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夏目漱石 夢十夜「第五夜」 全5回⑤

さあ、いよいよラストです。

6.謎に満ちたラスト

第五夜のラストは謎に満ちています

「蹄の跡はいまだに岩の上に残っている。鶏の鳴く真似をしたものは天探女である。この蹄の痕の岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵である。」本文より

何故処刑されたはずの自分がこのようなことを知っているのでしょうか。

鶏が鳴くまでに女が来なかったら自分は殺される設定だったはずです。さらに「蹄の跡の岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵である」これはどういった意味なのでしょうか。

これまでに得た知識を総動員して考えていきたいと思います。

6-1.なぜ女が死んだと知っているか

これは第五夜最大の謎と言っても過言ではないでしょう。

本来ならば自分は殺されているはずだし何らかの理由で死を免れたとしても女の最期を知り得るはずがありません。

ここで関連がありそうに思えてくるのが「探」と「女」という字。

まるで女を探していることを表しているようです。
恐らく自分は殺されました。しかし女に会えなかったことが心残りで成仏できなかったのではないでしょうか。

そして地上を彷徨っていると女の馬のものと思われる蹄の跡を見つけた。

この時に、女が何者かによって殺されたのだと察したのかもしれません。

この結論はあくまで推測の域を出ません。

しかし自分が安らかに死んでいないことだけは明らかでしょう。

6-2.最後の文の意味

自分が成仏できずにいたのかもしれないということを上で述べましたが、これは最後の文にも繋がってくると言えます。

というのも女が死んだと悟った時、自分の魂はただの心残りでいられるはずがありません。怨念に変わるはずです。

怨念ならば「この蹄の痕の岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵である。」という文も重みが増すように感じられます。

詳しく言うと夢の舞台は神代の昔。
漱石の時代より1000年以上も前のことです。
そのような長い期間、自分の魂は「天に昇ったであろう女を探すしかない」状態にした天探女を恨んでいるという風に解釈できます。

そもそも自分と女が何方も死ぬという展開にした漱石自身にも
「あまのじゃく」的な性質が無いとも言い切れません。

それを敵であるということで自分に対する戒めとして話を終わらせたという捉え方もできそうです。

これに関しては人によって様々な捉え方があると思いますが、僕は以上のような結論に辿り着きました。

終わりに

第五夜は解説が少なく非常に難しい話でした。

でも周辺知識から固めていくうちに様々な考え方が出来て楽しかったです。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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Cal bear

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