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閑話三昧 #6 ~異世界地図

異世界転生をテーマとした小説やアニメが人気である。
私もきらいではない。いや作品によっては熱心な視聴者だ。

私が子供のころなら「空想冒険小説」とでもいわれていたジャンルだ。
分類するなら、SFとかファンタジーだろうか。

小説やイラストだけでなく、架空の街・都市の地図を創りだすひと達がいる。彼らは頭のなかのイメージを、こつこつと手作業でつむぎ出す。
空想地図ともいうべき創作分野だろう。

ファンタジー小説の作者も、物語の展望を得るための地図を好む。
ストーリー展開とともに、地図の空白部がうめられてゆく。

異世界地図

最初は手書きだったのだろうが、必要は発明の母、現在では便利なオンライン地図作成ツールがあり、ゲームなどにも利用される。

無料/有料のツールとしては、

まだ知られていない世界なら、あなたの想像力のみが開拓の原動力となる。

Game of Thrones

では、すでに知られている世界ならどうか。
私は、HBO制作の「ゲーム・オブ・スローンズ (GOT)」が好きで、原作の「氷と炎の歌」(未完結)も読んでいる。

TVドラマのオープニングには、GOT世界の地図が映しだされる。
地政学は重要なので、個人が変更するわけにはいかない。

やはり熱心なファンが多いのか、ネット上でも多くのGOT地図が見つかるし、購入もできる。まことに喜ばしい。
(西ヨーロッパのイメージですね。)


火星のプリンセス

ゲーム・オブ・スローンズは、成人してから夢中になった物語だが、少年時代に夢中になった空想冒険小説に、エドガー・ライス・バローズ (Edgar Rice Burroughs、1875 - 1950 )の作品群がある。

代表作はSF小説『火星のプリンセス』を始めとする火星シリーズと、ターザン・シリーズなどの冒険小説、ペルシダー・シリーズなどの秘境探検小説で、これらは「(バローズの)3大シリーズ」と呼ばれ、創作活動の初期から終期まで継続して書き継がれた(金星シリーズを含めた場合は4大シリーズ)。火星シリーズや金星シリーズは惑星冒険ものや剣と惑星もの、ペルシダーシリーズはロストワールドものにも該当し、それらの代表であるが、しかし最初の作品ではない。

作風としては、恋に彩られた冒険ものが多く、SF小説の多くがそれに当てはまる。ハードSFは「月からの侵略」(月シリーズの第2部)などごく少数に留まる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/エドガー・ライス・バローズ

故・武部本一郎 画伯の挿絵入り本はどれも高価になってしまった。

(少年には武部画伯の挿絵だけでドキドキものだったが、原作では「火星人」は装身具だけ身につけた、原則、裸体なのである!)

「火星のプリンセス」は、空想科学小説ではなく、あくまで「空想冒険小説」である。

また、舞台は火星と銘うっているが、住人たちはこの星を「バルスーム (Barsoom)」と呼んでいる。

原作 (A Princess of Mars, 1917) は、すでにパブリック・ドメインになっている。SF小説というより、100年前の人々の科学観を知るにはよいだろう。

一人称の語り口で、最初は話の展開がきわめてスローなので、現代の読者は途中で投げ出すかもしれない。また、設定にも突っ込みどころは多い。

しかし物語が進むにつれて、それらも気にならないくらい次の展開が知りたくなる。バローズがストーリー・テラーといわれるゆえんである。
ここにも GOT に通じる要素がある。

私は読むのはたしか3回目になると思うが、幸い細部は忘れているので何度でも楽しめる。老人ぼけの数少ないメリットだ。(老人力?)

100年前の小説に価値を認めているのは、私だけではない。
熱心なファンが、バルスームの地図を作成している。


もう一度、火星シリーズを読みながら、架空の地図とともに青春の旅路をたどってみようと思う。

(補足)2012年のディズニー映画「ジョン・カーター」を見て、知ったつもりにならないでね。壮大な物語のごく一部だし、私のイメージとは少し違いました。(冒頭にバローズ役の青年がでてきます。)

夜のバルスーム上空をゆく、ヘリウム国のデジャー・ソリス王女と護衛の海軍飛行艇。
ふたつの月に照らされて眼下には苔におおわれた地表がみえる。 ( イラスト:TAK3 )


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