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一般社員から初級管理職になるための本

 はじめに・・・

この本はタイトルのとおり現在、一般社員として業務をしている立場にあり、初級管理職を目指しているという方に向けて書いています。企業ではそれぞれの評価制度によって社員を評価し、昇格や昇給を行っています。ただそれらの評価制度も完璧ではなく、考え方や人柄などのすべてを評価できているわけではありません。どちらかといえば数字で表せる技能の評価に偏っているケースも少なくありません。

確かに企業は利益を上げることが重要であり、その為に必要な技能の評価は当然優先順位も高いところにあるはずです。しかしながら仕事は一人で行うものではなくチームで進めているものであり、一見個人技のように見えるような仕事であっても間接的に関わる人がいるものです。

管理職はそのチームを動かして結果を出すことが求められており、自分だけが出来ていればよいというわけではありません。したがってチームを動かすうえで重要な心構えや考え方、チームへの配慮など、仕事をするための直接的な技能のほかに必要な要素は多岐にわたります。

しかしマニュアルなどでは仕事の注意点や手順は書いてあっても、心構えや考え方などを記したものは少なく、リーダーとしての心構えやチーム運営において必要な考え方を学ぶ機会がないのではないでしょうか。

そこで筆者は長年の管理職経験によって重要だと考えていることを体系化して本にしてみようと思い筆を取りました。もちろん何冊も書籍を読んで知ったことも多く、ときには引用もしますが実体験によって改めて重要だと感じたことを書いたつもりなので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。

願わくばこの本を読んだあなたが「仕事はデキるけど人として尊敬できない」上司ではなく、「あの人のためなら喜んで協力しよう」と慕われる上司になって欲しいと思います。

---心構え編---


■ 管理職とは


まずこれまでの一般社員とは違い、役職を預かることになります。企業によって呼称は様々ですが、例えばリーダー・班長、係長などが初級管理職の役職として多いのではないでしょうか?

業務の幅も責任も増えますが、何よりも部下が出来ることがこれまでとの一番の違いです。いままでは自分の仕事だけ気にしていればよかったかもしれませんが、これからは自分の仕事と部下の仕事をマネジメントしていくことが求められます。

なおこの本でいう管理職とは、労働基準法41条2号に定められている所謂「管理監督者」ではなく、係長や課長などの役職者のことを差しています。

管理というと多くの人が「守る・守らせる」というイメージを持つのではないでしょうか?例えば社内のルールがあればそれを守らせるという事に重点を置くなど、管理者としてルールを重視するような視点で職務を遂行するというケースです。

はじめのうちはそれでいいかもしれませんが、本来管理とは「コントロール」という意味合いの方が強く、ただルールを守らせるだけでなく、時にはそのルールが正しいのかを見直すことも必要です。

そうして常に問題意識を持ち、社内や部下のあらゆる可能性を見出してより良くしていく事が管理であると言えます。

 個から集への意識

個から集というのは常にチームで動いているということを念頭に置いて仕事をするということが重要であるという意味です。部下を持つということは、文字通りチームで仕事をするということであり、初級管理職は部下と上司のパイプ役というポジションでもあるので、ある意味では一番難しい立ち位置かもしれません。

最初のうちは管理業務を覚えながらこの意識を養っていくことになりますので、一般社員から昇格したばかりの頃は非常に忙しく感じるかもしれません。

したがって一般社員のうちから自分が管理職になったら、周囲の人たちとどうコミュニケーションをとって仕事をしていくかをイメージしながら取り組めば、いざそのときが来た時に周囲の協力体制も整っているという状態にすることができます。

今のうちからチームで仕事をするという意識を強く持って取り組むようにしましょう。

 指導者の一員

また管理職は部下の指導も求められます。新入社員の指導や中堅社員への指導などあらゆる場面で後進の育成を考えなくてはなりません。

指導者というと大げさに聞こえるかもしれませんが、後輩や新入社員がどのように成長していくのかは直属の上司であるあなたの手腕にかかっているという意識を忘れてはなりません。

時には指導が難しく感じる部下も出てくるでしょう。それでも可能性を信じて根気よく対話をし、個々に寄り添った指導をすることで改善に向かうはずです。それが指導者であるあなたの役割でもあるので上司に相談しながらチームメンバーの育成につながるような指導を心がけましょう。

また自分がさらに上位の職位に就くためにも次のリーダーを育成することが重要であり、そうやって組織や会社は成長していくのです。一般社員のときも後輩への指導はしてきたと思いますので大きな違いはありませんが、管理職になると会社から公式に部下の育成を評価されることになりますので、自分を成長させつつチーム力を高めていくイメージで一層の自己学習を習慣にしていきましょう。

