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CVCに何を期待すべきか?

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)について少し調べようと思ったとき、このレポート(CVC実態調査2019@pwc)に出会えたので、僕なりの認識の整理のためにまとめました。

□日本企業はCVCへの取り組みに何を期待すべきか?

「ビジネスモデル変革」を究極のゴールと位置付けるべき。
要するに、CVCが担うべき最も重要な役割が「全社の水先案内人」である。

□なぜ「全社の水先案内人」になれるのか?

CVC部門は、市場の最先端でどんな動きが起こっているのか、起業家やベンチャーキャピタリストはどんな将来像を思い描いているのか、新しい機会や脅威などの生々しい情報に最も深く触れている担当者集団である。
それらの良質なインプットを、本社の経営陣にもタイムリーにインプットすることで、経営トップが将来を見据えた戦略的な意思決定をする上での重要な基盤となる。
CVCチームの経営陣へのアウトプットとしては、「自社ビジネスはこのように変わっていくべきであり、そのためにはこれらの企業と組むべきである」などといった提言となる。
そのためにCVCメンバーに必要な能力は、マーケットの将来動向に関する自分なりの考えを持っていること、それらに必要なインプットを集めるための人的ネットワークを持っていること。

□投資領域の選定 (図表23参照)

既存近傍領域(not既存同領域=競合)は積極投資する領域。特にシードステージ企業であってもパートナー企業として出資したり、レイターステージまで来たら買収を考えても良い。
②上記①以外、自社にとって完全新規の周辺領域への投資活動を通じ、将来的にディスラプターとなりそうな企業が出てきていないか、変化の兆しを察知し、不確実な段階でもCVCからマイノリティ投資を行い、必要に応じて周辺領域のベンチャーを買収するなどして、自社のビジネスモデル変革につなげる事が自社にとってより大きなインパクトを出せる。
③要するに、短期的な事業シナジーが明確でなくても、成長性がありそうなベンチャー企業であれば投資検討は積極的にすべき。
④一方で、周辺領域への投資は案件ポートフォリオの一定比率以内に抑えるなどの投資ストラクチャー設計も必要。

図23

□CVCを活かす組織ストラクチャーとは?

M&AチームとCVCチームが独自に活動をしながら、バラバラに動くのではなく適切に連携し案件情報をタイムリーに共有するなどが重要。
ベンチャーがシード・アーリーステージであっても、対象会社の自社にとっての重要性が確信を持てるのであれば積極的に自社がM&Aを仕掛ければよく、一方で対象会社の自社にとっての重要性や市場での競争力に確信を持てなければ一旦CVCでマイノリティ投資をして、関係性を深めながらモニタリングし、確信が持てた段階でM&Aに進めばよい。

図24

□その他にも大切なことは?

・戦略リターン狙いのCVCであっても、ファイナンシャルリターンにも規律を持たなければいけない。ファイナンシャルリターンを気にしないと言いうのは、競争力のあるベンチャーに投資できていないことの言い訳として使われる。また、ベンチャーのエコシステムを壊すようなバリエーションのつけ方をすると、次の増資ラウンドでダウンラウンドにならざるを得ず、投資先ベンチャーが資金調達に苦労するリスクにもつながる。

市況が悪化しても、CVCから完全撤退するようなことは絶対避ける。そもそもCVCは自社のビジネスモデル変革につながる重要な取り組みのはずである。CVCから撤退してしまったら、組織に知見も何も残らない。CVCは2~3年の短期で結果が出るような取り組みではなく、10年単位で試行錯誤しながら自社なりの成功パターンを模索するような取り組みである。

□レポート参照先


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