肯定感のみならず、例えば現代求められるリーダーシップにさえも重要だと思っています。自分と自分自身への理解にギャップがあると自分と折り合いが付いていない不安定な状態になり、その不安が周囲にも伝わり、不安にさせたり緊張させたりする。自分と折り合いが付いていれば自分も落ち着いてリラックスしていられるので、それを見る周囲も安心してその人を受け入れることが出来る。皆さんの周囲にもそんなサンプルが多く見られるのではないかと思います。私見ですが、周囲を緊張させるリーダーより、周囲を安心させるリーダーの方が現代社会にはマッチしていると思っています。

その昔は体罰もある程度容認されていたような教育の現場や厳しい指導が当たり前の職場環境もありました。かくいう私も学生時代から企業に属していた時期含め、そうした厳しさの中で成長してきましたし(いや、それ以前に両親がメチャクチャ厳しかった。。。)、厳しさの中にも尊敬できる指導者は多くいました。ですが時代は変わり、今は声を荒げただけでもハラスメントで一発退場の時代。従い、その視点からも時代に応じた指導方法やリーダーシップが求められてもいます。

自分と折り合いを付ける第一歩は、自分の欠点と長所を正しく理解することだと思っています。それにより獲得する、過小評価でも過大評価でもない、適切な自覚と自信。そういえば、MLBで活躍中の大谷翔平選手はこれまでの突出したアスリートにありがちな威圧感が無く、揺るぎない自信を秘めつつも謙虚&控え目、それでいて茶目っ気があります。極めて自身と折り合いの付いた落ち着いた人物像を感じるが故に多くの人を魅了するのだろうと思います。大谷選手がこの時代に颯爽と、しかも日本から現れたということも何か象徴的なことのようにも思います。(後編に続く)

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