そうすることで自分自身の成長と次のリーダーの育成に大きく貢献することができるでしょう。

■ 初級管理職の役割


それではここからは具体的に初級管理職の役割について解説していきたいと思います。

業務的な役割といえば新入社員やアルバイトの指導なども当然求められますが、それらはどの職位についても求められるものであり、初級管理者だからというものではありません。

ここでは基本的なスタンスや特に注意したいことをまとめていくことにします。

 上司の考えや指示を翻訳して部下に伝達すること

見出しのとおり、上司の考えや指示を部下が正しく理解し行動できるように翻訳して伝達することは管理職として非常に重要なことです。これができるかどうかであなたの統括するチームの仕事が大きく左右されます。

目標とは多くの場合、そのチームのトップが決めることと思いますが、上司から自分へ降りてきたところで自分自身がその目標の真意を理解していることを前提として、それらをさらに社員やアルバイトに浸透させていく必要があります。

そのときに上司から言われたことをそのまま伝えるだけではなかなか理解してもらえないことが多くあります。

したがってチームにいるメンバーのそれぞれの理解度やレベルに合わせて翻訳してあげることが重要と言えます。

そうしてチーム全体の意識を同じ方向に向けることが出来れば周囲の尊敬を得ることができリーダーシップを発揮することも容易になるはずです。

その為には上司としっかりコミュニケーションをとって上司が何を言いたいのかを深く理解することが重要です。そうやって日頃から上司と目標について確認をとる機会をつくることで上司からの信頼も得られると思います。

 上位職への準備

初級管理職としての業務をしながら次のステップを見据えることも自身の成長にとって非常に大切なことです。そうすることで上司の指示や指導の意味をより深く知ることにつながります。

上司が行っている業務は、いずれ自分が遂行することになります。今のうちから自分がその立場ならどのような考えを持ち、行動をするのかという点を常に意識しながら仕事をするべきでしょう。

そういった習慣が身につけば立場ごとの考え方や学ぶべきことが見えてくるようになり、自分の課題も自ずと見えてくるようになります。自分の課題を正しく認識できるということは成長していく上でとても重要なことなのです。

■ リーダーシップとは


指導者の一員ということはリーダーということです。リーダーの役割は「チームを目標達成に導くこと」です。目標は所属長や会社の上層部が決めることですが、場合によってはチームごとに小目標などが割り当てられることも珍しくありません。

そのときにあなたがどの様なリーダーシップを発揮してチームを目標達成に導くのかが問われています。ここで強く覚えて欲しいことはリーダーだけではことは前に進まないということです。

いくら強いリーダーシップを発揮してもチームのメンバーがリーダーに協力しようという意識がなければことは前には進みません。したがってリーダーとしてチームのメンバーに認められるという条件が必要です。

ではどのようにして周囲の協力を得ることができるのでしょうか。

それはまずリーダーとして『率先垂範』を実践するということです。

率先垂範とは一言で表すと周囲の手本であるよう先んじて模範となることです。挨拶や礼儀礼節にはじまり仕事の進め方や言動などすべての面において社員の手本となるような立ち振る舞いが求められます。

それによってチームメンバーはリーダーの背中を見て真似をするようになります。初級管理職に就く前に、こうした意識をもって職務に当たっていれば正式な役職を預かる前にメンバーはリーダーとして認めてくれるでしょう。

口先だけのリーダーについていこうとは誰も思いません。

 自分と周囲への影響

前述の率先垂範が習慣化してくる頃にはすでに周囲へいい影響をもたらしているはずです。リーダーは言葉だけでなく存在そのものでチームにいい影響を与えられるように心がけるべきです。

その為にはまず自分に対しても厳しくあるべきで、簡単なことで妥協や軽率な言動をしてはなりません。そのことを念頭に置き、いかなる時でも周囲の手本であるという意識を忘れてはなりません。

周囲への影響という点でひとつ注意するとすればありがちなのが「愚痴」です。

会社や上司への愚痴を人前で発するとどうしても同調が生まれ、チーム全体に会社への不信感が募りやすくなります。そうなるといざ自分がリーダーとなってチームをけん引する際に大きな障害となります。

したがって自分から愚痴を発することはもちろん、人が発している愚痴に同調するようなことはあってはなりません。もしそういった場面に出会ったのなら、愚痴のままにせずに正しい形で意見や提案として上司に進言することができるようにしてください。

間違えないで欲しいのは愚痴は悪と言っているのではなく、正しい形で伝えるべき人に伝えれば立派な意見・提案になるということを理解して欲しいと思います。

 フォロワーシップの重要性

リーダーとしてチームを引っ張っていくためにはチームの協力が必要であることはこれまでの内容の中でも触れてきました。チームがリーダーに協力しようという姿勢のことを「フォロワーシップ」といいます。

一般的にリーダーシップという言葉は広く知られていますが、フォロワーシップという言葉を聞いたことがある人はあまりいないのではないでしょうか?

しかしこのフォロワーシップはリーダーシップと対になる考え方であり、これなくしてチームの結束はあり得ないといっても過言ではないでしょう。

ではどうすればこのフォロワーシップを得ることができるのか。

それはこれまでの率先垂範や愚痴を正しく意見・提案として進言するなどのリーダーとしての行動だけでなく、自分が何を考えているのかをしっかりチームに伝えていくことです。

自分の考えやビジョンをしっかりメンバーに伝えるということはチームのコミュニケーションを考える上で非常に重要なことであり、それをせずしてチームが一丸となることは叶いません。

理由はメンバーが自分の役割の中で何を基準とすれば良いかが明確にならないからです。チームとして目標達成に向けてどう向き合っていくのか、また判断に困ったときに何を根拠にするのかなど、日頃から自分自身の考えをチームに浸透させていくことが大切です。

その結果、チームメンバーはリーダーと同じような思考を持つようになり、積極的にリーダーの仕事を手伝うようになるでしょう。

フォロワーの役割はリーダーがリーダーとしての業務に集中できるように、リーダーでなくともできる業務を請け負うことや、リーダーに間違いがあれば正しく進言することです。まだ初級管理職に就いていないのであればまずは自分が積極的なフォロワーになることがリーダーへの一番の近道であるということを理解しておきましょう。

リーダーはそのことを念頭に置き、フォロワーからの進言を無下にすることなく建設的な意見交換ができるような関係を構築していくことが重要です。

■ 三意

初級管理職などのリーダーに必要な意識として「三意」という要素があります。これは様々な企業や学校のお題目として掲げられている言葉ですが誰が言い始めたのかは筆者にもわかりません。

ただよく考えられている重要な要素であり、管理職にとってはどのような立場になっても必要なものであると思います。

三意とは「誠意」「熱意」「創意」の3つで、それぞれリーダーにとって重要な意識です。

これらの意識を持つことで自分自身も充実した日々を過ごすことができ、かつ仕事も精力的に進めていくことができるようになります。

それぞれ言葉自体は難しいものではありませんが、掘り下げて考えていくとより意識が高まります。

 誠意

まずは誠意です。

誠意とは文字通り誠実さをもって取り組むことです。「誠」という漢字は言うを成すと書きます。言ったことは実行するということであり、口先だけのリーダーではないということを表しています。

不言実行という言葉がありますが、初級管理職などのリーダーは自分だけでなくチームを率いて仕事を進めていかなければなりませんので、ここは「有言実行」を掲げて目標をチームに浸透させながら仕事に取り組みたいものです。

間違っても「後でやっておくよ」と言っておきながら一向に行動に移さないようなことがないように注意したいものです。

 熱意

次に熱意です。

熱意も文字通り熱心に取り組む姿勢です。分かりやすく言うと本気になるということです。

本気は自分だけでなく周囲にも伝わり、自分に近しいメンバーから火がついていきます。そうなるとチーム全体の士気が高まり、難しい仕事でも積極的に取り組む熱血軍団が出来上がります。

その為にまずはリーダーであるあなたが強い熱意をもって先頭に立つことが求められます。

ただし「頑張ります」という姿勢だけでなく、それを実践できる能力を磨くことも忘れないで欲しいと思います。

 創意

そして創意です。

創意とは慣例に囚われず常に工夫を凝らすことです。仕事は同じことをしていても生産性は高まりません。常にもっと良くならないかという意識をもって改善を目指すことが重要です。

その為にはぜひ自分の仕事や業界のことだけでなく、他業種のことや世間のことにも強く関心を持ち、見識を広めていくことを忘れないことです。

そういった広い見識から有用なアイデアや改善が生まれるのです。

ただし創意というものを勘違いして奇抜なアイデアを持ち出したり、朝令暮改などチームを振り回すことには注意して欲しいと思います。


■ 信用と信頼


心構え編の最後に、管理職になる上で最も重要な要素である信用と信頼を解説していきたいと思います。

これは管理職に限らず一人の人間としても重要であり、これがなければまず仕事を任されることはありません。信用や信頼という言葉は誰もが知っている言葉ですが、正しく意味を理解して使っているでしょうか。

信用と信頼の違いはなにかわかりますか?

ここではそれぞれがどんなことを意味しているかを理解し、自分への信用と信頼また相手に対する信用と信頼を正しく構築していけるようにしていきましょう。

 信用

まず信用とは何かを説明します。

結論から言うと信用とは「実績」のことです。

銀行や信用金庫などの金融機関でも融資を受ける際には審査があり、収入や業績といったそれまでの実績が審査の対象となります。

したがって信用はそれまでの実績によって作られるものであると言い換えることができます。そうした過去の実績があるということを担保として融資をしたり、仕事を任せたりするというわけです。

何の成果も出していない人に新しい仕事を任せたり、働いていない人にお金を貸したりすることはあり得ません。

 信頼

次に信頼とは何かを説明します。

結論から言うと信頼とは「期待」です。

信用がこれまでの実績であるとすれば、信頼とはこれからに対する期待と言い換えることができます。したがって信用の積み重ねによってこの人なら、またはこの会社なら大丈夫であろうという期待を込めて新しい仕事を任せたり、新規の融資をしたりするわけです。

つまりまずは信用(=実績)を積み重ねていくことでしか信頼(=期待)されることはないということです。

このことをよく理解してぜひ小さな信用を積み重ねて大きな信頼を得るような意識をもって業務に励んでください。


---スキルアップ編---


■ ホウレンソウ


それではここからは初級管理職に必要なスキルを中心に解説していくことになります。まずは仕事の基本であるホウレンソウ、つまり報告・連絡・相談について深く掘り下げていくことにします。

報告・連絡・相談といえばおそらく多くの人が新入社員時代に上司から何度も聞かされた基本のキであると思いますが、今度はあなたが初級管理職として新入社員や部下にその重要性を説くことになります。

頭では理解していても教える立場になるとうまく説明できないということがないようにここでしっかりと理解を深めてください。

 一般社員時代よりも高いレベルで

理解を深めるというのは同じ報告・連絡・相談をするにしても一歩踏み込んで実践するということです。

報告・連絡・相談のうち、最も重要なのは「報告」です。

報告によって上司は物事を判断するのですから当然といえば当然です。したがって報告とは組織に属する者として最低限の義務であるということができます。

連絡や相談は義務というよりも気遣いや自分自身の成長のためにといった要素が強く、報告に比べれば優先順位は低くなります。しかしながらチーム内の連絡を怠ると仕事が滞ったり、他部門への連絡が不十分だと何度も確認をしなければならないなど、業務を遂行する上で小さなストレスにつながります。したがって周囲への連絡もまめに行うようにしましょう。

ただし相談に関しては相手の都合をよく考えてしっかり時間を取れるタイミングでするべきです。理由は中途半端な相談では正しい考えや答えにはたどり着けないからです。

簡単な内容なら構いませんが、判断に困っている事柄や自分の課題など、相談の内容はすぐには決められないことがほとんどです。したがって隙間時間にちょっと相談するというような安易なものではなく、解決に向けてしっかりと時間をかけて進めることが重要です。

以上のことを踏まえて初級管理職として正しい報告・連絡・相談を駆使してチームや組織の円滑な運営につなげていきましょう。

 事実と意見・感想は分けて報告する

報告・連絡・相談をするうえで注意したい点があります。それは「事実と意見・感想は分ける」ということです。

特に報告は事実のみを簡潔に伝えることが重要です。そこにあなたの私見が入ると何が事実なのかが分かりにくくなり、判断を誤る可能性が生じてしまうからです。

したがって報告は結論から述べ、そこに至った原因や過程を説明するという流れで行うと相手に伝わりやすくスムーズな報告になるということを覚えておくといいでしょう。必要である場合はそこに私見を加えて自分なりの解決方法などを提案すると上司としても助かると思います。

 スピード意識、かつ悪い報告ほど早く

報告には重要な要素がいくつかありますが、スピードもそのひとつです。

状況は刻一刻と変化しており、迅速な報告がなされれば対策も素早く立てることができます。上司にとっては情報鮮度というものは極めて重要なことであり、それによって競合相手を出し抜くチャンスも生まれるというものです。

またトラブルやクレームなど、あまり上司の耳に入れたくないような悪い報告がありますが、そういったものほど特に早く報告するようにしてください。

トラブルが生じたということは解決しなければならない状況にあるということであり、その対応が遅くなればなるほど難しくなります。特にクレームなどはお客様の心情がより悪化してしまう恐れがあり、対応を急がねばなりません。

上司に叱られる可能性はあるかもしれませんがそれは二の次です。今は目の前のトラブル・クレームを解決することが最も優先するべき事柄であり、初級管理職であるあなたのすべきことは迅速に報告し、解決へ向けて責任を果たすことです。

■ 指導法


スキルアップ編の最後は初級管理職の重要な業務のひとつである後進の育成に関わる指導方法のことです。

指導に関する書籍や情報は巷に溢れています。例えば褒める指導やティーチングやコーチングと呼ばれるもの、またはビジネススクールで行っている多くのリーダーシップ理論など多岐に亘ります。

ここではそのすべてのシーンで有効な物事を伝える際に相手が理解しやすいようになる文章法のひとつであるPREP法という手法を紹介することにします。

このPREP法を身につけることでどのような指導スタイルをとっても、相手への伝わる度合いが格段に高まるはずです。

 PREP法

それではPREP法について解説していきます。

これはあまりにも有名な文章術であり、一般的にも広く浸透していますのであえてここで詳しく説明するほどのことでもないのですが、文章構成以外にも指導に取り入れることで非常に有用なものになりますのでぜひ習得して欲しいと思います。

PREPとはPoint(結論・主張)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論・主張) の頭文字をとったものです。

分かりやすく例にしてみましょう。

P:自社の業績が悪化しているのは競合の出店が影響している。
R:理由は競合が出店した月から売上が下がり始めているからである。
E:例えば商品Aの売上が著しく減っており、競合店で扱っていない商品Bは以前と同様に売れている。
P:したがって競合店の出店が商品Aの売上に影響しており業績悪化につながっている。 

どうでしょうか、これがもし下記のような報告だったとしたら?

商品Aの売上が下がっており、競合店が取り扱っていない商品Bはそのまま売れています。自社の業績が悪化していますが、〇月から下がり始めています。そういえば競合店が〇月に出店していました。

これは極端な例ですが、話の順序が分かりにくく根本的な原因が伝わりにくいのではないでしょうか。

よく文章の構成の手法として教えられるのは起・承・転・結ですが、これは物語を面白くするための流れのことであり、ビジネスの上では現場に混乱を招きかねません。

はじめに結論を伝えておくことで、相手はその結論を頭に入れたうえでその後の話を聞くことができるため、頭の中で整理しながらこちらの伝えたいことを結論につなぎ合わせながら聞くことができます。

それが相手の理解度を深めてこちらの意図をしっかりくみ取ってもらえるということにつながるのです。したがって人に何かを伝えるときは、このPREP法を意識して結論から先に述べることを心がけましょう。

 やってみせて言って聞かせてさせてみせる

指導において有名すぎる格言があります。

それは山本五十六が言ったとされる「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば人は動かじ」という言葉です。もともとは江戸時代中期に出羽国にある米沢藩の藩主・上杉鷹山が言ったとされる「してみせて、言って聞かせて、させてみせよ」とされていますが、いずれにしても先ほどのPREP法に似ていませんか?

「してみせて」というのはまず指導者が自ら手本となることで先に結論を伝えています。そしてなぜそのようにするのかを「言って聞かせ」、最後に相手に「させてみせる」ことでもう一度結論を伝えています。

このようにPREP法は文章構成だけでなく、指導においても非常に有用な手法であると言えます。ぜひこの手法を自分のものにし、報告・連絡・相談の中や、指導の中で活用してチーム全体の理解度を高められるように意識していきましょう。

あとがき・・・

 はじめにも言いましたが、「一般社員から初級管理職になるための本」では、管理職の基本を中心に書き上げたつもりです。

今、まさに一般職から初級管理職になるために努力なさっている方、また努力が実り初級管理職に就くことが叶った方など新たなリーダーとしての一歩を踏み出したあなたなら、きっとこの本で書かれていることを実践し、部下と上司から信頼される管理職になることができるでしょう。

そしてその先には初級管理職から中級管理職を任され、一層、社業の拡大成長に貢献するリーダーになっていくことと思います。

最後になりますが、人は理屈ではなく感情によって動くものです。いくら正当な理屈を並べても心から尊敬できるリーダーでなければ真の協力は得られません。

理屈ばかりの頭でっかちなリーダーではなく、常に率先垂範を実践する行動力のあるリーダーを目指してください。

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